二人の決意
連合暦20年7月21日、、カイン王国軍議室
カイン王:「さて、なにか必要なものがあれば言ってくれ。」
パイン:「その炎の剣をお貸しください。」
カイン王:「それだけでいいのか?」
パイン:「はい。」
パインは左手の腕輪を一瞬みるとあの時の事を思い出していた。
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※以下の記述は、後の契約者に伝える為にパイン自身が執筆した
手記を解読したものからの抜粋である。
意味が通じるよう加筆訂正していることを付け加えておく。
なお、文中、私と書かれている物は、ベンヌあるいは
パインであり、私達と書かれている物は幻獣を指し、
あなたと書かれている物はパインを指している。
残念なことであるが、この時代の人間はこれを
読むことはなかった。
それは、次の時代で目に留まることになるのだが、
そのことをパイン達は知ることはなかった。
手記には但し書きが付けられていた。
その一部を以下に記載しておく。
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ベンヌとの会話は頭の中に思い浮かぶものである。
それを聞く者によって若干異なる場合がある。
それは聞く者の知識の差、想像力の差によるものだ。
理解できない場合、それは思い浮かぶことすらない。
私の記述には不可思議な書き方が多数存在していると思う。
それはベンヌが私の考えを読み取り、そしてすぐに
それに答えているためである。
最後に言っておく、ベンヌと契約してから忘れる事が
できなくなった。
経験したことは全て正確に思い出せるのだ。
私が想像するに、ベンヌの記憶として残っているのだろう。
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以下の記述は本文からの抜粋である
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ベンヌの前に立った時、それはまるで光のようだった。
まるで太陽を直視しているような感覚だったのだ。
しかし、ベンヌが光を発しているわけでは無い。
ただただ、そう思えるのだ。
それは、嫌な感覚では無かった。
それはぽかぽかと温かく、まるで春の日差しのようだった。
同時に自分の心を見透かされている感覚にとらわれた。
しかし、それも別に嫌な感覚ではなかった。
言葉が浮かんでこなければ、寝てしまったかもしれない。
よくぞ試練を乗り越えました。
あなたの勇気そして行動力、決意を見せてもらいました。
まず、契約することの意味を話しておきましょう。
守る者という言葉は、メルクリウスが付けた言葉です。
そもそも私を守ることなど意味をなさないことです。
メルクリウスは、使命を三つに分けることを考えました。
一つは私と契約する者、もう一つは魔法具を守る者、
最後は導く者。
それらを総称して守る者と呼んだのです。
しかし、守る者の本当の使命はそれではありません。
魔獣の王を撃退することでもありません。
巫女の精神を。
巫女の意思を。
巫女の血筋を。
そして魔法具を。
それらを後世に伝え、魔獣の王との最終決戦に備える事が
あなたの使命なのです。
その時代で失われた物を復活させなさい。
それは炎の巫女が知っています。
炎の巫女はそれを受け継ぐものが引き継いでいます。
炎の巫女を目覚めさせる方法を私は知っています。
まずは、炎の巫女と会いなさい。
炎の巫女であるかは、私がわかります。
炎の巫女を守りなさい。
それらを成さなければ、人間は本当に滅びるでしょう。
:
(省略)
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シヴァを呼び出すには私があなたの中を通り抜けなければ
なりません。
あなたが望まなくてもその知識の一部を
知ることになるでしょう。
それは、知るべき事、知る必要のない事、
知ってよかったと思う事、知らなければよかったと思う事、
それら全てが含まれるでしょう。
あなたが望むならば、全てを知ることもできるでしょう。
しかし、それは人間には重荷でしかありません。
:
(省略)
:
契約することで、あなたはいくつかの良い効果と悪い効果を
受けることとなります。
あなたの知識、考え思い全てが私と共有されます。
そして、あなたは私の目となり耳となり口となるのです。
その代わりに私の知識と力を授けましょう。
知識はあなたの身になるでしょう。
しかし、力はあなたが発動できるわけではありません。
あなたの代わりに私が行うのです。
:
(省略)
:
あなたはよく考え、そして契約をするかを決めなさい。
私はよく考え、そして契約する事を決断した。
契約するに値する人間だと判断しましょう。
手のひらを上に向けて出しなさい。
私は言われた通り手を出した。
その時、突然手の上に腕輪が現れた。
それは誓いの腕輪です。
契約を行う前にそれを身に着けなければなりません。
この時私は、誓いという言葉に、
試されているような不快な気持ちにとらわれてしまった。
ベンヌはそれを見透かしたように続ける。
あなたの決意がその程度のものであったことが
残念でなりません。
それはまるで子共に諭すような感じだった。
私は今までに多くの人間と接してきました。
しかし、同じ色の人間にであったことはありません。
これは私達にとって大変興味深いことであり、
また不思議な事です。
私達の意識は巨大な1つの集合体であり、
それは広大な海といえます。
海を一色にそめることはできません。
染料を流しても、時間が経てばそれは薄められ、
何事もなかったように変わらないでしょう。
人間はとても小さな池です。
それは簡単に染めることができるのです。
あなたは法というものを知っていますね。
これは、私達にとってはあまりにも不思議な決まり事です。
全てが同じ色であるならば、全ての行動は一致しており、
その結果いかなる状況になろうとも、それは総意なのです。
つまり、全てが同じ色であるならば、
法というものは不要なのです。
ところで、あなたは法を破ったことはありますか?
どうやら無いようですね。
ならば、どのような法が存在するのか全て知っていますか?
なるほど、知らないようですね。
何故、法を知らない者が法を守る事ができるのでしょう?
そう、法は人間にとって悪しき行いと判断するものを
並べているからなのです。
しかし、法を破る者は絶えません。
それは、色が違うからです。
法を知らずに、法を守る者。
つまり、悪しき行いを知っており、行わないように行動する者。
法を守らず、私利私欲に行動する者。
つまり、悪しき行いよりも私利私欲を優先する者。
法によって、私利私欲を抑えている者。
つまり、悪しき行いを法によって判断している者。
そうです、法は最後の者達の足枷なのです。
法を知らずに、法を守る者にとって、法は意味を持ちません。
それは無い物と同じなのです。
どうやら分かったようですね。
本当の決意であるならば、誓いなど意味をなさないのです。
誓いの腕輪など、無きに等しいのです。
しかし、私達も人間も完璧ではありません。
もし、完璧であるならば、困る事も、悩むことも無いのです。
すべては、思いのままに進むのです。
知識不足、考慮不足、注意不足、ありとあらゆる原因が
不測の事態を起こすのです。
それを抑えるためにも誓いの腕輪が必要なのです。
この時、ある事を思い出した。
ここからはパインの記憶である。
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子供の頃、足をくじいた事を思い出していた。
毎日の剣の訓練を行っていたが、ある時、聖騎士が訓練を
見てくれる事になったのだ。
前日は、心が躍り目が冴えて眠れなかった。
目覚めたのは母親の声だった。
それは、剣術の時間に遅れるという声だった。
驚いた、そして急いで準備を整えると階段を駆け下りた。
部屋は2階にあり、狭く急な階段を使っていた。
毎日利用する階段であり、何千回と上り下りを繰り返していた。
目を閉じていても降りれる自信があった。
その日も順調に階段を駆け下りていった。
しかし、最後の階段で足を滑らせてしまったのだ。
起き上がろうとした時、左足に痛が走った。
そして、立ち上がる事ができずに、尻餅を搗いてしまった。
結局、聖騎士の指導を受けることは出来なかった。
原因は、前日に自分で置いた用紙に滑ったのだ。
それは、聖騎士に聞くことを書いたものだった。
その夜は、泣きまくった。
足の痛みではなく、聖騎士に指導を受けられなかった事、
そして、自分の愚かさにだ。
それからは、階段を駆け下りることは無かった。
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:
(省略)
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さて、無事に契約することができました。
これからシヴァを呼び出してもらいます。
しかし、この地以外では魔獣の王との戦いまで、
呼び出すことは禁じます。
シヴァの召喚はそれほどに私を消耗させるのです。
この地は、聖域であり、自然の巨大な魔法陣の中にあります。
この地であるならば、私は消耗しないでしょう。
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(省略)
:
シヴァが去った後、二人とも涙を流していた。
シヴァを呼び出している間中、自分の中を通り抜けるベンヌは
ありとあらゆる情報と記憶を見せたのだ。
それは、過去の魔獣の王との戦いの記憶、巫女達の記憶、
守る者の記憶などだった。
意味不明なものが大半だったが、その中にはメルクリウスの
記憶やズールの記憶、ローゼス公爵夫人の記憶も含まれていた。
中でも最も印象に残ったのは、ローゼス公爵夫人の記憶だった。
魔獣の王との戦いを何度も繰り返していた。
そして、メルクリウスと共に戦った記憶だった。
それは絶望ともとれる悲痛な叫びだった。
ここからは、断片的に存在するローゼス公爵夫人の記憶を纏め、
時系列順に再編集したものである。
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氷の巫女であるローゼス公爵夫人は、
何回も魔獣の王と戦っていた。
時間を超える魔法陣を利用したのだ。
それは、ズールの使った魔法陣と同じものであり、
シェリルが寝ていたものと同じものだった。
しかし、ネクロマンサーであったズールの代わりにシヴァが
その役を担っていた。
同時に炎の巫女である子供のシェリルが眠っていた。
氷の巫女は、アーテの崩壊を嘆いていた。
本来、時間を超える魔法陣に入るには、記憶を封印しなければ
ならない。
記憶の封印は、本人の苦痛の記憶を消失させる効果があり、
巫女としての本来の使命を達成するための処置でもあった。
さらに、長い年月の間に記憶が徐々に闇に浸食されてしまう事を
避ける為だった。
氷の巫女は、アーテの記憶を忘れる事を拒んだ。
そして、記憶の封印を拒否したのだ。
記憶の封印は本人が望まない場合、発動しない。
シヴァの力で闇に落ちることは無かったが、記憶が崩壊する事は
避けられなかった。
それはゆっくりとだが確実に進行していった。
その間、何回も魔獣の王との戦いを繰り返した。
しかし、シヴァも氷の巫女の限界を感じていた。
これ以上氷の巫女としての任務を遂行することは不可能と
判断したのだ。
そんな中、ズールが現れた。
シヴァは、ズールとの契約を行った。
それは、シヴァの知識や記憶と交換に、
氷の巫女の子孫を増やす事、炎の巫女を守る事だった。
そして、次の魔獣の王との戦いに備えることだった。
ズールはそれらを承諾し、シヴァと契約を結んだのだ。
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横のアリスを見ると顔を覆う事もなく涙を流していた。
ローゼス公爵夫人の思いがあまりにも強烈だったからだ。
二人ともその思いに共感し、涙が止まることはなかった。
その思いに応える為にも、来の為にも二人は決意するのだった。
巫女の思いを未来につなげる為に、そして魔獣王との
決着をつける為に、、、。
C、A:お久しぶりです。
C:ベンヌとの契約時のお話です。
ここで、この章は、おしまいになります。
次章は、「決戦魔獣王城」になります。
A:うーん、ベタすぎるタイトルですね。
C:単に思いつかなかっただけらしいです。
パインの書いた手記については、この時代ではなく、
次の時代で発見され解読されることとなります。
A:まさか、続編ということですか?
C:そのまさからしいです。
次の章でパイン・アリス編は最後になる予定です。
他の章よりもかなり短くなるおそれがある事と、
同時に執筆する可能性があるため、
事前に告知しておくとのことです。




