試練の扉
連合暦20年6月18日、
パイン、アリス、コゴーロの3人は、魔法陣の上に立っていた。
そこは、1軒家と思われる家の中だった。
まるで住んでいる人がいると思えるほど小奇麗だった。
丸太で作られた家は予想以上に広く、二階に続く階段もあった。
しかし、どこを見回しても窓が無い事が気になっていた。
コゴーロ:「ここは、ベンヌの住処に続く道にある家じゃ。」
パイン:「立派な家ですね。」
コゴーロ:「そうじゃな。
4人で住むには十分な広さじゃな。」
パイン:「えっ?ほかに誰かいるんですか?」
その時、二階へと続く階段から足音がした。
パインとアリスがそちらを見ると、子供ぐらいの大きさの
髭を生やした老人のような小人が階段を降りてきた。
???:「やっと来たか。」
コゴーロ:「お主がノームじゃな?」
ノーム:「そうさ、俺がノームだ。
お主等の世話をするように、
ベンヌ様から指示されている。
それにズールからも話は聞いているよ。」
パイン:「ズールを知っているのですか?」
ノーム:「ベンヌ様に会いたいと言って、
数日じゃが、ここに住んでいたぞ。」
パイン:「えっ、直接会ったんですか?」
ノーム:「そうだな。」
この時、アリスは、ノームが一体何歳なのかが気になった。
パイン:「ところで、ズールは1人でここに来たのですか?」
ノーム:「どうだったかな、、、。
そうだ、女の子を連れていたな。
そう、シェリルって呼んでいた。」
パイン:「やっぱりそうか。
ズールについてもう少し聞いてもよいですか?」
ノーム:「ズールの話は、後にしてもらえるか?」
パイン:「わかりました。」
パインは、考えを巡らすように黙ってしまった。
しばらくして、アリスが言った。
アリス:「あのー、ご飯とかは、どうするんですか?」
ノーム:「飯か。それなら、俺が作ってやる。
味も保証付きだ。
あと、酒なら山ほどあるぞ。」
コゴーロ:「そうか、酒があるのか。
こりゃ楽しめそうじゃな。」
ノーム:「ほう、お主、酒好きか。
これは、話が合いそうだ。
こいつらと話をするから、その間、飲んでいてくれ。」
そして、近くの棚から酒を取り出すと、コゴーロに手渡した。
コゴーロは、満面の笑みを浮かべると、酒瓶を受け取り、
酒瓶の口に直接口を当て、グビグビと飲み始めた。
コゴーロ:「ぶはーっ、これは美味いぞ。」
コゴーロは、嬉しそうだ。
ノーム:「さて、ベンヌ様と契約を結んでいるのは、どっちだ?」
パイン:「あっ、はい、私です。」
ノーム:「名前は?」
パイン:「パインです。」
ノーム:「なるほど、そっちの嬢ちゃんが召喚士か?」
アリス:「はい、そうです。アリスと言います。」
その時、アリスの中のシロが騒ぎ出した。
シロ:(何やってるにゃ、早く出すにゃ。)
アリス:「ちょっと待ってください、シロが出たいらしいので。」
アリスが、静かに踊り始めた。
ノーム:「シヴァ殿の僕に会えるのか。これは楽しみだ。」
ノームは、ニヤケ顔で踊りを見つめる。
そして、踊りが完了した。
シロ:「やっとでられたにゃー。
ノームーーーッ、久しぶりにゃーーーっ。」
ノーム:「ほう、ネコか。今回は、まともだな。」
シロ:「そうにゃ、アリスには感謝してるにゃ。」
アリス:「えっ?、どういう事です?」
ノーム:「確か、前回は、カエル。
その前は、蝶だったか?」
シロ:「蝶は、その前にゃ。前々回は、カブトムシにゃ。」
ノーム:「そういえば、何回前だったかは忘れたが、
魚のときは、危うく食べられそうに
なったと言ってたな。」
シロ:「そうにゃ、あの時は、あせったにゃーっ。」
アリス:「・・・」
パイン:「シロ、おまえ結構苦労してるんだな。」
シロ:「そうにゃ。ようやく分かったかにゃ。」
コゴーロは、酒を飲みながら、ニヤニヤと笑っている。
アリスは、ちょっと考えて質問した。
アリス:「蝶とかカブトムシの時って、喋れたの?」
シロ:「当然しゃべれないにゃ。」
アリス:「あー、そうなんだ。」
シロ:「だから、アリスには感謝してるにゃ。」
パイン:「ところで、今までに何回召喚士に仕えたんだ?」
シロ:「魔獣王が復活した回数かにゃ。」
パイン:「そう、で、何回なんだ?」
シロ:「5回以上は、覚えてないにゃ。」
ノーム:「そうだな、俺がここに来てから、
8回は、復活している。
その直前の戦いは、かなり苦戦したようだ。」
パイン:「ところで、魔獣王ってどれぐらいの間隔で
復活してるんですか?」
ノーム:「そうだな、ざっと4-500年というところか?」
シロ:「そんなもんにゃないかにゃ。」
パイン:「んー、それ以上ということか。」
コゴーロは、真っ赤な顔をして、こちらをボーッと見ている。
アリスが、ワクワクした顔で言った。
アリス:「ねーねー、シロちゃん、カブトムシになれないの?」
シロ:「むりにゃ。」
アリス:「もう、、、。」
パイン:「ノームさん。
1つ気になっていることがあるのですが?」
ノーム:「なんだ?」
パイン:「この家なんですが、窓がないんですけど。」
ノーム:「あぁ、そのことか。
それについては、これから説明する。
もう少し待ってくれ。」
パイン:「はい。」
ノーム:「さて、雑談は、終わりだ。
まずは、この家の説明からする。
この家は、ベンヌ様の住処に続く道の端にある。
ベンヌ様は、火口の奥深くに住んでおられる。
この家は、その地に繋がる洞窟の中にあるのだ。」
パイン:「なるほど、洞窟の中だから窓がないのか。」
ノーム:「さて、ここからが本題だ。
ベンヌ様に会うには、10の試練を
超えなければならない。」
パイン:「えっ、試練ですか?」
ノーム:「臆することはない。
まあ、試練といっても、全て同じことの繰り返しだ。」
パイン:「なるほど。」
ノーム:「ここに来たということは、川の話は聞いているな?」
パイン:「激流に片足を突っ込む話ですか?」
ノーム:「そうだ。
ベンヌ様がお前の中を通過する。
それに耐えるのだ。」
パイン:「はい。」
ノーム:「さて、そこに赤い扉がある。」
そう言って、パイン達の正面方向にある扉を指さす。
パイン達がその方向を見ると、そこには赤い扉があった。
パイン:「あれですか?」
ノーム:「そうだ、あれが試練の扉だ。
あの扉の奥には、小さな部屋がある。
そして、反対にまた扉がある。
1つ開けるたびに、ベンヌ様が大きくなる。
つまり、激流が強くなっていく。」
パイン:「えっ、10の扉を耐え抜くってことですか?」
ノーム:「そうだ。簡単だろ。」
パイン:「いえ、やったとこが無いので、簡単かどうかは。」
ノーム:「まず、小手調べに俺がお前の中に入ろう。」
パイン:「えっ、ノームさんが?」
ノーム:「そうだ、試練を受ける資格があるかの試験だな。
それが無理なら素質が無いということだ。」
パイン:「そんな。素質が無いって言われても。」
ノーム:「いや、そう意味ではない。
我々の通過を拒絶する人間がいるのだ。
拒絶する人間なら、苦痛がその身を襲う。
もし、いきなりベンヌ様がその身を通過したら、
その痛みに、まず耐えられないだろう。」
そして、恐る恐る聞いた。
パイン:「えっ、死ぬほど痛いってことですかね?」
ノーム:「そうだ。
しかし、恐れることはない。
俺程度では、死にはしない。
それに、資格がある者なら、痛くはない。」
パインの顔が恐怖に引きつった。
パイン:「死なないけど、痛いんですよね?」
ノーム:「そうだな。」
シロ:「パイン、情けないにゃ。
魔獣王を倒すんじゃにゃいにょか?」
アリスが後ろで右手を突き上げながら言った。
アリス:「そうだ、そうだーーっ。」
パインは、少し考えると、勇気を振り絞って言った。
パイン:「分かりました。」
その顔は、半泣き状態だった。
ノーム:「そうか、よく言った。
しばらく休憩してから、始めよう。」
パイン:「・・・」
パインは、うなだれながら、奥の椅子に座った。
パインの横には、気持ちよさそうに眠るコゴーロがいた。
しばらくして、ノームが2人を呼ぶ。
ノーム:「そろそろ、よいか?」
アリス:「はーい。」
パインは、無言でノームの元へとやってきた。
その顔は、覚悟を決めたのか、吹っ切れたのか、
元のパインの顔に戻っていた。
パイン:「もう大丈夫です。始めましょう。」
ノーム:「よし、良い顔だ。
目を閉じておくように。
それでは、始めよう。」
パインが両目を閉じると
ノームは、右手をパインの頭の上に乗せた。
左手を少し上げると、霧のように変わってゆく。
そして、霧が、左腕、左肩、右肩、右腕、右手と流れてゆく。
パインを傷つけまいと、慎重にゆっくりと右手の中へと
消えていった。
ノームは、パインの顔を覗き込んだ。
パインの顔は、苦痛に歪んではいなかった。
それを確認すると、一度笑顔を見せ、全身が霧となった。
そして、一気にパインの中へと入っていった。
ノームの右手が頭に置かれたとき、パインはノームの体温を
感じていた。
その部分が次第に暖かくなってゆく。
違和感は感じない。
それどころか、気分が高揚してくる。
まるで、子供の頃に母親に抱かれた時のような安心感。
何かを成し遂げた時のような達成感。
そんな気持ちが湧き上がってきた。
そして、何か見られているような感じがする。
頭の中に何かいる。
決して、不快ではない。
それどころか、幸福感が湧き上がってきた。
次の瞬間、その何かが突然巨大化して自分の中を通り抜けて
ゆくのを感じた。
強風の日に風上に向かって歩いているような感じだった。
その風に立ち向かわないと吹き飛ばされてしまいそうだった。
その時、頭の中に声が聞こえた。
(流れを無視するのだ。無心になるのだ。
逆らってはいけない。)
パインは、その声に従い、それを無視しようと努力してみた。
しかし、それを完全に無視することは出来なかった。
どのくらいの時間がたったのだろう?
もう、それすらも分からなくなっていた。
アリスは、ノームが霧になり、パインの中へ入ってゆくのを
見ていた。
突然、パインの指のベンヌの指輪が光りだした。
同時に、自分のベンヌの指輪が温かくなってゆくのを感じた。
自分の指輪を見ると光りを放っている。
その時、3人目の何かの気配を感じた。
それは、遠くに居た時のシヴァよりも、さらに小さかったが、
シヴァよりも優しい感じがした。
自分の指輪から霧のようなものが噴き出し、
ノームの立っていた位置に集まってゆく。
そして、霧はノームを形作っていった。
しばらくして、パインは頭の上から手が離れる感覚を感じた。
パインが目を開くと、そこには笑顔のノームが立っていた。
ノーム:「合格だ。」
A:アリスもパインと同じような感じがしたのでしょうかね?
C:シヴァは、幻獣なので感じたかが違うと思いますが、
同じベンヌだとしても、人によって微妙に感じ方が
違うらしいです。
しかし、大体は同じ感じだと、作者が言っていましたよ。
A:えっ、作者も召喚士だったんですか?
C:きっと夢の中では、そうなんでしょうねw




