秘密の部屋7
連合暦20年7月15日、午後
視界が戻ると、そこは部屋の中だった。
5m四方のその部屋は、何もない真っ白な部屋だった。
部屋に光源が見当たらないということは、
壁自体が光っているのかもしれない。
床を見ても魔法陣も存在していない。
三方の壁には何も存在せず、一方向のみ扉が存在していた。
カミユ司祭:「全員お揃いですね。
それでは、先へ進みましょう。」
そして、扉を開け中へと進んだ。
扉の先は、想像以上に広かった。
左右は、15mはあるだろうか?
赤い絨毯を敷いた道が遥か奥へと続いている。
その道を挟むように柱が一定の間隔で立ち並んでいた。
上を見上げると、そこは光に満ち溢れ真っ白な空間が
広がっていた。
柱はまるで、光の中に吸い込まれているように思えた。
カミユ司祭は、ゆっくりと歩きながら話始めた。
カミユ司祭:「ここが、聖堂です。
奥まで進むと祭壇があり、通常の儀式は、
その祭壇で行われます。
左右には、片側25、計50の扉が並んでいます。
奥の祭壇の後ろ側にも2枚の扉があり、
我々の入ってきた扉を合わせると53の扉が
存在することになります。
左右の扉の47枚は開くことができましたが、
残りの扉は開けることが出来ませんでした。」
そして、右側にある、1つの扉へと近づいた。
赤い扉が目に飛び込んできた。
扉の装飾は、立体的な幾何学模様が施されていた。
扉の左右には、精霊と思われる彫像が立っている。
奥を見ると、全ての扉の前に彫像が立っているようだった。
カミユ司祭は、扉の前に立つと、扉を開けた。
カミユ司祭:「開ける事の出来る部屋は、全てこのように、
何もありません。」
部屋の中は、最初の部屋のように何もなかった。
カミユ司祭:「さて、いかがいたしましょうか?」
ドレアル:「一度来ている者は、先入観があるかもしれん。
初めて来た2人に任せた方が良いかもしれん。」
カミユ司祭がその言葉に頷く。
キャスバル王子:「確かにそうですね。」
そう言って、アルテイシア王女の方を見ると、2人とも頷いた。
レミューズは、バーバラの方を一度見ると言った。
レミューズ:「開いている部屋の調査は終わっていると思って
良いのでしょうか?」
カミユ司祭は、思い出すように少し考えると話始めた。
カミユ司祭:「この場所の調査が始まったのは、
20年ほど前からなのです。
その後、度々調査が行われましたが、
何も発見することができませんでした。」
バーバラが言葉を遮るように質問した。
バーバラ:「ローズがここを開いてから80年近く経っています。
60年もの間、調査が行われていなかったというのは、
どういうことですか?」
カミユ司祭:「定期的に調査は行っていました。
しかし、入り口以外の扉は閉まっていたのです。
扉が開いたのが、その頃なのです。
魔獣が目撃され始めた頃であることから、
魔獣王と何か関係があるのかもしれません。」
レミューズ:「なるほど、面白い。」
ドレアルは、レミューズを見つめた。
ドレアル:「お主、何かわかったのか?」
レミューズ:「いえ、残念ながらまだわかりません。
ところで、カミユ司祭。」
カミユ司祭:「何でしょうか?」
レミューズ:「ほかに聞かされている事は無いのでしょうか?」
カミユ司祭:「私の知っている事は、もうありません。
しかし、気になることを1つ思い出しました。」
レミューズ:「それは?」
カミユ司祭:「これは、神殿には直接関係ないかもしれません。
ローズ様が旅立つ前におっしゃられた言葉です。
それは、
『求める者は青と緑の道標を求めよ』
というものです。」
アルテイシア王女がカミユ司祭の発言に驚いたように反応した。
アルテイシア王女:「道標!!」
キャスバル王子:「アルテイシア、どうした?」
アルテイシア王女:「道標で、思い出したことがあったので。」
その言葉に全員がアルテイシア王女に注目した。
キャスバル王子:「それは?」
アルテイシア王女:「はい。
前王女から詩集も頂いたのですが、
その中の最初の詩が『道標』なのです。
それは、こんな詩でした。」
『道標』
私の居場所を知りたき者は、
魔法のわっかの真ん中で、
表と表の道標。
私の寝床を求める者は、
見えないわっかの真ん中で、
裏と裏の道標。
私の話を聞きたき者は
人のわっかの真ん中で
同じ景色の道標。
キャスバル王子:「なんだそれは。」
ドレアル:「うむ、確かに何か関係がありそうじゃの。
レミューズ、バーバラ。
何かわかるか?」
バーバラ:「いえ。わかりません。」
レミューズ:「残念ながら。
ただ、ローズが残したものであるならば。
関係している可能性は高いでしょう。」
ドレアル:「私も同意見じゃ。
しかし、これだけでは何もわからんの。
これらを意識したうえで、再度調査じゃの。
時間も少ないので、バラバラに調査するかの。
わしが呼んだら集まって、
今後の方針を決めるとしよう」
そして、各自閉じている扉を中心に調査を行っていった。
しばらくして、ドレアルが皆を呼ぶ声がした。
この時は、誰も成果は得られていなかった。
レミューズとバーバラは、ドレアルの声で調査をやめ、
2人並んでドレアルの方へ歩いていった。
前方を見るとドレアル、キャスバル王子、アルテイシア王女が、
集まっていた。
ドレアル達の少し手前に来た時に、後ろを歩いていた
カミユ司祭が声をあげた。
カミユ司祭:「あっ!!」
レミューズとバーバラは、その声に振り向く。
バーバラ:「カミユ司祭、どうしました?」
カミユ司祭:「今、バーバラ殿の背負っている鏡の魔法陣が
緑色に光ったように見えたのです。」
レミューズが、バーバラの後ろに回り、鏡の魔法陣を見る。
しかし、魔法陣は、緑色に光っていなかった。
カミユ司祭:「いえ、あれは、絶対に光っていました。」
レミューズがバーバラの背中から鏡を下す。
そして、バーバラが、レミューズの背中から絵画を下した。
その様子にドレアル達も集まってきた。
ドレアル:「どうしたのじゃ?」
バーバラ:「いえ、カミユ司祭が魔法陣が緑色に光ったのを
ご覧になったようなのです。」
ドレアル:「なんじゃと、緑じゃと。」
その時、レミューズは、カミユ司祭と共に、鏡を持ち光ったと
思われる位置を特定していた。
レミューズ:「ここだ。」
レミューズが鏡を床に立てると、裏側の魔法陣が一瞬、緑色に
光っているのが確認できた。
そして少し間をおいて、また光った。
魔法陣は、定期的に光っているのが確認できた。
レミューズ:「皆さん、何か目印になるような物を
お持ちでないですか?」
しかし、誰も声をあげる者はいなかった。
しばらくして、
カミユ司祭:「これは使えませんか?」
と袋を差し出した。
レミューズがそれを受け取り、中を見ると、
非常に細かい砂状のものが入っていた。
レミューズ:「これは、女神の砂(*1)ではないですか?」
カミユ司祭:「はい、その通りでございます。」
レミューズ:「そのような貴重なものを目印になどできません。」
そう言って、袋をカミユ司祭に返す。
カミユ司祭:「いえ、私は王家には多大なるご恩があります。
このような形でも恩返し出来れば幸いなのです。」
そう言うと、自ら袋から1つかみの女神の砂を取りだすと、
鏡に沿って撒いていった。
すると、一部の砂が僅かながら白く発光し始めた。
それを見ていたレミューズが言った。
レミューズ:「カミユ司祭のおかげで、1つ目の謎が解けたかも
しれません。
女神の砂をお貸しください。」
女神の砂を受け取ると、光っている砂の近くから慎重に、
そして、少しづつ砂を撒いてゆく。
他の者は、それをじっと見つめていた。
完成したのは、2m程の光る輪だった。
ドレアル:「これは?」
レミューズ:「どういう方法かは、不明ですが、
この輪の周りをゆっくりと回っている何かが
あるのです。
それに反応して、鏡の魔法陣が光ったのだと
思われます。
女神の砂がその軌道に反応して光っているのかと。
『道標』の詩の1番目の『魔法のわっか』が
このことなのではないと思います。」
ドレアル:「なるほど、さすがレミューズじゃな。」
レミューズ:「いえ、これはカミユ司祭の忠誠心のおかげです。」
そう言って、袋をカミユ司祭に返した。
キャスバル王子がカミユ司祭の横に近づくと、何も言わずに、
手にした袋の上から両手でぎゅっと握りしめた。
その上からアルテイシア王女も両手を添えた。
カミユ司祭は、2人を交互に見ると、一度笑顔を見せたが、
次の瞬間神妙な顔つきになった。
そのとき、目から一筋の涙が零れ落ちるのがみえた。
*1:女神の砂
ひと瓶の聖水に一つまみの砂を浸し、聖水が自然に蒸発しきる
まで、祈り続けることにより精製される。
その砂を振りかけることにより、癒しの効果を発動する。
多人数にも同時に効果を表す為、パーティーを組めない場合に
有効である。
非常に高価なため、大抵の神聖魔導士は自分で精製することが
一般的である。
A、C:「お待たせしました。」
C:「今回は、時間設定がありますが、前回のような
タイムリミットはやりません。
申し訳ありません。」
A:「時間設定があったのでやるのかと思っていました。」
C:「どうやら、納得できる案がやはり納得できないようです。」
A:「もう少し、時間がかかりそうですね。」




