秘密の部屋1
連合暦20年7月10日、夜
4人は、ルシードに着くなり、多くの人々の出迎えを受けた。
その中には、なんと、王子と王女の顔もあった。
それは、国賓並みの出迎えでもあり、そして秘密の部屋捜索の
重要性の表れでもあった。
王子がドレアルの顔を見つけると近づいてきた。
王子:「これは、マスタードレアルも一緒でしたか。」
ドレアルは、少し困った顔をしながら答えた。
ドレアル:「これは、王子様直々の出迎えとは、
畏れ多き事です。
キャスバル王子様でよろしかったでしょうか?」
そういいながら、両手を胸の前に交差した上で、片膝をつき、
頭を垂れた。
これは、ルシード王宮での王族への礼儀作法であった。
キャスバル:「そうだな、このたび晴れてその名を名乗れる。」
ルシード王国の王族は、決められた3つの名前が存在する。
ルシードを名乗れるのは、国王のみであり、
他の者がルシードの名を使う事は禁止されていた。
同様に第一王子をキャスバル、第一王女をアルテイシアと言う。
生まれた時に付けられる名前もあるが、その名前を使う事は
ほとんどと言って無い。
区別する場合は、第二王子、第三王子という呼び方をする。
庶民が王子の名を呼ぶ時は、単に王子様と呼ぶことになる。
さらに、その実績や功績によって、その順位が変わる。
生まれた時からの累積で行われるため、
よほど優秀でないかぎり、年長者の順位を奪う事は困難だった。
ドレアルは、ルシードの世襲には興味がなかったため、
最新の情報を得ていなかったのだ。
キャスバル:「さて、ところで、真実の目とやらを
持っているのは、どちらの方かな?」
レミューズが無言で1歩前へ進む。
頭のフードをあげると、顔を見せた。
キャスバル:「なんと、レミューズではないか。」
レミューズ:「王子様、お久しゅうございます。」
そう言って、ドレアルと同じように頭を垂れた。
ドレアル、レミューズ、バーバラの3人は、ルシードで生まれ、
幼い時から魔法に慣れ親しんでいた。
ルシードの王宮は、国民に対しては、開かれた王宮でもあり、
王族の者と一般の庶民が同じマスターの元で魔法を学んでいた。
ドレアルは、王子の魔法の師匠でもあり、
レミューズ、バーバラの先輩でもあった。
同じ時期に学ぶことは無かったが、王子がドレアルの元を訪ねた
折に、顔を合わせていた。
キャスバル:「そうか、レミューズが真実の目の持ち主で
あるならば、話は早い。
まず、その力を見せてほしい。」
レミューズ:「わかりました。」
早速一行はキャスバル王子と共に王宮へと向かった。
連れて来られた場所は、王宮の端の方にある一軒家であった。
ドレアル:「この家は、一体?」
キャスバル:「そうだな、簡単に説明しておこう。
今から100年ほど前だが、この家はキータという
使用人長が使っていた。
その者が、ある日、忽然と消え去ったのだ。
王宮は、彼の捜索を行ったが、残念ながら、
彼を発見することは出来なかった。
しかし、捜索の過程でこの家に隠された部屋を
発見する事が出来た。
発見できたのは、偶然でもあった。
部屋に入ったという痕跡が残っていたのだ。
しかし、残念ながら部屋の中には何もなかった。
当初、それが秘密の部屋ではないかと話題に
なったのだが、残念ながら違う事が判明している。
言い伝えでは、秘密の部屋の四方の壁には、
ルシードの紋章が描かれているのだ。
今となっては分からないが、その部屋に何かが
有ったのではないかと思っている。
何があったのかは求めないが、その部屋の
場所を特定してもらいたいわけだ。」
レミューズ:「なるほど、真実の目の試験ということですね。」
キャスバル:「察しがいいな、その通りだ。
既に痕跡は、消させてもらっている。
通常の方法では、発見することは出来ないだろう。
レミューズ以外の者はここで待っていてくれ。」
レミューズ:「わかりました。
早速やってみましょう。」
そう言って、レミューズは、家の中へと入って行った。
キャスバルとその付き人が後に続いた。
家のなかは、ごく普通の庶民の一軒家という感じであった。
中心に食卓机が置かれており、左右の壁際には、炊事場、暖炉が
設置されていた。奥側には扉があり、左右に棚が設置されていた。扉の奥には寝室と思われた。
キャスバル:「何か手伝う事があれば、
この者に指示を出してくれ。」
キャスバルの付き人がレミューズに向かって一礼する。
レミューズ:「わかりました。」
レミューズは、一通り家の中を見分すると、入口に戻り、
小さな声で呪文を唱えた。
呪文を唱え終わると、瞳が赤く変わった。
続けて、家の中をぐるっと眺める。
そして、迷わず一点に向かって歩き出した。
そこは暖炉の横だった。
この時、レミューズがキャスバルを見ていたとしたら、
キャスバルの顔が少し変わったのがわかっただろう。
その床の上に立ち、何かを探すように見回す。
それは、まるで、目に見えない紐のような物を目で追ってゆく
ような動きだった。
それを終えると、つぎに部屋の中を歩き回りながら物色する。
品物を1つ1つ手に持ち念入りに調べた。
そして、3点の品物持ってくると、それらを中心の机の上に置く。
それは、花瓶、香炉、燭台の3点だった。
キャスバル:「ほぉ。」
キャスバルは、驚くというよりも、感心しているようだった。
レミューズは最初の床の上に立つと、キャスバルの付き人に
指示を出し始めた。
1点を指さし、「その梁の上に花瓶」。
違う場所を指さし、「その机の右隅上に香炉」。
また、違う場所を指さし、「その棚の2段目の左端に燭台」。
全ての品物が、置き終わると、レミューズが立っている場所の
すぐ隣に魔法陣が浮かび上がった。
キャスバルが突然、手を叩いて拍手し始めた。
キャスバル:「素晴らしい、まさかここまでとは思っても
いなかった。
すまないが、もう少し手伝ってほしい。」
そう言って、キャスバルは、現れた魔法陣の中へと入った。
魔法陣が淡く光ると、キャスバルが消えた。
どうやら、転移の魔法陣のようだった。
レミューズもためらわず後を追った。
そこは、部屋の中だった。
魔法の光だろうか、部屋の中は明るかった。
部屋の広さは、5m四方ぐらいだと思われるが、
周りを見渡しても、、出入り口が無かった。
壁には、棚が設置されていたが、中には何もなかった。
キャスバル:「この棚に何かがあったと思われる。
何があったか判らないか?」
その棚の仕切り板には、魔法陣が描かれていた。
レミューズがその魔法陣を眺める。
しばらくした後、王子の方を向くと言った。
レミューズ:「残念ながら、この魔法陣は解りません。
どうやら、我々の知らない魔法文字のようです。
もう少し棚を調べてみましょう。」
キャスバル:「そうか、頼む。」
レミューズは、しばらくの間、棚の上をじっと眺めていたが、
突然、キャスバル王子の方を向くと言った。
レミューズ:「微量な残留魔塵があるようですが、微量すぎて
品物の特定には至りません。」
キャスバル:「なに、残留魔塵が残っていたというのか。
ルシードの魔導士達も調査しているはずだが、
そのような物は発見されていないぞ。」
レミューズ:「一般的に認知されている残留魔塵は、魔法が発動
した時の物のみなのです。
残留魔塵は、魔法の力が存在する場合に常に発生し
その場に残ります。
しかし、微量すぎる為、真実の目が無い限り、
発見することが不可能なのです。」
キャスバル:「なるほど、
ということは魔法の品があったという事だな。
しかし、100年もの間残っているということは、
余程の品であったのだろうか、、、。」
レミューズ:「これは、あくまで私の推測ですが、
ここにあったのは、メリクリウスの魔法具では
ないかと考えられます。」
キャスバル:「なにっ、メリクリウスの、、、。
なるほど、可能性は十分にあるな、、、。」
一瞬考えた後で、レミューズは話を続けた。
レミューズ:「少し前にザイムへ行ってきました。」
キャスバル:「なんと、ザイムに行ったというのか。」
レミューズ:「はい、その折に、ズールなる者が、メリクリウスの
魔法具を求めているという記録を発見しました。」
キャスバル:「ズールという名前には、聞き覚えが無いな。
いや、使用人長が行方不明になる前に不審人物が
いた事が記録に残っている。
その者が使用人長を拉致したのだと考えていたが、
その者がズールなのか?」
レミューズ:「いえ、それはわかりかねます。
ところで、使用人長のキータの家族名は
何なのでしょうか?」
キャスバル:「んーっ、確か、ハルバール。」
レミューズ:「!!。
なるほど、だいぶ話が繋がってきました。」
キャスバル:「どういうことだ?」
レミューズ:「ズールというのは、魔獣王討伐の為の下準備を
行っていたと思われる人物なのです。」
キャスバル:「なに、100年前に魔獣王の復活を予見していた
というのか?」
レミューズ:「はい、そしてハルバールというのは、
魔獣王討伐に必要不可欠な一族なのです。
憶測にしかすぎませんが、なにかの理由でキータと
接触し、そして、この部屋を発見したのちに、
メリクリウスの魔法具がザイムへと流れた
というのが一番可能性が高いと考えられます。」
キャスバル:「なるほど、確かに、メリクリウスはルシードで
生まれたと言われているが、、、。
まあ、よい。
試験の結果は、満点合格だ。」
この後、王宮で歓迎の祝宴が行われ、そして次の日から捜索が
行われることとなった。
A:「どーも。」
C:「お久しぶりです。
さて、どうやら、これからの話は、しばらく
ルシードとメリクリウスの話になるようですね。」
A:「そうなんだ。」
C:「あと、人間側の精神体の考え方をちゃんと記載して
いなかったため、番外編として「精神体講義」をアップ
しています。
気になる方は、読んでみてください。」




