運命の日1
ルシード:「そして運命の日がやってきた。」
レミューズは、不思議な感覚にとらわれた。
突然周りの景色が頭の中に流れ込んでくる。
目の前に大勢の人がいる。
自分は、一段高い位置からそれを見下ろしているようだった。
しかし、大勢の人の大半は、顔や服の色等は分からなかった。
ただ、大勢の人がいるという感覚のみだった。
見えているものでは無い。
しかし、あたかもそこにいるように感じる。
全てが分かるわけでは無く、強調された部分と何も無い部分が
はっきりと分かれていた。
残念ながら、音や声は聞こえてはこなかった。
ルシードは、群衆の中から1人の女性に注目した。
当然知らない人物であるが、それがルシードの母親であることは
はっきりと分かった。
母親への愛、そして決意が湧き上がっていくのを感じた。
これは、ルシードの記憶なのだろうと感じていた。
突然、頭の中に声が聞こえた。
魔導評議会長:「紹介しよう。
彼らが討伐隊のメンバーだ。
まずは、隊長のルシード。」
突然の事に驚くルシード。
ここで、突然途切れた。
ルシード:「我々は、多くの人々の歓声を受けながら
アーテを後にした。
巫女の神殿の森を抜けるまでは、
幾人もの魔導士達が我々を護衛してくれた。
森を抜けると平原が続き、城のある山へと続くのだ。
平原には魔獣が至る所にいたが、見つからないように
進んで行った。
そして、山道へと入って行った。
山道には、木々がほとんどなく、岩山と言っても
いいだろう。
我々は恐れることなく、山頂へと向かった。
驚いたことに、山に入ったのちは、
魔獣に遭遇しなかったことだ。
山頂まであとわずかというところまで進むと
山小屋があった。
巫女は、朝まで山小屋で過ごす事を提案した。
メリクリウスは、その提案にすぐさま賛同した。
6人が囲炉裏の火を取り囲んだ時、
巫女が静かに話し始めた。
巫女の話は驚愕に値する話ばかりだった。
まずは、夜を避けたという点だ。
どうやらメリクリウスは、分かっていたようだ。
巫女の話は、属性についての話だった。
魔獣は闇に属している。
そのため、夜の戦闘は我々が不利になる
という事だった。
次に、山に入ってから魔獣がいなかったことだ。
巫女が言うには、魔獣の壺はドーナツ状に配置されて
いるというのだ。
これには、壺の仕組みによるものが大きいらしい。
巫女の言葉をそのまま伝えよう。
「壺は魔獣界と人間界を繋ぐ通路のような物で、
一種の召喚の魔法陣になっているわ。
でも、その発動と維持には術者が必要で、
術者は、その壷に集中する必要があるの。
高位の魔獣になればなるほど、発動できる壺の数が
多くなっていく。
それでも、せいぜい数個程度が限界ね。
それに、術者よりも弱い魔獣しか呼び出すことが
できないの。
魔獣の王は、もっとも多くの壺を同時に
発動させることのできる存在だということ。
しかし、魔獣の王にも限界がある。
それは、召喚できる壺の範囲。
もし、範囲に制限がなかったら、人間は勝つ事が
出来ないでしょう。
壺により最初に召喚された魔獣は、
必ず同じ行動をとるの。
それは、近くに召喚されていない壺があるかを調べ、
その壷の召喚を試みる事。
それと、壺を守るための魔獣を呼び出す事。
例えば、複数の壺を真直ぐに並べておき、一番近くの
壺に召喚を行った場合、次々に召喚される様を
見ることが出来るでしょうね。」
この言葉の真偽は、今となっては確かめようがない。
しかし、2つの事柄から真実であることの可能性は
高い。
1つは、魔獣の城から離れるにしたがって、魔獣の
強さが弱くなっている事。
もう1つは、城の近くに魔獣がいなかった事だ。
遠くまで魔獣を送ろうとするなら、召喚できる範囲
ぎりぎりに設置するほうが効果的だろう。
レミューズは、考えていた。
ザイムより先の地で魔獣の強さが極端に強くなること。
レミューズ:((なるほど、ザイムか。))
レミューズが考えた事は、ザイムより先が魔獣王が召喚している
地域、ザイムより手前が召喚された魔獣が召喚している地域
ということだった。
次の話は、6つの魔法具についてだった。
我々は、己の持つ魔法具を眺めながら話を聞いた。
魔法具は7人の巫女と幻獣達が作り、そして、
過去に幻獣であったベンヌによって守られてきた。
その力は、長い年月をかけて与えられる。
そして、ベンヌの力なくして、
魔獣の王を退けることはできない。
強力な力は魔獣王を滅するが、使う者も惑わす。
それは、諸刃の剣でもある。
決して惑わされるべからず。
この言葉は、我の心に突き刺さる。
全てが過ぎ去ったのち、その意味を理解したのだ。
このことは、我の全ての話が終わったのちに
理解することができるだろう。
さらに、巫女が言うには、ベンヌの寿命は尽きようと
している。
今回の戦いが最後となるだろう。
しかし、恐れることはない、
ベンヌは生まれ変わるのだ。
問題は、6つの魔法具だ。
魔法具を守ること、そして、ベンヌへ納めることだ。
それが問題だった。
その役はメルクリウスが、自ら志願した。
それは、子々孫々まで受け継がれることだろう。
次の話は、魔獣の王の城についてだった。
城は、魔獣界から呼び寄せられた城であり、
魔獣の王のみが呼び寄せられるという。
その城には、東西南北の4つの門が存在し、
そのいずれも最上階の玉座へと繋がっている。
そしてその全ての門に門番が存在している。
玉座にたどり着くまでの最大の難関は、
門番だということだ。
東門には、強力な攻撃を誇る魔獣。
南門には、強力な魔法を唱える魔獣。
西門には、呪いを行使する魔獣。
北門には、鉄壁な守りの魔獣。
特に危険なのは、呪いの魔獣であるという。
先手を取られれば、一瞬でパーティーが
崩壊することになるだろうと語った。
この4匹の魔獣が存在している限り、
城内に入ることは不可能であろう。
しかし、案ずることは無い。
このうち、北門の魔獣は、遥か昔に排除しており、
現在でも不在ということだった。
レミューズは、驚き、悔しがった。
この情報を事前に得ていれば、あの悲劇は起こらなかった。
そう、レミューズが魔獣王城に初めて到達し、5人の仲間が
石化したあの悪夢のような出来事の事である。
次は、魔獣の王についてだった。
魔獣の王は、全ての魔獣の頂点に立つこともあり、
その力は、計り知れない。
しかし、案ずることは無い。
この強さこそが、魔獣の王の弱点なのだ。
魔獣の王は、決して死ぬことは無い。
魔獣の王は、決して負けることは無い。
召喚に応じたのみなのだ。
これらが、傲りを生む。
巫女が言うには、魔獣の王は、
決して魔獣の壺の召喚をやめない。
幾度となく続いた戦いだが、その全てで魔獣の王は、
召喚を止めていないそうだ。
そして、魔獣の王は、
玉座から動かない。
これは、召喚の魔法によるものだそうだ。
動かないというよりも、動けないのだ。
この2つは、討伐に対して有利に働くだろう。
しかし、決して侮ってはいけない。
魔獣の王には、強力な魔法と呪いがある。
特に呪いは、一瞬で全滅する可能性があるのだ。
呪いの魔法を発動させないか、解除する以外に
生き残る道はない。
呪いを防ぐためには、2つの方法がある。
1つは術者の呪いを維持できなくする方法。
もう1つは、呪いの効果を打ち消す方法。
幸いなことに、大河の水差で作られる水には、
呪いを打ち消す力がある。
この水を利用することにより呪いを防ぐのだ。
しかしこの水だけでは、完全に防ぐことはできない。
我々がいかにして、呪いを防いだかだが、
魔獣の城の1階中央には、血呪草
という草が栽培されている。
この草は、魔獣界にしか存在しない草であり、
呪いを糧として成長する草だ。
その力は、自らの近くの呪いを維持し続ける。
魔獣の王は、その草の力を使い、
呪いの維持を行っている。
巫女達は、この草を全て焼き払い、
魔獣の王の戦いの場で、
大河の水差の水を撒くことにより、
魔獣の王の呪いを無効化した。
この時、レミューズの険しかった顔に一瞬笑みが浮かんだ。
巫女は、最後に1人の名前をあげた。
その名前は、ゼロスという名前だった。
しかし、誰一人としてその名前に
心当たりはなかった。
我が子孫達よ。
ゼロスという者に気を許すな。
しかし、ゼロスを倒そうと思ってはいけない。
敵ではあるが、味方でもあるのだ。
繰り返し言う。
ゼロスを倒してはいけない。
ゼロスを倒すことは、我々の敗北を意味するのだ。
レミューズは、考えていた。
レミューズ:(一体どういうことだ?
ゼロスを倒すことが、我々の敗北だと?
ゼロスは、魔獣の壺を創ったと言っていたはず。
人間と幻獣が手を結んだことが問題だとも。
ゼロスは確実に召喚士を排除しようとしている。
何故、ゼロスを倒す事を問題視するのだ?
人間界と魔獣界を繋げたのは、奴で間違いない。
だとしたら、奴を倒すことは、人間界と魔獣界の
繋がりを無くすという事ではないのか?
いや、さらに奴は、昔に戻すと言っていた。
まさか、奴自身が繋がりを制限しているとでも
いうのか?)
考えれば考えるほど疑問は増すばかりだった。
我々は、その後様々な事を巫女に伺った。
しかし、我々の疑念は解けなかった。
その言葉は、まるで何かをはぐらかしていた様に
思えた。
そして、仮眠をとったのちに、明け方少し前に
出発した。
お久しぶりです。
リアルが多忙で有った為、執筆できませんでした。
誠に申し訳ありませんでした。
落ち着いたため、執筆を再開いたします。




