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魔獣の壺 - 本編 -  作者: 夢之中
ベンヌの住まう山
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秘密の部屋2

ルシード王宮、それは東西を長辺として北側が窪む弧の字型に

建築された宮殿だった。

地上3階層からなり、地下にも1階層有している。

1階は、複数のホールや応接室、会議室、図書館などが存在し、

ルシード国民に対して広く開放されていた。

2階は、厨房や近衛兵の番所、魔法の研究施設、小さいながらも

王宮従事者の部屋などが存在する。

3階は、中央に玉座があり、東西で近衛兵の番所を挟む形で、

区域分けされていた。

東側が王族の住む区域、西側が迎賓用区域になっていた。

地下は、近衛兵の施設や倉庫および牢獄区域となっている。

近年では、数年に1度の割合で内外装の修復改装工事が

行われており、800年以上とされる歳月を感じさせなかった。

800年以上という表現は、記録として残っている最古の

ものであり、その記録が修復記録であったことからである。

ルシードの建国が1000年とも2000年とも噂される根拠にも

なっている。


連合暦20年7月11日、

豪華な朝食を済ませた一行は、キャスバル王子に促されるままに

1階の応接室へと移動した。


キャスバル:「王宮の1階は、国民に開放されている。

      そのため、今回は改装調査という名目で一時的に

      閉鎖することにした。

      期間は、1週間だ。

      その間に1階の調査を終了させてほしい。」

レミューズ:「1週間ですか、、、。

      かなり厳しいですね。」

キャスバル:「期間的に難しいのか?

      試験の時はすぐに見つけたではないか。」

レミューズ:「魔法の品や仕掛けの類を見つけるのは

      難しくありません。

      問題は、発見された品の数なのです。

      発見した物は、それが何か吟味しなければ

      なりません。

      数が多ければ、当然、時間がかかるのです。」

キャスバルは、少し考えると答えを出した。

キャスバル:「なるほど、わかった。

      王宮の魔導士を総動員させよう。

      まず、発見した魔法の品については、1か所に集め

      その魔法の品の効果を確認させよう。

      判断がつかない物については、別の場所へ移動し

      各属性魔導士で議論させるとしよう。

      当然の事だが、そなた達も参加してもらう。」

レミューズ:「わかりました。

      早速始めましょう。」

それからのキャスバルの行動は迅速だった。

場所の確保、魔導士の招集が1つ目の魔法の品が発見される前に

終了していたのだった。


連合暦20年7月11日、夜

レミューズは、1階の調査を終え、魔法の品の確認部屋に入り、

目を見張った。

机の上と床に山と積まれた書籍と物品の数々が置かれていた。

仕掛けの類は発見できなかった。

当然のことであるが、修復工事で発見できないということは、

存在していないのとほぼ同じと考えてよいだろう。


レミューズ:「多くの品を渡したのは確かだが、

      想像以上の量になったようだな。」

バーバラ:「おい、レミューズ。

     お前も、こっちに来て手伝え。」

サール:「レミューズさん、お願いしますよ。」

レミューズが本の山を回り込むと、目の前にキャスバル王子、

アルテイシア王女、そしてドレアルが小さな本の山を囲む形で

直接床に座り込み、黙々と本の吟味をしていた。

アルテイシアがレミューズの気配に気づき顔をあげた。


アルテイシア:「あっ、レミューズさん。」

ゆっくり立ち上がると、ドレスの裾を持ち上げ、会釈する。

それは、王女様という感じの挨拶だった。

レミューズも、少し慌てて、礼儀作法通りの挨拶を行った。


レミューズ:「王女様が何故、、、。」

アルテイシア:「兄も私も魔導士の端くれです。

       参加しないわけにはまいりません。

       それに、私は土属性魔法を修得しています。」


土属性、それは、4大属性(土水火風)の中の1つである。

全ての物は、4つの属性の組み合わせで構成されており、

最も多い属性を、その物の基本属性を呼ぶ。

現在では、生物の基本属性は土属性と考えられている。

基本属性は、同一属性の魔法の修得を有利にする。

人間は土属性であるが、土属性魔法は防御系で有るが故に、

自ら好んで習得する者は少ない。

一番の問題は、上位の魔法を使うためには、他の属性を捨てる

必要がある為である。

これは、発音を含め、精霊文字に起因している。

精霊文字は、大きく分けると、4大属性の精霊文字となる。

細かく言うと、土属性精霊文字や火属性精霊文字と呼ばれる。

さらに、各属性から派生した属性も存在する。

レミューズの修得している氷属性もその一つである。

氷属性を習得するには、水属性を修得していなければならず、

それ以外の方法は、現状発見されていない。

つまり、レミューズは、水属性と氷属性の2つを修得している

ということになる。

4大属性の精霊文字を4大属性文字と呼び、

派生属性も含んだ文字を魔法文字と呼んでいる

それらには、強弱が存在している。


  土   光

 水 風  ↕

  火   闇


これは、反時計回りで強弱を表したものである。

土は、水には強いが、風には弱い

水は、火には強いが、土には弱い

火は、風には強いが、水には弱い

風は、土には強いが、火には弱い

また、光と闇は、相互に干渉するのみである。

派生属性は派生元と異なり、強弱も派生元と同じにならない。

場合によっては、強弱が反転したり無効になる場合もあるため、

注意が必要となる。


さらに、魔法には下級、中級、上級、最上級という呼称が

使われるが、下級、中級と呼ばれる魔法文字は、共通魔法文字で

構成されている。

これは、属性に関係なく使用される文字の事である。

異なった文字も存在しているが、現在発見されている文字と

しては、それほど多いわけではない。

しかし、発見されていない文字もあり、それがどれほどの量

存在しているか、判明していない事も事実である。

上級および最上級の精霊文字は特殊文字であり、この属性文字

を修得すると、理由は分からないが、他属性の特殊文字の多くが

発音も含め認識できなくなってしまう。

これを属性の摂理と呼ぶ。

このため、4大属性の2つ以上の属性を極めることは不可能という

ことである。

しかし、派生属性に限っては元属性を極めることにより修得する

ことが可能となる。

さらに、光属性である神聖魔法を覚えると、闇属性に近い

火属性の特殊文字を認識できなくなってしまう。

このため、火属性を捨てると言われるのである。

もし闇属性を覚えることを望むのならば、光属性に近い土属性を

捨てなければならないということだ。

レミューズは、賢者になるために、闇属性に近い火属性を

捨てることになった。

これは、火属性の上級、最上級魔法を捨てることを意味する。


レミューズ:「土属性ですか。

      それはすばらしい。」

アルテイシア:「いいえ、ルシードの王女は、土属性を修得しな

       ければならない仕来りがあるのです。」

レミューズ:「なるほど、魔獣王との戦いの為ですか。」

アルテイシア:「はい、しかし実際には、1度だけですが、

       選択の余地があるのです。

       戦うか守るかという選択です。

       私は、守る方を選択しました。」

レミューズ:「それでは、神聖魔法も修得されたのですか?」

アルテイシア:「いえ、残念ながら、私にはその資質は

       ありませんでした。」

レミューズ:「そうですが、それは残念なことです。」

突然、キャスバルがこちらを向くと少し怒鳴り気味で言った。


キャスバル:「おい、アルテイシア、さっさとやらないと、

      終わらないぞ。」

アルテイシア:「はい、お兄様。」

アルテイシアは、レミューズの方を向くと、

再びお辞儀をし、ゆっくりと座り作業を続けた。


レミューズがバーバラの側に到着した時、バーバラが1冊の本を

差し出した。

バーバラ:「この魔法文字、読めるか?」

レミューズが、その本を受け取るとペラペラとめくりながら

眺めた。

レミューズ:「いや、残念ながら読めない。」

バーバラ:「そうか、ならば、王女様に見てもらうしかないな。」

そう言って、立ち上がるとアルテイシアの方へと歩いて行った。


しばらくして、バーバラが本を片手にもどってきた。

バーバラ:「どうやら、土属性でも無いようだ。」

レミューズ:「そうなると、風属性、あるいは派生属性

      ということだな。」

サール:「えっ、風属性って、、、

    修得できた人なんて、いるのですか?」

バーバラ:「確かに聞いたことが無いな。」


風属性は、人間の基本属性である土属性の強属性でもある上に、

研究する魔導士が極端に少ないため、修得することは極めて

困難と言われている。

水属性も研究者が少ないため同様ではあるが、

土属性の弱属性であるため、風属性よりは修得はしやすいと

考えられている。

しかし、派生属性は別である。

その属性を最後まで修得しないと、研究すらできないのである。

特に水属性は、水の無いところでは全く役に立たない。

魔獣との戦いを考えた場合、研究中は無力となってしまうのだ。

このため、新たに水属性を研究しようとする魔導士は、

皆無に等しいといえるだろう。

そう、レミューズを除いては。


レミューズ:「たった一人だが、可能性のある人物がいる。」

サール:「えっ、だれですか?」

レミューズ:「メリクリウス。」

サール:「なるほど、疾風の大鎌と渦雷の剣ですね。」

レミューズ:「そう、疾風の大鎌は、風属性だろうし、

      渦雷の剣は、雷属性だろうな。

      雷属性は風属性の派生属性ということだ。

      但し、実在するならばだ。」

サール:「ちょっとまってください。

    メリクリウスの6つの魔法の品って、

    たしか、大河の水差、大地の鎚、大樹の杖、業火の剣、

    渦雷の剣、疾風の大鎌でしたよね。

    大地の水差が、神聖属性。

    大地の鎚が、たぶん、土属性。

    大樹の杖が、たぶん、木属性。

    これは、土属性の派生属性ですよね。

    業火の剣は、火属性。

    渦雷の剣は、たぶん、雷属性。

    疾風の大鎌は、たぶん、風属性。

    これって、どう考えてもおかしいですよね。

    1人の人が作ったとするならば、

    属性の摂理を無視しています。」

レミューズ:「そう、それが、メリクリウスが創作だと言う人々の

      根拠になっているのだ。

      しかし、業火の剣を実際にこの目でみて少し考えが

      変わった。

      あの剣には、我々の知らない技術が使われている。

      そう考えると、否定することは出来ない。」

バーバラ:「そうだな、私も同じ意見だ。」

サール:「私は、まだ半信半疑ですね。

    作者と言われているジェニスって人も、

    実在していたのかもはっきりしていないし、、、。」

レミューズ:「まあ、真実がわかるまでそれほどの時は

      かからないと思うが、、、。」

バーバラ:「あぁ、確かに、その通りだな。」

サール:「えっ、2人とも何か知ってるんですか?」


その時突然、キャスバルが大声で話始めた。


キャスバル:「本日は、ご苦労だった。

      本日はもう休んでくれ。

      明日の朝からまた、続きをお願いしたい。

      それでは、各自解散してくれ。」


魔導士達が次々と退室して行く中、サールは、さっきの話が

少し気になっていた。

しかし、自分の部屋につくなり、壁際に置かれた袋の中から

1体プリティーベアーズをとりだすと、ベッドの横の机に置き。

うっとりと、眺めるのだった。


こうして、秘密の部屋の探索の初日が終了した。

C:「お久しぶりです。

  Aがお休みの為、私のみでお送りします。

  さて、今回は、属性の説明が多かったと思いますが、

  番外編にするかどうかまよった上、今後の事も考え

  本編にいれることにしたようです。」

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