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魔獣の壺 - 本編 -  作者: 夢之中
ベンヌの住まう山
61/99

古代遺跡の秘密

連合暦20年6月19日、


その巨大な地下渓谷は、底は全く見えず、

上空にわずかな光があるのみだった。

反対側の壁は、遥か彼方に見えるほどの距離であり、

とてもではないが、飛び越えたりすることはできないだろう。

サール:「なんですか、これは。」

エッグ王子:「んー、通路らしきものは見当たりませんね。」

ドレアル:「さて、こまったの。」


レミューズが振り向き、ゆっくりとした口調で言った。

レミューズ:「お前たちには、これが何に見えるんだ?」

サール:「えっ、何を言ってるんですか?

    巨大な地下渓谷ですが。」


レミューズ:「なるほど、あれか。

      バーバラ、現在位置を確認してくれ。」

バーバラ:「すでに終わっている。

     残念なことだが、この場所が亀裂の下らしい。」

サール:「ウッキー、ということは、魔じゃ香は渓谷の下に

    落ちたってことですよね?」

ドレアル:「そうなるじゃろうな。」


その時、レミューズが無言のまま、その巨大な亀裂に向かって

歩き出した。

それに気が付いたシェリルが声をかける。

シェリル:「レミューズさん、危ないですよ。」

その声で一同は、レミューズを見た。

その時、レミューズが地面の無い場所に足を踏みだした。

シェリル:「キャーーーーーッ。」

シェリルは、両手で両目をふさぎ、これから起こるであろう

ことを見ないようにした。


一同:「!!」

シェリル以外の者は、驚きの声をあげた。

そこで目にしたものは、レミューズが空中を歩く姿だった。

レミューズは、滑るように空中を歩いてゆく。

そして、あっという間に反対側の壁へと到着する。

小指の先ほどの大きさに見えるレミューズは、

壁を調べているようだった。

しばらく、その様子を見つめていると、レミューズが何かを

引き抜く動作をした。

そして、さらに調べ始めた。


次の瞬間、目の前が真っ白に光った。

そして、見えるようになった時、その場所が広い空洞の中だと

認識することができた。


サール:「えっ、転移した?」

ドレアル:「どうやら違うようじゃの。」

バーバラ:「そのようですね。」

エッグ王子:「一体何が起こったのでしょう?」

ドレアル:「まあまて、

     レミューズがその答えを教えてくれるじゃろう。」

レミューズは、それほど遠くない反対側の壁に立っていた。


レミューズは振り向くと、こちらへ戻ってきた。

その手には、大きめの棒状のなにかを持っていた。

レミューズ:「どうやら、幻影を見させられていたようだ。」

そういいながら、高くない天井の亀裂の下辺りを見回す。

笑顔を見せると、少し移動してしゃがみ込んだ。

棒状の何かを足元に置き、中指程の大きさの小さな瓶を

手に取った。

レミューズ:「あったぞ。こっちに来てくれ。

      どうやら、無事なのはこの1本だけのようだ。」

全員が安堵し、レミューズの周りに集まった。

辺りには、瓶の欠片と思われるものが散らばっていた。

レミューズは、大事そうに魔じゃ香の瓶を懐にしまう。


そして、足元の棒状の何かを手に取る。

レミューズ:「さて、これを見てほしい。」

そして、皆が気になっていたそれを見せる。

レミューズ:「これには、わずかながら魔力の痕跡を感じる。

      これは、何かの鍵ではないかと思うのだが。」

ドレアル:「ほう、どうしてそう思ったのじゃ?」

レミューズ:「はい、幻影の魔法自体とは無関係だったこと、

      そして、真実の目を持っていなければ

      発見できないほどに、巧妙に隠されていたこと。」

バーバラ:「なるほど、幻影の魔法とは無関係かつ魔力の痕跡が

     あるということは、幻影の魔法を発動するための

     動力として利用されたと考えたのか。

     魔力が無くなっているにもかかわらず、

     隠すという事は、何かの使い道があるということ。

     そう言いたいのだな。」

レミューズ:「そういうことだ。」

ドレアル:「それで、お主は、この鍵をどこで使うと思うのだ?」

レミューズ:「我々は、3つの罠を抜けてきました。

      仮に名付けるなら、一つ目は石像の間、

      二つ目は転移の間、そして三つ目は幻影の間。

      ここで、1つ目の石像の間とその他では、大きな

      違いがあります。

      転移の間と幻影の間は、罠に魔法が使われていた。

      石像の間だけ、魔法の罠ではなかったということ。

      魔晶石が豊富なこの地において、魔法の罠の

      製作が可能であるならば、魔法を使った方が遥かに

      簡単に、そして効果的に作ることができるはず。

      つまり、罠の製作者が別人だと考えられます。」

ドレアル:「何かの理由により、石像の間が後に

     作られたと考えたのじゃな。」

レミューズ:「はい、そう考えると、あの分岐の左側に

      鍵を使う何かがあるのではないかと。」

ドレアル:「なるほどの。さて、皆の意見を聞こう。

     既に我々の目的、つまり魔じゃ香の入手は、

     達成されておる。

     しかし、この遺跡には明らかに他に秘密がある。

     そこで、分岐の左側の調査を行うかどうかじゃ。」

そして、しばらくの間、調査を行うべきかどうかの議論が

行われた。

そして最終的には、左側の通路の先を調査することに決定した。


一行は、来た道を慎重に戻り、そして分岐の先へと向かった。

その通路は、途中から広くなり、壁に彫刻が施され、

まさに神殿へ続く道という様相だった。

彫刻は、所々欠けており、最初のうちはよくわからなかった。

途中から精霊ではないかと思われる人間型の何かが並んでいた。

それらをゆっくりと見て行くうちに見覚えのある彫刻があった。


サール:「これっ、シヴァじゃないですかね?」

そういって、一つの彫刻を指さす。

ドレアル:「うむ、確かにそうみえるの。」

エッグ王子:「もしかしたら、幻獣の彫刻ではないですかね?」

通路の反対側から声がした。

シェリル:「これ、見覚えがあるのですが、思い出せないです。」

全員がシェリルの元へ集まる。

バーバラ:「まさかこれは、魔獣ではないか?」

その少し壊れた彫刻は、まるで犬のような顔をした

人型の何かだった。

サール:「確かに魔獣に見えますね。

    しかし、何故魔獣の彫刻があるのでしょう?

    人間から見たら敵対している魔獣を彫刻にすると

    いうのは、考えにくいですね。」

ドレアル:「うむ、何か理由があるのじゃろうな。」

そのような話をしながら、先へと進んだ。

さほど広くない空間へ出ると、その部屋の中心には、石でできた

赤子が上で寝れる程度の大きさの長方形の台が置かれていた。

その両脇には、首のとれた石像が左右に1体づつ立っていた。

辺りを見回したが、その首の破片はどこにもなかった。

その石台はピカピカに磨かれており、つい最近まで

手入れをしていた様に光っていた。

上面には魔法陣が描かれ、その中心には穴が空いており、

なにかを差すのであろうことが分かった。

レミューズ、バーバラ、ドレアル、サールの4人は、

その魔法陣の見解を話し合った。

しかし、転移の可能性があること以外は分からなかった。


サール:「それにしても、この首のない石像はなんでしょう?」

エッグ王子:「一般的に、こういう祭壇の横の石像は、

      守護者として設置するものですが、

      破壊したように見えますね。」

ドレアル:「そうじゃな。この石像に対して敵意をもっていたと

     考えてよいじゃろうな。」

エッグ王子:「先ほどの魔獣らしき彫刻、この先にいるのが

      魔獣ということはあり得ませんか?」

サール:「まさか、ヴァニッシュの拠点?」

エッグ王子:「えっ?ヴァニッシュとは?」

サールは、ヴァニッシュについて説明した。

エッグ王子:「なるほど、その可能性は否定できませんね。」

バーバラ:「いや、その可能性は低いな。

     ヴァニッシュならば、敵対する幻獣シヴァを彫刻に

     するとは思えない。

     我々の知らない何かしらの理由があるのだろう。」

ドレアル:「これ以上議論しても、もう何も得られんじゃろう。

     そろそろ、どうするか検討するかの。」

全員で再度話し合うと、魔法陣を起動させることで一致した。

そして、少しの休憩のあと、全員が石台の周りに集まった。


レミューズ:「準備はいいか?」

そして、全員を見回す。

全員が無言で頷く。

レミューズ:「いくぞ」

そういいながら、鍵と思われる棒を突き立てた。

何も変化は、現れなかった。

サール:「んっ?、なにも起きませんね。」

エッグ王子:「魔法陣も光っていない。

      これは、ここに差すものではなかった

      ということですか?」

バーバラ:「そうだな。」

レミューズ:「そうか、再度模索してみんとな。」

そう言って、レミューズが棒に手を伸ばした時、

棒がスルスルと吸い込まれてゆく。

全員がそれを唖然とした顔で見つめていた。

棒が完全に飲み込まれたあと、突然目の前が真っ白になった。


目の前が見えるようになった時、そこは小さな部屋の中だった。

足元には、転移と思われる魔法陣が描かれていた。

壁と床は木の板が敷き詰められ、真正面には木の扉が1つだけ

あり、家具などは何も置かれていなかった。


レミューズが安全を確認して、木の扉を開けようとしたとき、

全員がその声を聞いた。

聞いたというより、頭に浮かんだという表現が正しいだろう。


???:(なにゆえに、我の眠りを妨げる。)


A:主の登場ですか。

  一体何者なんでしょうか?

C:遺跡が封印されてから、何十年、何百年も経っているはずなので、

  その間寝ていたってことですよね。

A:眠りすぎですね。


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