魅了と模写
連合暦20年7月16日、カイン王国軍議室
カイン王:「ジェイル、今回の間諜の問題だが、
秘密裡に行動したこともあり、
詳しく知らない者達も多い。
状況説明も含め、再度詳しく聞きたいのだが。」
ジェイル:「はい、何処からお話すればよいでしょうか?」
レミューズ:「すまないが、全て話してほしい。」
ジェイルは、カイン王の顔色をうかがう。
カイン王は、少し考えて言った。
カイン王:「そうだな、最初から話してもらおう。」
ジェイル:「わかりました。」
そう言って、その体験を語り始めた。
ゼロスと初めて会ったあのとき、私の意識は闇の中へと
落ちました。
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魅了の魔法、それは3つの段階工程を経て完成する。
第一段階目は、肉体と精神の交わりを無くすこと。
つまり、己の意思で、体を動かすことが出来なくなる
ということだ。
金縛りは遮断するのみであり、術者がそれを止めれば効果は
切れるが、魅了のそれは何もしなければ数分~数十分の間、
効果は継続する。
第二段階目は、精神の注入である。
肉体と精神を分離することによる隙間に己の精神を流し込む。
これにより、肉体を乗っ取ることができる。
その効果は術者の力量と個人差によって変わるが、
大まかに数時間~数日程度と言われている。
魔じゃ香は、第一段階と第二段階の触媒としての効果がある。
魔じゃ香に術者の肉体の一部を入れ、それを対象者に飲ませる
ことによって肉体を自由にすることができる。
魔法の発動が不要にも関わらず、効果を発動出来ることが
問題視され、禁制品に至った経緯がある。
魔法の場合、結界内では発動魔法を知る事ができるため、
魔導士がそれを発動することは無いだろう。
第三段階目は、意識の浸食である。
第二段階中にさらに魔法をかけることによって、
注入した意識が浸食を始め、全ての記憶に改ざんが発生する。
浸食が完了すると、完全に術者の僕になってしまう。
しかし完全に侵食されるまでには数日程度の時間がかかるのだ。
ジェイルは、第2段階目の途中で中断されたわけだ。
魅了の呪文は禁呪とされ、研究や使用は重罪とし、
その研究成果は葬られた。
魅了の呪文は、それほど難しいものではなく、
精霊魔法の研究を行う者は、研究を進めていく過程で、
それを知ることになる。
この中では、ドレアル、レミューズ、バーバラの3人が
その呪文を知っている。
しかし、魔獣の一部は、魅了を発動する事が判明した。
このため、魅了を阻止する魔法陣が作られたのだ。
この魔法陣は、第一段階を阻止するのだが、その魔法を効果を
他の効果に変換した上で、分散することで実現している。
このため、体の至る所がまるで肉離れになったように、
激痛に見舞われるわけだ。
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意識はあるにも関わらず、何も見えず、何も聞こえず、
身体は動かせず、ただそこにいるという感覚だけが確信できる
唯一の事でした。
しかし、しばらく後に突然景色や人々の顔、会話等が
頭の中に浮かんできました。
それらの場所や人々の顔は、思い出そうとしても思い出すことが
できなかったのです。
最初は、夢をみているのではないかと思いました。
しかし、見た事のある場所、見た事のある人が浮かんできた時に
夢ではなく実際に起こっている出来事ではないかと
思い始めたのです。
私は、その光景と人物、会話をできる限り記憶しようと
努力しました。
そして、最後に見た光景はルシード王国の来賓室、
人物はサールだったのです。
そこで、目を覚ましました。
そして、すぐにカイン王の所へと向かったのです。
バーバラさんと連絡を取り、サールの事を話しました。
その後、手筈通りやってきたサールを捕獲し、
魔法陣に閉じ込めました。
ルシード王国より、サールが発見されたことを受けたので、
サールの解放を指示しました。
その直後、サールが霧となって消えたのです。
皆さんも既に知っていると思いますが、
サール以外にも多数の人が魔法陣に囚われおり、
同様に開放されました。
レミューズ:「なるほど。
そんなことがあったのか。
ところで、その光景や人物だが、
どのように見えたのか?
例えば、上空から見ているとか、
他人の視点で見ているとかだが。」
ジェイルは、レミューズの着眼点に驚いた。
自分では、その発想は出てこなかっただろう。
ジェイル:「えっ!!
他人の視点でした。」
レミューズ:「というこは、ゼロス、あるいはその僕の可能性が
高いだろう。
その者の精神を共有したのか、あるいは、
ゼロスを中心として、魅了されているすべての者が
見ている光景かだ。
サールが拉致された理由もわかる。
あの本を発見したことによるものだろう。
突然、情報が来なくなれば、発見されたと
判断することは容易だ。
次の手を打ってきたと考えるべきだろう。
これは、私の判断ミスだ。
うかつに本を封印してしまったことが原因だろう。」
カイン王:「いや、それは違うぞ。
今回の件が無ければ、ジェイルがサールを見ることは
無かっただろう。
それはつまり、間諜の捕縛に繋がらなかったのだ。」
レミューズ:「いえ、それはあくまでも結果論です。
あの時にもっと慎重に事を運べば、
そう、逆手にとって偽情報を流す等の
方法がとれたはずです。
サールが拉致されることもなく、
間諜も一網打尽にできたはずなのです。」
そう言って、レミューズは黙ってしまった。
カイン王は、少し呆れた顔でレミューズを見る。
バーバラが、割って入った。
バーバラ:「まあ、それはともかく。
サールの偽物がゼロスでは無く、シロと同じ僕だと
思った理由を説明してほしいのだが、、、。」
カイン王:「あぁ、そうだ。
それを聞こうと思っていたのだ。」
ジェイル:「はい。
それは、あくまでも感覚的なものです。
なんというか、自分自身がゼロスだと思えたのです。
そして会話している相手が自分の所有物であると。
さらに恐ろしい事に感情が全くと言って無いのです。
まるで氷の中に閉じ込められたような感覚でした。」
カイン王:「・・・」
レミューズ:「もしかしたら、ゼロスは元は幻獣なのかも
しれません。」
カイン王:「どういうことだ?」
レミューズ:「ザイムで一瞬ですが、シヴァの精神と
接触しました。
その時、ジェイルと同じように感情が
全く無いように感じたのです。
しかし、シヴァの場合は温かみのある春の日差しの
ような感覚でしたが、、、。」
カイン王:「レミューズ、何故その件を報告しなかった?」
レミューズ:「いま、初めて思い出したのです。
どうやら、シヴァとの接触時の記憶は制御されて
いるようです。
たとえば必要とされる時にならないと
思い出さないような、、、。
そうか、シェリル!!。」
シェリル:「えっ。
なんでしょうか?」
レミューズ:「いや、すまない。
なんでもない。」
このやり取りに幾人かの者が、レミューズと同じ事を
想像していた。
シェリルの記憶も必要な時にしか思い出さないのでは無いかと。
丁度その時、部屋の扉が開くと、サールが現れた。
バーバラ:「サール、無事だったか。」
サール:「はい、私は拘束期間が短かったので、なんとか。」
カイン王:「無事でなによりだ。
早速ですまないが、
何が起こったのか説明してもらえないか?」
サールは、席に座ると話始めた。
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あの日、バーバラさん達がいなくなった日の昼のことです。
一人の魔導士が私のところにやってきました。
彼は、ポールさんの使いだと名乗り、ジェイルを目覚めさせる
ためにすぐに力を貸してほしいと言ってきました。
判断を仰ぐ人もおらず、緊急とのことでしたので、
独自の判断で同行することにしたのです。
行き先は遺跡でした。
松明を持ち奥へと進むと、突然暗闇に覆われたのです。
明るくなった時には、牢獄の魔法陣に囚われており、
目の前に1人の男が立っていました。
その男は、子供のような口調で、私に言いました。
???:「それは牢獄の魔法陣だから、脱出は無理だと思うよ。
ちょっとの間、その姿をかりるね。
たぶんだけど、死ぬことは無いと思う。」
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牢獄の魔法陣(とある魔導書からの抜粋)
この魔法陣は、対象者を魔法陣の外へ出れなくする効果がある。
ほとんどの場合、魔法陣内からの魔法の発動や魔法陣の破壊が
出来ないように作られる。
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そして、何かの呪文を唱え始めたのです。
すると、目の前に霧状の何かが集まり、
次第に形を作り始めたのです。
それは私でした。
その男と偽物の私は、すぐにその場からいなくなりました。
状況が分からない私は少しでも情報を入手するべく
周りを見回したのです。
すると、遠くに私と同じように閉じ込められている人が
いることに気が付きました。
声をかけてみましたが、返事は無く、接触を試みる事は
できませんでした。
次に魔法陣を調べました。
しかし、見た事もない魔法語で書かれており、
残念ながら停止することも、破壊することもできませんでした。
私は観念し、待つ事にしました。
そして、救出されるにいたったのです。
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魔法陣の停止と破壊(とある魔導書からの抜粋)
魔法陣は、大きく分けて2つの形成方法が存在する。
1つめは、維持費が不要な魔法陣。
発動すると瞬時にその効果が現れ、終了するような魔法に
使われる。
発動費用は、術者あるいは魔晶石で支払う事となる。
帰還の巻物などがそれにあたり、その費用は魔法陣を描く塗料に
含まれる魔晶石の粉末である。
2つめは、維持費が必要な魔法陣。
発動すると、その効果が現れ、その効果が継続する。
この魔法陣の場合は、維持費を支払う供給源が存在しなければ
ならない。
それは、術者であったり、魔晶石であったりする。
発動中の魔法陣を停止するためには、
その効果を知る必要がある。
その為には、描かれている魔法語を読みそれを打ち消す
魔法を唱えなければならない。
発動中の魔法陣を破壊するためには、2つの方法が存在する。
1つ目は、魔法陣への供給源を無くすこと。
この場合、術者を引き離すか、魔晶石を排除することで可能だ。
2つ目は、魔法陣の形を崩すことだ。
しかし、魔法陣によっては、不可能な場合もある。
それは、空間に作られる魔法陣だ。
この魔法陣は、空間に作られるため破壊は不可能となる。
さらに、魔法陣への供給源が存在しないため、
発動および維持は術者からとなる。
この魔法陣は、発動および維持に非常に多くの費用が
必要であるため、発動および維持できる術者が
存在しないのが現状である。
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カイン王:「その場所には、多くの者が囚われていた。
どうやら定期的に食事などは、
与えられていたようだが、、、。」
ジェイル:「よろしいでしょうか?」
カイン王:「なんだ?」
ジェイル:「サールの解放時の事です。
サールの解放は、魔導士の指示で開始されました。
サールの解放と同時に霧になったのです。
これは、どういう事なのでしょう。」
ドレアル:「そうじゃな。
その魔法陣に姿形を模写する効果もあるということ
じゃろうな。
その姿形を維持するためには、魔法陣に
拘束しなければならないということじゃろう。
しかし、厄介な事になったのー。
本人と間諜を識別する方法が判らん限りは、
今回のように、拘束された本人を
見つけるしかなとはのー。」
カイン王:「今回の件は、他の3国も含めて検討することとする。
各自は、魔獣王の討伐に向けての準備をしてほしい。
本日はこれで解散とする。」
C、A:お久しぶりです。
A:模写ってすごいですね。
自分がいっぱいいれば、1人じゃできないような事が
色々とできちゃいますね。
私も、やってみたいです。
C:今回使われた模写は、姿形だけなので、
自分がいっぱいというわけでは無いですね。
A:えぇ~~。
それじゃあ、他の人と変わらないじゃないですか。
C:その通りですね。
A:んー、じゃあ、いらなーい。




