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魔獣の壺 - 本編 -  作者: 夢之中
ベンヌの住まう山
62/99

古代遺跡の主

連合暦20年6月19日、


???:(なにゆえに、我の眠りを妨げる。)

ドレアル:「なに?直接頭に語り掛けているのか?

     精神体なのか?」

???:(精神体?)

全員が何か頭の中を探られるような感覚を感じた。

もし、アリスが近くにいたら、それは幻獣を内に取り込んだ時の

感覚に近いと思ったことだろう。

???:(なるほど、それは正しくもあり、誤りでもある。)


レミューズが扉を開けることを試みた。

しかし、扉はピクリともせず、開けることは不可能に思えた。


さらに、探られる感覚を感じた。

???:(魔獣王が復活したというのか。

    しかし、まだその時ではないはず。)

シェリル:「きゃっ。」

突然シェリルが頭を抱えしゃがみ込んだ。

???:(そこにいるのは、巫女なのか?

    なるほど、記憶を封印されているのか。

    残念ながら、我に会うには資格が足りない。

    しかし、ここまで来た努力に応え、

    各々一つ質問に答えよう。)

    

その言葉でサールが質問した。

サール:「巫女とは何なのですか?」

???:(巫女は幻獣と精霊を友とし、神に使える者でもある。)

サール:「それは、賢者でもあり、召喚士でもあるという

    事なのですか?」

一同は、深く探られる感覚を感じた。

???:(なるほど、レミューズと呼ばれる者が幻獣を

    従えることが出来れば、

    巫女に近いものになれるであろう。)

レミューズ:「なるほど、賢者と召喚士の力を併せ持ったものが

      巫女というわけか。」

      

少し考えて、ドレアルが疑問をぶつけた。

ドレアル:「お主は何者なのだ?」

???:(我は、魔獣で有り、魔獣で無いとだけ答えよう。)

バーバラ:「なんだと!!」

???:(遥か昔、魔獣と幻獣の戦いがあった。

    魔獣は幻獣によって、異世界へと送られた。

    しかし幻獣の力は、そなた達の考える破壊の

    精神体のみを送ったのだ。

    残った精神体は、魔獣から切り離され、

    この地に集まった。

    それが、我というわけだ。)

    

バーバラは、己の考える精神体と異なる事への疑問をぶつけた。

バーバラ:「精神体というのは、個ではないのか?」

???:(なるほど、分かりやすく教えよう。

    巨大なスープの入った鍋がある。

    そこに、善、悪、創造、破壊等のエキスを注ぎ込む。

    混ぜてはいけない、自然に混じり合うのを待つのみ。

    その中から、魔獣、幻獣、精霊、人間が生まれたのだ。

    元は、同じというわけだ。

    精神体は1つでもあり、複数でもあるのだ。)

ドレアル:「なんと、人間も同じだというのか。」

???:(人間は肉体を持つ代わりに、

    そなた達の考える精神体の大半を奪われた。

    永遠を捨てることに繋がるが、

    幸福でもあり、不幸でもある。

    それは1つでもあり、複数でもあるのだ。)

    

エッグ王子は、魔獣との闘いが、いつまで続くのかが

知りたかった。

エッグ王子:「つまり魔獣は、死ぬことはないということか?」

???:(1つであるがため、全てが消えることはない。

    常に生み出されてもいる。

    しかし、少しづつではあるが、削られてゆく。

    そなた達の知っている魔晶石は、そなた達の考える

    精神体の残骸なのだ。)

ドレアル:「なんじゃと、魔晶石が精神体だというのか!!」

???:(魔獣が異世界へと飛ばされた後、

    初めて魔獣王がこの地に降り立った時、

    この周辺で魔獣と幻獣、精霊、人間の大きな

    戦いがあった。

    それは、壮絶な戦いであった。

    双方に多大な犠牲が発生した。

    魔獣や精霊や幻獣の大半は異世界へと戻ったが、

    戻れなかったものは、集まり、結晶となり、

    魔晶石となったのだ。

    その戦いに敗れた魔獣は、大きな痛手を被った。

    それを完全に回復するには、

    想像を絶する歳月が必要なのだ。)

    

レミューズは、その裏にある真実が知りたかった。

レミューズ:「お主は、何故魔晶石にならないのだ?」

???:(幻獣達と巫女達は壮大な計画を立てた。

    結晶化する前に、そなた達の考える精神体を

    集める事を考えたのだ。

    そして創造や善などを一か所に集めたのだ。

    長い年月をかけ、それは次第に大きくなっていった。

    それが我である。

    そして、最終決戦の時に、魔獣達の異世界へと流し込む

    ということを。

    しかし、それは、今ではない。)

レミューズ:「なるほど、混ぜることによって、

      幻獣や精霊に近づけようというのか。

      しかし、途方もない計画であることは

      間違いないな。」

質問ができるのは、シェリルのみとなった。

他の者は、シェリルの発言を待った。


シェリルは、自分がこの計画の一部であるかが知りたかった。

シェリル:「あなたは、私を巫女と間違えました。

     私は、巫女なのですか?

     そして、いつ記憶を取り戻すのでしょう?」

???:(そなたが巫女であるかは、判らなかった。

    しかし、記憶の封印は早いうちに解ける。

    その時に、全てが明らかになるだろう。)

シェリル:「そうですか。」

???:(人間は、今一度考え直さなければならない。

    人間は、何も壊さずに生きているというのか?

    それは、あくまでも個を守るためであり、他の犠牲の

    元に成り立っているのだ。

    しかし、嘆くことはない、

    魔獣との闘いは、他を守るためであり、致し方ない

    ことであろう。)

一同:「・・・」

???:(そろそろ良いだろうか?

    我は、また眠りにつかねばならぬ。

    この計画を成すために眠らねばならぬ。

    巫女が我を起こす、その日まで。)

そして、声は聞こえなくなった。

次の瞬間、突然目の前が真っ白になった。

視界が元に戻ると、そこは鍵を差し込んだ部屋であった。

一行は、事の次第を報告するため、カイン王国へと戻った。


連合暦20年6月19日、夜

以前に謁見した部屋で、6人+カイン王のみが参加して、

話し合いが行われていた。

カイン王:「なんと、魔晶石が精神体だったというのか。」

バーバラ:「そのようです。」

カイン王:「それに、その壮大な計画は何なのだ。

     我々の知らないところで、そのような事が行われて

     いるというのか。」

レミューズ:「そうです。

      永遠と繰り返される戦いに終止符を打つために

      計画されたものと受け取りました。」

カイン王:「私もそのように感じた。

     それにしても、一体どれほどの者が

     関わっているのだろう?」

ドレアル:「幻獣と巫女、そしてベンヌもその計画の一部なの

     かもしれんの。

     ズールは、その計画を知り、それを手伝ったとも

     考えられるの。

     あくまで可能性の1つじゃが、ゼロスもその一部である

     可能性も出てきおったわい。」

カイン王:「うーむ。

     この話は、極秘事項としてもらいたい。

     記録にも残さない。

     エッグ王子、この件は折を見て、直接カルラド王に

     お話しする。」

カイン王は、この計画が知れ渡り、

計画自体が潰されることを恐れた。


エッグ王子:「心得ました。墓まで持ってゆきましょう。」

カイン王:「バーバラ。」

バーバラ:「はい。」

カイン王:「そなたは、行動を共にし、シェリル殿の護衛を

     するように。」

バーバラは、少し戸惑った顔で答えた。

バーバラ:「はい、招致しました。」

レミューズ:「待ってください。」

カイン王:「なんだ?」

レミューズ:「その役目、私がやりましょう。

      そもそも次の魔獣王城への突入は、私の役目です。

      バーバラにその任を与えるということは、

      傭兵育成や魔法陣研究に支障を与えます。

      それに、トップの行動は、疑念に繋がります。」

カイン王:「うむ、レミューズの言うことにも一理あるな。

     相分かった。レミューズ、そちに任せよう。」

バーバラの顔が少し笑顔になった。

元々バーバラは、カイン王を助けるために仕えていると言っても

過言ではなかった。

魔獣の壺を持ち帰った時の旅で、カイン王に触れ、その思い、

統率力、判断力、行動力、その全てにおいて共感し、尊敬できる

人物であると判断したのだった。

そして、自分の中で生涯の忠誠を誓った。

レミューズは、過去にバーバラと話したことがあった。

カイン王と結婚しないのかと。

その時、バーバラは、

  「それは私一人で決める事ではない

  カイン王には、大いなる夢がある。

  魔獣のいない世界を作ること。

  それが現実になった時に、話してみよう。」

と発言していた。

レミューズは、そんなバーバラの気持ちを理解した上での

発言であった。


カイン王:「さて、シェリル殿。」

シェリル:「はい。」

カイン王:「そなたの記憶が戻った時、事の全てが明らかになる

     と考えられる。

     もし巫女であるならば、その任は果てしなく重い。

     そなたの安全は我々が保証する。

     誠に申し訳ないが、

     引き続き行動を共にして頂きたい。」

そういいながら、シェリルの顔色を窺う。

シェリル:「いえ、もし私が巫女であるならば、

     私からお願いするべきことです。」

シェリルは立ち上がり、皆の方向を向くと頭を下げた。

シェリル:「私には、記憶がありません。

     しかしこの件は、巫女であるという以前の

     問題なのです。

     魔獣のいない世界を作るために、協力してください。」

一同は、うなづき、同じ目標に向かうことを誓いあった。

それが、果てしなき困難を伴うとしても、、、。


A:何かとんでもない計画が動いていたんですね。

C:そうですね。

  私もびっくりしました。

  立案者自体が既に存在しないと考えると

  とんでもないですね。

  それも、志を引き継ぐというわけでもなく、

  自らの行動が計画の推進に関与している。

A:ある意味、怖い事かもしれないですね。

C:そうですね。

  ところで、次回からパインとアリス達の話に戻ります。

A:今度は、ベンヌ側の話ですね。


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