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魔獣の壺 - 本編 -  作者: 夢之中
決戦魔獣王城
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目と記憶

連合暦20年7月24日、ルシード王国


バーバラ、レミューズ、シェリル、ジェイル、サールは、

神殿に入るための許可待ちの為、来賓室に滞在していた。

レミューズは部屋で休息をとっていたが、突然の来客に驚いた。


レミューズ:「こんな夜中に来るとは、一体何があった?」

バーバラ:「カイン王から勅使があった。」

レミューズ:「!」

バーバラ:「パインのことなんだが、スピード、剣技は

     問題ないが、剣が軽いらしい。」

レミューズ:「なるほど、

      魔獣王に通用しない場合もあり得るということか。」

バーバラ:「対策を取るにも時間がかかりすぎる。

     そこで、魔法で何とかならないかと、、、。」

レミューズ:「人体強化か。

      お前も知っているだろうが、

      人体強化の魔法は存在していない。」


現在知られている魔法のほとんどは人体以外に作用して効果を

発揮している。

例外としては神聖魔法が存在するが、あくまでも治療であり、

強化の役割を担っていなかった。


バーバラ:「あぁ、分かっている。

     そこで、他の方法を模索していたが、

     良い方法がないんだ。」

レミューズ:「なるほどな。

      一緒に考えろということか。」

バーバラ:「あぁ、そういうことだ。」

レミューズ:「わかった。

      少し考えてみよう。」



連合暦20年7月25日、ルシード王国


バーバラ、レミューズ、シェリル、ジェイル、サール

そして、カミユ司祭の6人は、神殿の前にいた。


初めて神殿を見たジェイルとサールは、他の者と違った

驚き方をしていた。

2人は足を止め、呆然と神殿の入口を呆けた顔で眺めていた。

その様子に最初に気が付いたのはカミユ司祭だった。


カミユ司祭:「お二人ともどうしました?」

その声にバーバラ、レミューズ、シェリルが2人を見る。

2人の黒目が小刻みに震えていた。


バーバラは2人の目の前に手をかざすと上下にゆすった。

しかし、2人は全く気が付かないように前を向いている。

シェリルがジェイルの前に進み出て揺り動かそうとするのを

レミューズが止めた。

レミューズは、シェリルをなだめると、

遅効型の記憶魔法だと告げた。

バーバラがそれに補足する。

 「2人は別の何かを見ている。

 しばらくすれば元に戻る。」


2人は同じ記憶を見ていた。

そこは森の中だった。

1人の女性が前を歩いていた。

自分はそのあとをゆっくりと進む。

木々の間から建物が見えた。

女性は建物を眺めている。

自分はその横で荷物を取り出している。

そして何かを組み立て始めた。

それが完成した時、それが絵画を描くための道具である

イーゼルである事が判った。

そしてキャンバスが最後に置かれた。

女性の方を見て呼び掛けたのだろう、

彼女がこちら側を振り向く。

その顔は、肖像画で見たアンジェラそのものだった。

ここで、記憶は途切れた。


目の前には複数人の男女が立っていた。

 「何があった?」

 「だいじょうぶか?」

 「どうしました?」

 「ジェイル様。」

何か自分に対して話しかけているのは分かった。

それが、バーバラ、レミューズ、シェリル、カミユ司祭で

あることが分かったのは、少し経ってからだった。


レミューズがジェイルにバーバラがサールに声をかけた。

レミューズ:「ジェイル、しっかりしろ。」

ジェイル:「あっ、師匠。

     大丈夫です。

     誰かの記憶を見ました。

     記憶にアンジェラさんが出てきました。」


バーバラ:「サール、大丈夫か?」

サール:「バーバラさん、もう大丈夫です。

     どうやら誰かの記憶が再生されたようです。

     たぶん、神殿の前だと思います。

     誰かが絵を描く準備をしていたようです。」


2人の話を聞く限り、同じ記憶を見ていたと思われる。

問題は、何処でその魔法を受けたかということだった。

2人に共通した場所、行動など様々な可能性が存在した。

そして、何故記憶を見せる必要があったのかという事だった。


ジェイル:「うーん、共通した行動、

     アンジェラさんが出てきた意味。

     あっ、サール、あれじゃないか?

     秘密基地。」

サール:「あー、あれですか。

    なるほど。」

2人はローゼス公爵の屋敷で起こったことを説明した。


ジェイル:「でも、あの時、シェリルもいたよな?」

シェリル:「はい」

ジェイル:「じゃあ、なんで、シェリルは見なかったんだ?」


バーバラ:「条件があったのだろう。

     例えば、初めて神殿を見た時とかだろう。」

サール:「なるほど。

    ところで、記憶の人物はだれでしょう?」

一瞬の沈黙のあと、レミューズが口を開いた。


レミューズ:「情報から推測するとズールだろうな。」

サール:「えっ、ローゼス公爵ということはないんですか?」

レミューズ:「ローゼス公爵であるならば、わざわざこんな

      手の込んだ事をやる必要がない。

      記憶だけが目的ならば、容量の多い記憶の水晶を

      使うだろう。

      あくまでも予想だが、これはズールの残した

      道標の一つだと思われる。」

バーバラ:「なるほど、それならば納得がいくな。

     ここの任務が終わった後、秘密基地とやらに

     行ってみる必要があるな。」

レミューズ:「そうだな。

      この話はこれで終わりにして先を急ごう。」

一行は、話し合いを中断して神殿へと入って行った。


サールは興奮していた。

サール:「いやー。

    生きているって素晴らしいですね。

    こんな経験ができるなんて、

    想像すらできませんでした。」

サールは辺りをキョロキョロと見回しながら思っている事を

口にだした。


バーバラ:「サール、気持ちは分かるが、少し静かにしてくれ。」

その言葉にサールは委縮した。


バーバラ:「さて、シェリルさん。

     その目とやらは何処に?」

シェリル:「あっ、はい。

     えーと。」

シェリルは辺りを見回すと、奥へと歩き始めた。

シェリル:「こっちです。」

全員がシェリルの後に続く。

そして、祭壇の前まで進むと呪文のような言葉を唱えた。

特に変わった様子は見られない。

シェリルがゆっくりと振り向いた。

その顔は、おっとりしたシェリルの顔では無く、

別人のようなりりしい顔つきだった。


一同:「!!」

バーバラ:「炎の巫女なのか?」

巫女:「ここは、巫女の神殿ですね。

   心が癒されます。

   先ほどお会いした方々ですね。

   早速、目を授けましょう。」

レミューズ:「待ってください。

      教えてください。

      そもそも、巫女の神殿とは何なのですか?」


巫女は少し考えると話始めた。

巫女:「いいでしょう。

   巫女の神殿とは教えの場です。

   巫女の知識を後世に伝える場なのです。

   巫女から見れば、居所でもあります。

   最も安全で、最も癒される場所です。

   幻獣、精霊、人間の3つの種が

   1つに繋がる場所でもあります。

   3つの種は魔獣と戦うために神殿を作りました。

   その契約は、この神殿が存在するかぎり続きます。

   そう、契約の証でもあるのです。」


レミューズは、シヴァと接触した時から疑問を持っていた。

それは、召喚士という言葉だった。

あの時判った。

召喚士という言葉は、存在していた。

巫女と召喚士が同じであるならば、

2つの言葉が同時に存在する意味が解らない。

そもそも、巫女が先に存在しているのだ。

では、巫女とは一体何だろう?

その答えを知るべく質問した。


レミューズ:「もう一つよろしいでしょうか?」

巫女:「いいでしょう。」

レミューズ:「白き魔獣は、巫女は幻獣と精霊を友とし、

      神に使える者と言っていました。

      そもそも、巫女とは一体何なのですか?」

巫女:「あなたの疑問の1つである召喚士という言葉は

   召喚を見た者達がそう呼んだにすぎません。

   幻獣と契約を結んだのが巫女であっただけなのです。

   巫女は、人間の言葉で言うと、神託を伺い口寄をする者を

   そう呼びます。」

レミューズ:「神託?

      あなたは神だというのですか?」

巫女:「いいえ、私は神ではありません。

   なんといえばよいでしょうか。

   そう、知識、思い、意志の集合体です。

   全ての人間の奥底に存在するものの集まりです。

   巫女は、それを表に出せる者であり、

   その力を後世に引き継ぐ者と思えば良いでしょう。

   私達は時代と共に経験を積みながら、それらを取り込み

   成長していきます。

   私は巨大なそれの一部でしかありません。

   人間は個性を得る代わりに永遠の命を捨て

   肉体を得ました。

   しかし、その奥底では1つに繋がっています。

   そう、私達と繋がっているのです。

   創造主は、私達が白く染まるか黒く染まるかを

   眺めているのです。

   さて、雑談は終わりです。

   早速、そなたに目を授けましょう。」

レミューズの頭の中に様々な魔法文字が渦巻いた。

それが治まると同時にシェリルの顔つきが元にもどった。


レミューズは驚いていた。

レミューズ:「まさか、こんな使い方があったのか。」

バーバラ:「どうした?

     何かわかったのか?」

レミューズ:「あぁ。

      リスクを負う代わりに大きな効果を得る方法だ。」

バーバラ:「そんなことができるのか?」

レミューズ:「良い事を思いついた。

      まあ、パインがそれを承諾する必要があるがな。」

バーバラ:「そうか。」

レミューズ:「この話と別に気が付いたことがある。

      いや、この話は2人だけでしよう。」


この後、カミユ司祭を除いた5人はローゼス公爵の屋敷へと

向かった。

ジェイルとサールが秘密基地と呼んだ場所に到着すると、

その中へ入る。

そして、1枚の肖像画の前で立ち止まった。

アンジェラと呼ばれた女性の背景が神殿であることは

誰の目にも明らかだった。

レミューズとバーバラはしばらくその肖像画を

じっと見つめていた。


しばらくしてレミューズが口を開いた。

レミューズ:「どうやら、

      初めて神殿を見た時では無かったようだ。

      肖像画と神殿の2つを始めてみた時だな。」

バーバラ:「そのようだな。」

口にこそしなかったが、2人が記憶を見たことは

間違いないだろう。

バーバラはその肖像画を壁から降ろすと額を取り外した。

そしてキャンバスの裏を見た。

そこには短い詩、魔法陣と共にズールの名前が記されていた。

アンジェラというタイトルの詩は、この様な内容だった。


アンジェラ

 目覚めた彼女は家の中に

 悩む彼女は鏡の中に

 微笑む彼女は絵の中に

 3人そろって祈りを捧げる


レミューズ:「家、鏡、絵。

     なるほど、道標か。

     どうやら我々は順番を飛ばしていたようだ。

     カンニングみたいで気分は良くないがな。」

レミューズが自分の発言に苦笑した。

バーバラ:「何がおかしい?」

レミューズ:「いや、ズールは多くの道標を残している。

      たぶん、我々が発見していない物もあるだろう。

      後世の誰かが残った道標を発見したら、

      きっと宝へのヒントだと考えるだろう。

      そう思ったら、ちょっとおかしくてな。」


全てを終えた後、バーバラはカイン王へ報告に向かい、

その後、レミューズと話し合った。


A,C:「お久しぶりです。」

A:「道標って、他にもあるんですかね?」

C:「パイン、アリス編の物語中では、

  たぶんもう出てこないと思いますが、

  あると思いますよ。」

A:「なんか、遠回しな言い方ですね。」

C:「ルシードが言っていた、虚偽を織り交ぜてという

  下りがあったように、

  偽物も存在しているという事ですね。」

A:「パイン達は、正常ルートだったから発見できなかった

  という考えでいいのですか?」

C:「その通りですね。」


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