秘密の部屋6
連合暦20年7月15日、昼
聖域に入ることを許されたのは、次の日の昼だった。
入ることが許されたのは、キャスバル王子、アルテイシア王女、
ドレアル、レミューズ、バーバラの5人とルシード神官の
カミユ司祭の計6人だった。
サールも参加を望んだのだが、残念ながら7人目は入れない
ということだった。
それも、6人より少なくても多くてもダメであり、
丁度6人でなければならなかった。
これは、聖域入口にある仕掛けによるものだった。
当初、ドレアルが同行を辞退しようとしていた。
しかし、ルシード国王がそれを却下した。
ルシードでは、魔法陣の研究が国策として行われている。
魔法陣で使用されている魔法文字のほぼ全てが、この神殿に
存在している魔導書から得られた知識と言っても過言ではない。
魔法陣の研究は、魔法文字の研究と言われることからも、
そのことが分かるだろう。
ルシードが魔法王国と呼ばれる所以でもある。
ドレアルは、転移の魔法の復活の為に、
神殿に訪れていた事があった。
そして、転移の巻物に描かれている魔法陣の基礎を作った。
これらの事から、ルシード国王は、ドレアルに対して、絶対の
信頼を寄せているのだ。
結局のところ、消去法(*1)でサールが除外されることとなった。
一行は、カミユ司祭に促されるまま、王宮の裏側から続く
1本の小道を進んでいった。
森の中をひたすら進んで行くと、森が開け、人工的な壁が
目の前に現れた。
レミューズとバーバラは上を見上げた。
壁は高く、上をみても終わりがよくわからなかった。
壁には、入口のようなものは見当たらない。
強いてあげるとするならば、壁から突き出た家のような構造を
した部分だけだった。
2人は、同じことを考えていた。
これだけ高い壁であるならば、ルシードから見えなければ
おかしい。
しかし、ルシードからは、この壁を見る事ができなかった。
それどころか、近くにくるまで、その存在にすら
気が付かなかった。
今見ている光景が現実ならば、ある程度距離が離れると、
見えなくなるという魔法が欠けられているのだろう。
非現実ならば、幻影を見せられているということになる。
レミューズは、バーバラと目を合わせると、軽くうなずいた。
そして、真実の目の発動を試みた。
しかし、それは叶わなかった。
レミューズの挙動に気が付いたのか、カミユ司祭が言った。
カミユ司祭:「神殿の近くでは、魔法が制限されており、
神聖魔法の癒し系の魔法のみが発動可能です。」
2人は、疑問をぬぐい切れないまま、先へ進むしかなかった。
カミユ司祭:「どうやら間に合いそうですな。」
この言葉に全員が頷く。
そして、その家のような部分に向かって進んでいった。
神殿には、いくつかの仕掛けが存在していた。
まず、滞在時間である。
理由は判明していないが、決まった時刻に神殿内の人が
神殿の外に排出されるという魔法がかかっていることだ。
この排出は、1日に12回実行される。
つまり最大で2時間しか神殿内に留まることができないのだ。
さらなる問題は、神殿に入ったものがいた場合、6日の間
誰も神殿に入ることが出来なくなることだった。
つまり、最大で2時間しか滞在時間がないということだった。
その為、ドレアルは、ドールハウス、絵画、鏡の3つの品を
持っていくことを提案した。
全員それに納得し、ドールハウスはキャスバル王子、
絵画はレミューズ、鏡はバーバラが背負うことになった。
当初、カミユ司祭自らドールハウスを背負う事を提案したが、
キャスバル王子が背負う事を望んだのだった。
一行は、家のような所の近くへ来ると、
家という表現が間違っていたことに気が付いた。
それには、入り口が一切なく、壁が突き出ているだけだった。
突き出た壁の一部に透明な球体(?)の一部が飛び出していた。
その球体が黄色に光っている。
カミユ司祭:「よし、間に合いました。
この玉の一部は、排出前に黄色になり、
排出中は、赤く光るのです。
これで、滞在時間が最大になります。
今開けますので、少し下がっていてください。」
皆が壁から離れると、球体に手を当て、何かつぶやいた。
壁の一部が丸く渦巻くように黒く染まって行く。
そして、1m程の真っ黒な穴が出現した。
ドレアル:「何度見ても、不思議じゃの。」
その言葉に、全員が頷く。
カミユ司祭:「それでは、中に入ります。
私に続いて入ってください。
中に入ったら、私が良いというまで、
動かずにその場で待機してください。」
そう言うと、カミユ司祭は腰を屈め、真っ黒な丸い穴の中へ
入って行った。
続いて、他の者も入って行く。
中は、真っ暗だった。
全員が中に入った時に、明かりがついた。
バーバラは、急激な光量の変化にしばらく目がくらんでいた。
目が光になれてくると、まず目に入ったのは、
床から突き出た円柱だった。
円柱は、加工した大理石のような光沢をもち、幾何学模様(*2)が
彫刻されていた。
上部には、入り口にあったのと同じように球体が
埋め込まれているようだった。
周りをみると穴に入っただけなのに、他の者も同様に一定間隔に
配置された円柱前に立っていることがわかった。
どの壁を見ても、入ってきた穴は存在していなかった。
カミユ司祭:「まだ、動かないでください。
しばらくすると、目の前の円柱の上部が
光りだします。
そうしたら、手を玉の上に乗せてください。
そして、光が消えるまで、動かないでください。」
視線を柱に戻したとき、玉が光った。
バーバラは、言われたとおりに、右手を置くと、
そのままじっとしていた。
しばらくすると、玉の光が消えた。
カミユ司祭:「はい、もう、動かれても結構です。
あと少しすると、転移されます。」
バーバラは、質問せずにはいられなかった。
バーバラ:「司祭。
これは一体何なのです?」
カミユ司祭:「残念ながら、私にもわかりかねます。
ただ、言えることは、この手順を踏まないと
神殿の中に入れないという事です。
過去にあの壁の周りを調査したことが記録に
残っていますが、皆さんが入ったあの入口以外に、
入れる場所は存在しなかったようです。
壁の破壊も試みたようですが、傷一つつける事が
出来なかったと記録に残っています。」
レミューズ:「記録?
ということは、昔からあったにもかかわらず、
入れなかったという事ですか?」
カミユ司祭:「はい。
この件に関しては、全て包み隠さずお話するように
国王様より命を受けております。
なお、これからお話することは、
国王様と神官のみが知りえることで、
他の者は知りえない事です。
その点をご理解の上、内密にお願いいたします。」
一呼吸して、カミユ司祭が話始めた。
カミユ司祭:「この神殿が存在していることは、昔から分かって
おりましたが、入ることが出来なかったのです。
皆さまは、ローズという名を既に聞いていると
思いますが、彼が王宮に召し抱えられたのは、
この神殿の入り方を知っていたからなのです。」
レミューズとバーバラは、少し驚いたような顔をしていた。
キャスバル王子:「なんだと。
どういうことだ?」
カミユ司祭:「これは、キャスバル王子様もご存じない事ですが、
ルシードの史書には、0級の史書がございます。」
ルシードでは、書物の閲覧を制限するために、書物に1~5級の
等級をつけて管理している。
キャスバル王子:「0級だと?
それは何だ?」
カミユ司祭:「国王様と選ばれたの者以外秘密とされる
書物のことです。
全てを閲覧できるのは、国王様のみであり、
選ばれた者は、その一部を口頭で伝えられる
だけなのです。
私は、この神殿を任されたため、神殿に関する
情報のみを知る事となりました。
その史書には、このように書かれています。
『闇の王蘇りし時、巫女蘇り、光の口開かれん』」
キャスバル王子:「巫女がこの神殿の入口を開くというのか?」
カミユ司祭:「はい、その通りでございます。
当時の国王様は、ローズ様を巫女と判断し、
最高の待遇でもてなしたそうです。
国王様は、闇の王の復活を危惧されましたが、
ローズ様は、闇の王の復活は、80年ほど先だと
予言されました。
そして、国王様と共に神殿に赴き、魔導書を
託されました。
これより、80年の間、失われし魔法陣の復活に
勤しむようにと。
ローズ様は、己の身上を偽るようにと言いました。
そのため、国民にローズ様を偉大なる予言者と
紹介したそうです。
ご存知のように、ローズ様は、数多くの調度品や
芸術品を作られました。
そして、それが終わると、何者かの子孫を探す事を
告げられました。
そして、誰にも悟られずこの地から消えたのです。」
キャスバル王子:「なるほど、さすがに魔獣王の復活の予言は、
公開するわけにはいかないだろうな。
国策で行っている魔法陣研究もこれが始まり
ということか。
ところで、マスターは、この事はご存じ
だったのですか?」
ドレアル:「残念ながら、存じてはおりませんが、
魔法の復活を成し遂げた時、国王様が、
『これで前王様の願いが成就された』
と仰られたことを思い出しましたわい。」
その時、突然辺りが真っ白になった。
*1:消去法
様々な選択肢が考えられる場合、間違い、有り得ない物を順番に
消去し、最終的に残った選択肢を正しい答えとする考え方。
*2:幾何学模様
三角形、四角形、六角形などの多角形や円、楕円、直線などの
単純な図形を部品として、それに平行移動、反転、回転、
色の変化、拡大・縮小、分割などの操作を加えながら連続して
組み合わせ配列を展開してつくった模様。
A:「おぉー、今回は投稿が早い」
C:「どうやら、今回はがんばったようですね。」
A:「ところで秘密の部屋まで、あと少しって所ですか?」
C:「部分という意味でしたら、あと少しらしいです。」
A:「ついに、また、謎が解明されるのですね。」
C:「んー、どうでしょう。
謎が謎を呼ぶという言葉もありますし、、、。」
A:「・・・」




