古代遺跡の秘密
連合暦20年6月19日、
その巨大な地下渓谷は、底は全く見えず、
上空にわずかな光があるのみだった。
反対側の壁は、遥か彼方に見えるほどの距離であり、
とてもではないが、飛び越えたりすることはできないだろう。
サール:「なんですか、これは。」
エッグ王子:「んー、通路らしきものは見当たりませんね。」
ドレアル:「さて、こまったの。」
レミューズが振り向き、ゆっくりとした口調で言った。
レミューズ:「お前たちには、これが何に見えるんだ?」
サール:「えっ、何を言ってるんですか?
巨大な地下渓谷ですが。」
レミューズ:「なるほど、あれか。
バーバラ、現在位置を確認してくれ。」
バーバラ:「すでに終わっている。
残念なことだが、この場所が亀裂の下らしい。」
サール:「ウッキー、ということは、魔じゃ香は渓谷の下に
落ちたってことですよね?」
ドレアル:「そうなるじゃろうな。」
その時、レミューズが無言のまま、その巨大な亀裂に向かって
歩き出した。
それに気が付いたシェリルが声をかける。
シェリル:「レミューズさん、危ないですよ。」
その声で一同は、レミューズを見た。
その時、レミューズが地面の無い場所に足を踏みだした。
シェリル:「キャーーーーーッ。」
シェリルは、両手で両目をふさぎ、これから起こるであろう
ことを見ないようにした。
一同:「!!」
シェリル以外の者は、驚きの声をあげた。
そこで目にしたものは、レミューズが空中を歩く姿だった。
レミューズは、滑るように空中を歩いてゆく。
そして、あっという間に反対側の壁へと到着する。
小指の先ほどの大きさに見えるレミューズは、
壁を調べているようだった。
しばらく、その様子を見つめていると、レミューズが何かを
引き抜く動作をした。
そして、さらに調べ始めた。
次の瞬間、目の前が真っ白に光った。
そして、見えるようになった時、その場所が広い空洞の中だと
認識することができた。
サール:「えっ、転移した?」
ドレアル:「どうやら違うようじゃの。」
バーバラ:「そのようですね。」
エッグ王子:「一体何が起こったのでしょう?」
ドレアル:「まあまて、
レミューズがその答えを教えてくれるじゃろう。」
レミューズは、それほど遠くない反対側の壁に立っていた。
レミューズは振り向くと、こちらへ戻ってきた。
その手には、大きめの棒状のなにかを持っていた。
レミューズ:「どうやら、幻影を見させられていたようだ。」
そういいながら、高くない天井の亀裂の下辺りを見回す。
笑顔を見せると、少し移動してしゃがみ込んだ。
棒状の何かを足元に置き、中指程の大きさの小さな瓶を
手に取った。
レミューズ:「あったぞ。こっちに来てくれ。
どうやら、無事なのはこの1本だけのようだ。」
全員が安堵し、レミューズの周りに集まった。
辺りには、瓶の欠片と思われるものが散らばっていた。
レミューズは、大事そうに魔じゃ香の瓶を懐にしまう。
そして、足元の棒状の何かを手に取る。
レミューズ:「さて、これを見てほしい。」
そして、皆が気になっていたそれを見せる。
レミューズ:「これには、わずかながら魔力の痕跡を感じる。
これは、何かの鍵ではないかと思うのだが。」
ドレアル:「ほう、どうしてそう思ったのじゃ?」
レミューズ:「はい、幻影の魔法自体とは無関係だったこと、
そして、真実の目を持っていなければ
発見できないほどに、巧妙に隠されていたこと。」
バーバラ:「なるほど、幻影の魔法とは無関係かつ魔力の痕跡が
あるということは、幻影の魔法を発動するための
動力として利用されたと考えたのか。
魔力が無くなっているにもかかわらず、
隠すという事は、何かの使い道があるということ。
そう言いたいのだな。」
レミューズ:「そういうことだ。」
ドレアル:「それで、お主は、この鍵をどこで使うと思うのだ?」
レミューズ:「我々は、3つの罠を抜けてきました。
仮に名付けるなら、一つ目は石像の間、
二つ目は転移の間、そして三つ目は幻影の間。
ここで、1つ目の石像の間とその他では、大きな
違いがあります。
転移の間と幻影の間は、罠に魔法が使われていた。
石像の間だけ、魔法の罠ではなかったということ。
魔晶石が豊富なこの地において、魔法の罠の
製作が可能であるならば、魔法を使った方が遥かに
簡単に、そして効果的に作ることができるはず。
つまり、罠の製作者が別人だと考えられます。」
ドレアル:「何かの理由により、石像の間が後に
作られたと考えたのじゃな。」
レミューズ:「はい、そう考えると、あの分岐の左側に
鍵を使う何かがあるのではないかと。」
ドレアル:「なるほどの。さて、皆の意見を聞こう。
既に我々の目的、つまり魔じゃ香の入手は、
達成されておる。
しかし、この遺跡には明らかに他に秘密がある。
そこで、分岐の左側の調査を行うかどうかじゃ。」
そして、しばらくの間、調査を行うべきかどうかの議論が
行われた。
そして最終的には、左側の通路の先を調査することに決定した。
一行は、来た道を慎重に戻り、そして分岐の先へと向かった。
その通路は、途中から広くなり、壁に彫刻が施され、
まさに神殿へ続く道という様相だった。
彫刻は、所々欠けており、最初のうちはよくわからなかった。
途中から精霊ではないかと思われる人間型の何かが並んでいた。
それらをゆっくりと見て行くうちに見覚えのある彫刻があった。
サール:「これっ、シヴァじゃないですかね?」
そういって、一つの彫刻を指さす。
ドレアル:「うむ、確かにそうみえるの。」
エッグ王子:「もしかしたら、幻獣の彫刻ではないですかね?」
通路の反対側から声がした。
シェリル:「これ、見覚えがあるのですが、思い出せないです。」
全員がシェリルの元へ集まる。
バーバラ:「まさかこれは、魔獣ではないか?」
その少し壊れた彫刻は、まるで犬のような顔をした
人型の何かだった。
サール:「確かに魔獣に見えますね。
しかし、何故魔獣の彫刻があるのでしょう?
人間から見たら敵対している魔獣を彫刻にすると
いうのは、考えにくいですね。」
ドレアル:「うむ、何か理由があるのじゃろうな。」
そのような話をしながら、先へと進んだ。
さほど広くない空間へ出ると、その部屋の中心には、石でできた
赤子が上で寝れる程度の大きさの長方形の台が置かれていた。
その両脇には、首のとれた石像が左右に1体づつ立っていた。
辺りを見回したが、その首の破片はどこにもなかった。
その石台はピカピカに磨かれており、つい最近まで
手入れをしていた様に光っていた。
上面には魔法陣が描かれ、その中心には穴が空いており、
なにかを差すのであろうことが分かった。
レミューズ、バーバラ、ドレアル、サールの4人は、
その魔法陣の見解を話し合った。
しかし、転移の可能性があること以外は分からなかった。
サール:「それにしても、この首のない石像はなんでしょう?」
エッグ王子:「一般的に、こういう祭壇の横の石像は、
守護者として設置するものですが、
破壊したように見えますね。」
ドレアル:「そうじゃな。この石像に対して敵意をもっていたと
考えてよいじゃろうな。」
エッグ王子:「先ほどの魔獣らしき彫刻、この先にいるのが
魔獣ということはあり得ませんか?」
サール:「まさか、ヴァニッシュの拠点?」
エッグ王子:「えっ?ヴァニッシュとは?」
サールは、ヴァニッシュについて説明した。
エッグ王子:「なるほど、その可能性は否定できませんね。」
バーバラ:「いや、その可能性は低いな。
ヴァニッシュならば、敵対する幻獣シヴァを彫刻に
するとは思えない。
我々の知らない何かしらの理由があるのだろう。」
ドレアル:「これ以上議論しても、もう何も得られんじゃろう。
そろそろ、どうするか検討するかの。」
全員で再度話し合うと、魔法陣を起動させることで一致した。
そして、少しの休憩のあと、全員が石台の周りに集まった。
レミューズ:「準備はいいか?」
そして、全員を見回す。
全員が無言で頷く。
レミューズ:「いくぞ」
そういいながら、鍵と思われる棒を突き立てた。
何も変化は、現れなかった。
サール:「んっ?、なにも起きませんね。」
エッグ王子:「魔法陣も光っていない。
これは、ここに差すものではなかった
ということですか?」
バーバラ:「そうだな。」
レミューズ:「そうか、再度模索してみんとな。」
そう言って、レミューズが棒に手を伸ばした時、
棒がスルスルと吸い込まれてゆく。
全員がそれを唖然とした顔で見つめていた。
棒が完全に飲み込まれたあと、突然目の前が真っ白になった。
目の前が見えるようになった時、そこは小さな部屋の中だった。
足元には、転移と思われる魔法陣が描かれていた。
壁と床は木の板が敷き詰められ、真正面には木の扉が1つだけ
あり、家具などは何も置かれていなかった。
レミューズが安全を確認して、木の扉を開けようとしたとき、
全員がその声を聞いた。
聞いたというより、頭に浮かんだという表現が正しいだろう。
???:(なにゆえに、我の眠りを妨げる。)
A:主の登場ですか。
一体何者なんでしょうか?
C:遺跡が封印されてから、何十年、何百年も経っているはずなので、
その間寝ていたってことですよね。
A:眠りすぎですね。




