秘密の部屋4
連合暦20年7月14日、昼
今回の件で地下を除くすべての階の魔法の品の収集は
終わっていた。
地下に関しては、地上以上に強力な封印がなされており、
内部で魔法の類を発動させることはできないということで、
対象外となっていた。
レミューズ、キャスバル王子、ドレアル、バーバラの4人は、
1階以外で集められた品々がおかれている部屋へと向かった。
サールは、引き続き本の調査をすることとなった。
2階の部屋に集められた品々は、絵画、彫刻、鏡、食器類、花瓶、
その他装飾品等、まるで美術館か博物館のようだった。
品々は、大きく3つにわかれていた。
1つは、近年に制作されたと明白な物。
1つは、制作年代が古い物。
1つは、制作年代不明の物。
5人は、個別にそれらの品を調べていった。
そして、一通り調べ終わると一か所に集まり、意見の交換を
始めた。
ドレアル:「さて、何か気になるものがあったかの?
残念ながら、わしには分からなかったわい。」
そう言って、皆の顔を見回す。
最初に発言したのは、バーバラだった。
バーバラ:「これはという物は、ありませんでしたが、
気になる物はいくつかあります。」
その発言に反応し、レミューズが感心したように言った。
レミューズ:「なんだ、お前も気になるものがあるのか。
どうだ、昔の遊びをやってみないか?」
バーバラ:「面白い。受けてたとう。」
ドレアル:「ならば、わしが審判をやるかの。」
キャスバル王子は、その様子を黙って見ている。
2人は、紙とペンを出し、何やら書き始めた。
書き終わると、紙を2つ折りにして、ドレアルに渡す。
ドレアル:「それでは、見させてもらう。」
ドレアルは、受け取った2枚の紙を開いていった。
そして、満足そうな顔をしながら言った
ドレアル:「なるほど、予想通りじゃな。」
2枚の紙を両手に持ち、皆に見せた。
そこには、書かれていたのは、全く同じ内容であった。
『ドールハウス(*1)、鏡、絵画』
それらは、全て近年に作成されていることが判明している品々で
あった。
キャスバル王子だけが、真向から反論した。
キャスバル王子:「ちょっとまってくれ。
それらは近年に作成された物だと判明している
物だ。
何が気になるというのだ?」
レミューズとバーバラがお互いを見つめ合うと、
何かのサインがあったのか、バーバラが話始めた。
バーバラ:「これらの品は、近年に作られたことが
明白であることが分かっています。
しかし、このドールハウスは不可解な点が
存在しているのです。」
バーバラは、ドールハウスの横に移動すると、他の者も
その近くへと移動した。
バーバラ:「このドールハウスですが、かなり精巧に作られて
います。
ここを見てください。」
ドールハウスの1点を指さす。
そこには、小さな魔法陣が描かれていた。
バーバラ:「この魔法陣は、密談用の魔法陣です。
条件さえ整えば、実際に発動するでしょう。」
キャスバル王子が目を凝らしてそれを見つめる。
キャスバル王子:「確かにそのようだな。
それで、何が言いたいのだ?」
バーバラ:「もう一つ魔法陣があります。
こちらをご覧ください。」
バーバラは、そこを指さした。
そこに書かれていた魔法陣は、何か所か魔法文字が欠けていた。
キャスバル王子:「んっ?、この魔法陣は、文字が欠けている。
いったいどういう事だ?」
バーバラ:「ここからは、あくまでも想像ですが、
このドールハウスは、実在するドールハウスの
複製だと思います。
密談用の魔法陣は、精巧に作っているにも関わらず、
この魔法陣は、魔法文字が欠けている。
つまり、属性の摂理により、模写することができな
かったのではないかと考えたのです。」
キャスバル王子は、感心したように黙って聞いている。
バーバラは、話を続けた。
バーバラ:「さらに壁にかかっている鏡と絵画を見てください。」
キャスバル王子は、その鏡と絵画を凝視した。
キャスバル王子:「あっ、この絵は、、、。」
そして、隣の机に置かれている絵画を見た。
キャスバル王子:「同じ絵だ。」
さらに、隣に置かれている鏡をみる。
その鏡の枠の形が、ドールハウスの鏡と同じだった。
キャスバル王子:「鏡の枠も同じ模様をしている。
確かにバーバラの言う通りかもしれない。
しかし、それが何故、秘密の部屋と関係して
いるというのだ?」
バーバラは、少し困った顔をしながら答えた。
バーバラ:「いえ、その点については、現物を見ない事には、
分かりかねます。」
レミューズが突然割って入った。
レミューズ:「バーバラ、もう話すことは無いのか?」
バーバラ:「あぁ。残念ながらこれ以上は分からなかった。」
レミューズは、少し残念そうな顔をしながら言った。
レミューズ:「1つ見落としていることがある。
魔法文字の欠けた魔法陣だ。
よく見てみろ。」
その言葉にハッとして、魔法陣を凝視する。
魔法陣をよく見ると、外周の円に掠れている部分が存在している
ことが見て取れた。
それも4か所、まるで、そこに何か置かれていたような跡だった。
バーバラはそれを見つけると、苦虫を嚙みつぶしたような顔を
して、レミューズを見た。
レミューズ:「どうやら、気が付いたようだな。
その掠れは、そこに何かあったという印だろう。
もし、後世に残す必要がある情報を隠すならば、
全てを精密かつ忠実に作らなければならない。
つまり、掠れも忠実に作らなければならないという
事だ。
そこに何があったのかは、判らないが秘密の部屋に
関係する何かの可能性は残っている。」
その時、アルテイシア王女が部屋に入ってきた。
アルテイシア王女:「皆さんお揃いですね。
あら?それは、私のドールハウスでは
ないですか。
懐かしいですね。」
そう言って、ドールハウスに近づく。
キャスバル王子:「アルテイシア。」
その声にアルテイシア王女は、キャスバル王子の方を向く。
アルテイシア王女:「何でしょうか、お兄様。」
キャスバル王子:「このドールハウスだが、
どうやって手に入れた?」
アルテイシア王女:「これは、前のアルテイシア王女様より
受け継いだものです。
他にも、絵画や壺、鏡なども受け継いで
おります。」
キャスバル王子:「この、絵画と鏡もその中に含まれていたか?」
キャスバル王子は、例の2つを指さす。
アルテイシア王女は、それらを見ると、頷いた。
キャスバル王子:「2人の予想は、正解かもしれないな。
ところで、アルテイシア。」
アルテイシア王女:「はい。」
キャスバル王子:「これらの品の作者は、知っているか?」
アルテイシア王女:「はい。
確か、100年ほど前の人で、ローズと
名乗っていたと聞いています。」
キャスバル王子:「ローズ?
聞いた事がある名前だ。
そうか、予言者ローズだ。」
ドレアル:「予言者ローズとは?」
キャスバル王子:「予言者ローズは、100年ほど前に忽然と現れ
様々な予言をしたと言われる人物だ。
当時、彼の予言は、ことごとく当たったと
言われている。
彼がこの地に現れてから数年のうちに王宮に
召し抱えられた。
そして魔獣王の復活を予言したのだ。
彼は、この予言のせいで王宮の職を解かれた。
その後の行方は分かっていないが、噂では、
病死したと言われている。
予言の全てが当たったとは思ってはいないが、
魔獣王の復活は事実だった。
彼の予言の全て否定することはできない。」
ドレアル:「そのような予言者が何故ゆえに複製品を
作ったのじゃろうか?
まさか、複製品を作ることが目的とも思えんしの。」
レミューズがハッとした顔をしてドレアルを見つめた。
レミューズ:「さすが、ドレアル師匠、目の付け所が違います。
まさに、それが目的だったと考えるのが、
正解かもしれません。」
ドレアル:「どういうことじゃ?」
レミューズ:「今回の件で分かる通り、何者かが何かを探っていた
ことは事実です。
仮にそれが、秘密の部屋の情報だとしたら。
それを阻止するために複製を作ったと考えたなら。
つじつまが合います。」
ドレアル:「なるほど、お主は、ローズは秘密の部屋を守るために
王宮に召し抱えられたと考えたのじゃな。」
レミューズ:「その通りです。」
ドレアル:「仮にそうだとして、予言の件といい、
複製の件といい、どうやって、それを知ったの
じゃろうか?」
この発言をした後、ドレアルは、驚いた顔をした。
ドレアル:「まさか、ローズがズールだと言いたいのか?」
レミューズは、笑顔を見せると、答えた。
レミューズ:「その通りです。
ズールは、少なくとも2つの目的のために
ルシード王国に現れたと思われます。
1つは、メリクリウスの魔導具の取得のため、
もう1つは、秘密の部屋の隠蔽のため。
どちらも魔獣王の討伐の為に必要な物
なのでしょう。」
ずっと考え込んでいたバーバラが言った。
バーバラ:「確かに、そう考えればつじつまが合う。
いままでの情報からも可能性は高いだろう。
しかし、確証はない。」
ドレアル:「確かにそうじゃの。
確証を得る為にも、早急にドールハウスの謎を
解くしかあるまい。」
*1:一定の縮尺で作られた模型の家のこと。
内装中心に作られており、生活空間を主に表現する。
A、C:「お久しぶりです。」
C:「秘密の部屋の確信に近づいてきているのか
よくわからないですが、進んでいることはたしかですね。
あと、ズールは、一体何を知っていたのかが気になりますね。」
A:「確かにそうですね。
ところで、ズールの話は、無いのですか?」
C:「これに関しては、本作や番外編では書かないそうです。
『続編があれば可能性はある』だそうです。」
A:「まだ、終わってないのに、続編の話ですか、、、。」




