古代遺跡の主
連合暦20年6月19日、
???:(なにゆえに、我の眠りを妨げる。)
ドレアル:「なに?直接頭に語り掛けているのか?
精神体なのか?」
???:(精神体?)
全員が何か頭の中を探られるような感覚を感じた。
もし、アリスが近くにいたら、それは幻獣を内に取り込んだ時の
感覚に近いと思ったことだろう。
???:(なるほど、それは正しくもあり、誤りでもある。)
レミューズが扉を開けることを試みた。
しかし、扉はピクリともせず、開けることは不可能に思えた。
さらに、探られる感覚を感じた。
???:(魔獣王が復活したというのか。
しかし、まだその時ではないはず。)
シェリル:「きゃっ。」
突然シェリルが頭を抱えしゃがみ込んだ。
???:(そこにいるのは、巫女なのか?
なるほど、記憶を封印されているのか。
残念ながら、我に会うには資格が足りない。
しかし、ここまで来た努力に応え、
各々一つ質問に答えよう。)
その言葉でサールが質問した。
サール:「巫女とは何なのですか?」
???:(巫女は幻獣と精霊を友とし、神に使える者でもある。)
サール:「それは、賢者でもあり、召喚士でもあるという
事なのですか?」
一同は、深く探られる感覚を感じた。
???:(なるほど、レミューズと呼ばれる者が幻獣を
従えることが出来れば、
巫女に近いものになれるであろう。)
レミューズ:「なるほど、賢者と召喚士の力を併せ持ったものが
巫女というわけか。」
少し考えて、ドレアルが疑問をぶつけた。
ドレアル:「お主は何者なのだ?」
???:(我は、魔獣で有り、魔獣で無いとだけ答えよう。)
バーバラ:「なんだと!!」
???:(遥か昔、魔獣と幻獣の戦いがあった。
魔獣は幻獣によって、異世界へと送られた。
しかし幻獣の力は、そなた達の考える破壊の
精神体のみを送ったのだ。
残った精神体は、魔獣から切り離され、
この地に集まった。
それが、我というわけだ。)
バーバラは、己の考える精神体と異なる事への疑問をぶつけた。
バーバラ:「精神体というのは、個ではないのか?」
???:(なるほど、分かりやすく教えよう。
巨大なスープの入った鍋がある。
そこに、善、悪、創造、破壊等のエキスを注ぎ込む。
混ぜてはいけない、自然に混じり合うのを待つのみ。
その中から、魔獣、幻獣、精霊、人間が生まれたのだ。
元は、同じというわけだ。
精神体は1つでもあり、複数でもあるのだ。)
ドレアル:「なんと、人間も同じだというのか。」
???:(人間は肉体を持つ代わりに、
そなた達の考える精神体の大半を奪われた。
永遠を捨てることに繋がるが、
幸福でもあり、不幸でもある。
それは1つでもあり、複数でもあるのだ。)
エッグ王子は、魔獣との闘いが、いつまで続くのかが
知りたかった。
エッグ王子:「つまり魔獣は、死ぬことはないということか?」
???:(1つであるがため、全てが消えることはない。
常に生み出されてもいる。
しかし、少しづつではあるが、削られてゆく。
そなた達の知っている魔晶石は、そなた達の考える
精神体の残骸なのだ。)
ドレアル:「なんじゃと、魔晶石が精神体だというのか!!」
???:(魔獣が異世界へと飛ばされた後、
初めて魔獣王がこの地に降り立った時、
この周辺で魔獣と幻獣、精霊、人間の大きな
戦いがあった。
それは、壮絶な戦いであった。
双方に多大な犠牲が発生した。
魔獣や精霊や幻獣の大半は異世界へと戻ったが、
戻れなかったものは、集まり、結晶となり、
魔晶石となったのだ。
その戦いに敗れた魔獣は、大きな痛手を被った。
それを完全に回復するには、
想像を絶する歳月が必要なのだ。)
レミューズは、その裏にある真実が知りたかった。
レミューズ:「お主は、何故魔晶石にならないのだ?」
???:(幻獣達と巫女達は壮大な計画を立てた。
結晶化する前に、そなた達の考える精神体を
集める事を考えたのだ。
そして創造や善などを一か所に集めたのだ。
長い年月をかけ、それは次第に大きくなっていった。
それが我である。
そして、最終決戦の時に、魔獣達の異世界へと流し込む
ということを。
しかし、それは、今ではない。)
レミューズ:「なるほど、混ぜることによって、
幻獣や精霊に近づけようというのか。
しかし、途方もない計画であることは
間違いないな。」
質問ができるのは、シェリルのみとなった。
他の者は、シェリルの発言を待った。
シェリルは、自分がこの計画の一部であるかが知りたかった。
シェリル:「あなたは、私を巫女と間違えました。
私は、巫女なのですか?
そして、いつ記憶を取り戻すのでしょう?」
???:(そなたが巫女であるかは、判らなかった。
しかし、記憶の封印は早いうちに解ける。
その時に、全てが明らかになるだろう。)
シェリル:「そうですか。」
???:(人間は、今一度考え直さなければならない。
人間は、何も壊さずに生きているというのか?
それは、あくまでも個を守るためであり、他の犠牲の
元に成り立っているのだ。
しかし、嘆くことはない、
魔獣との闘いは、他を守るためであり、致し方ない
ことであろう。)
一同:「・・・」
???:(そろそろ良いだろうか?
我は、また眠りにつかねばならぬ。
この計画を成すために眠らねばならぬ。
巫女が我を起こす、その日まで。)
そして、声は聞こえなくなった。
次の瞬間、突然目の前が真っ白になった。
視界が元に戻ると、そこは鍵を差し込んだ部屋であった。
一行は、事の次第を報告するため、カイン王国へと戻った。
連合暦20年6月19日、夜
以前に謁見した部屋で、6人+カイン王のみが参加して、
話し合いが行われていた。
カイン王:「なんと、魔晶石が精神体だったというのか。」
バーバラ:「そのようです。」
カイン王:「それに、その壮大な計画は何なのだ。
我々の知らないところで、そのような事が行われて
いるというのか。」
レミューズ:「そうです。
永遠と繰り返される戦いに終止符を打つために
計画されたものと受け取りました。」
カイン王:「私もそのように感じた。
それにしても、一体どれほどの者が
関わっているのだろう?」
ドレアル:「幻獣と巫女、そしてベンヌもその計画の一部なの
かもしれんの。
ズールは、その計画を知り、それを手伝ったとも
考えられるの。
あくまで可能性の1つじゃが、ゼロスもその一部である
可能性も出てきおったわい。」
カイン王:「うーむ。
この話は、極秘事項としてもらいたい。
記録にも残さない。
エッグ王子、この件は折を見て、直接カルラド王に
お話しする。」
カイン王は、この計画が知れ渡り、
計画自体が潰されることを恐れた。
エッグ王子:「心得ました。墓まで持ってゆきましょう。」
カイン王:「バーバラ。」
バーバラ:「はい。」
カイン王:「そなたは、行動を共にし、シェリル殿の護衛を
するように。」
バーバラは、少し戸惑った顔で答えた。
バーバラ:「はい、招致しました。」
レミューズ:「待ってください。」
カイン王:「なんだ?」
レミューズ:「その役目、私がやりましょう。
そもそも次の魔獣王城への突入は、私の役目です。
バーバラにその任を与えるということは、
傭兵育成や魔法陣研究に支障を与えます。
それに、トップの行動は、疑念に繋がります。」
カイン王:「うむ、レミューズの言うことにも一理あるな。
相分かった。レミューズ、そちに任せよう。」
バーバラの顔が少し笑顔になった。
元々バーバラは、カイン王を助けるために仕えていると言っても
過言ではなかった。
魔獣の壺を持ち帰った時の旅で、カイン王に触れ、その思い、
統率力、判断力、行動力、その全てにおいて共感し、尊敬できる
人物であると判断したのだった。
そして、自分の中で生涯の忠誠を誓った。
レミューズは、過去にバーバラと話したことがあった。
カイン王と結婚しないのかと。
その時、バーバラは、
「それは私一人で決める事ではない
カイン王には、大いなる夢がある。
魔獣のいない世界を作ること。
それが現実になった時に、話してみよう。」
と発言していた。
レミューズは、そんなバーバラの気持ちを理解した上での
発言であった。
カイン王:「さて、シェリル殿。」
シェリル:「はい。」
カイン王:「そなたの記憶が戻った時、事の全てが明らかになる
と考えられる。
もし巫女であるならば、その任は果てしなく重い。
そなたの安全は我々が保証する。
誠に申し訳ないが、
引き続き行動を共にして頂きたい。」
そういいながら、シェリルの顔色を窺う。
シェリル:「いえ、もし私が巫女であるならば、
私からお願いするべきことです。」
シェリルは立ち上がり、皆の方向を向くと頭を下げた。
シェリル:「私には、記憶がありません。
しかしこの件は、巫女であるという以前の
問題なのです。
魔獣のいない世界を作るために、協力してください。」
一同は、うなづき、同じ目標に向かうことを誓いあった。
それが、果てしなき困難を伴うとしても、、、。
A:何かとんでもない計画が動いていたんですね。
C:そうですね。
私もびっくりしました。
立案者自体が既に存在しないと考えると
とんでもないですね。
それも、志を引き継ぐというわけでもなく、
自らの行動が計画の推進に関与している。
A:ある意味、怖い事かもしれないですね。
C:そうですね。
ところで、次回からパインとアリス達の話に戻ります。
A:今度は、ベンヌ側の話ですね。




