魔じゃ香とニコの証言
連合暦20年6月18日、
【エッグ王子】
エッグ王子は、すぐに行動に移った。
まず、ドレアル達のカイン王との謁見調整、
さらに大臣の私室の調査、そしてドレアルの知人である
魔導士ザイヤークの所在確認を指示した。
しばらくして、大臣の私室調査を行っていた者がエッグ王子の
元へとやってきた。
調査者:「ご報告申し上げます。
大臣の私室より、我が国の国政と判断できない書類が
複数枚発見されました。」
エッグ王子:「それで一体どのような内容が書かれていたのか?」
調査者:「はっ、日付や内容から、カイン王の襲撃事件と
関係していると考えられます。」
エッグ王子:「なんだと!!」
エッグ王子はしばらくの間、考えを巡らせていた。
エッグ王子:「わかった、他に分かったことは?」
調査者:「ローゼス公爵の屋敷の火災と思しき記述の存在が
確認されています。」
エッグ王子:「なるほど。」
調査者:「最後に、人名のみが書かれている用紙がありました。」
エッグ王子:「人名だと?」
調査者:「はい、記述されていた用紙およびインクの劣化具合から
おおよそ10-20年ぐらい前のものと推測されます。」
エッグ王子:「その中に知っている名前があったか?」
調査者:「はい、貴族の方ですと、
シュルトス公爵家のアリス様、
ロミュラン伯爵家のジェイル様の名前がありました。
他の方は、残念ながら存じ上げません。」
その時、ザイヤークの所在確認を指示した男が現れた。
ザイヤークの所在が判明したとの事だった。
エッグ王子:「大臣の調査は引き続き行うように。
私は魔導士ザイヤーク殿に会ってくるとしよう。」
そして、2人の従者を引き連れ、ルシード国へと向かった。
ザイヤークの家は、ルシード国の東端に位置していた。
扉のノッカーを叩くと1人の老人が現れ、
3人を見ると丁重に頭を垂れた。
ザイヤーク:「これは、これは、エッグ王子様ですね。
マスタードレアルから連絡は受けています。
まずは中へお入りください。」
それほど広くは無いが、小奇麗な部屋へと案内された。
4人がテーブルに座るとザイヤークが話始めた。
ザイヤーク:「エッグ王子様が来られる前に魔じゃ香の所在に
ついて調査しておきました。」
エッグ王子:「それはお手数をかけました。
それで魔じゃ香は入手できそうですか?」
ザイヤーク:「残念ながら、現在では流通しているものは
ございません。」
エッグ王子:「なんと、無駄足であったか。」
ザイヤーク:「いえ、そうでもありません。
過去に作られた物が残っている可能性はあります。」
エッグ王子:「それは何処に?」
ザイヤーク:「はい、魔じゃ香は、今から90年ほど前に正式に禁止
とされましたが、その前から制限されていました。
これは、惚れ薬の原材料として利用可能な事が
判明したからです。
当時の書物を読み解くと、110年ほど前に惚れ薬が
完成し、その効果が認められたため、製造および
販売を制限したのです。
これは悪意を持って利用された場合、国が崩壊する
可能性があるからです。」
エッグ王子:「うむ、確かにそうだな。」
ザイヤーク:「その後、魔じゃ香の純度が上がって行き、
そこから作られる惚れ薬の効果が、その人の考えや
行動を完全に支配できる程になった為、完全に
禁止とされたのです。」
エッグ王子:「魔じゃ香についての話は分かった。
で、どこに残っているというのだ?」
ザイヤーク:「もう少し、お聞きください。
つまり、魔じゃ香は、110年前から90年前まで
厳正に管理されていたことなのです。
そこで、過去の製造売買記録を調査しました。」
エッグ王子:「なるほど、
残っている物があると言っているのだな。」
ザイヤーク:「はい、記録を読むと20年間の間に1000本ほどが
製造され、900本ほどが売買されています。」
エッグ王子:「という事は、100本ほどが残っているのか?」
ザイヤーク:「いえ、その大半が破棄されています。
しかし、所在不明が3本存在していることが
確認されています。」
エッグ王子:「まさか、
その所在不明の3本を探せと言っているのか?」
ザイヤーク:「その3本の所在が完全に不明というわけでは
ありません。
あくまでも、証言の記録なのですが、
運搬作業中に木箱が破損し、中に入っていた
魔じゃ香のうち3本が行方不明になったのです。
当時の監督官が、それを報告しなかったようです。
不明の3本は、事故現場の近くにある亀裂に
落ちて行ったとなっているのです。」
エッグ王子:「亀裂だと?」
ザイヤーク:「エッグ王子様もご存知かと思いますが、
ルシード国の至る所に古代遺跡が存在します。
別の言い方をすると、古代遺跡の上にルシード国が
存在していると言ってもいいでしょう。」
エッグ王子:「なるほど、古代遺跡に落ちたと言いたいのだな。」
ザイヤーク:「はい、事故現場の近くに遥か昔に閉鎖された
古代遺跡が確認されています。
そこから目的の場所に移動できるかもしれません。
但し、その遺跡の調査結果記録が残っていない事から、
安全であるかは保障できません。」
エッグ王子:「うむ、良く分かった。
これは、我々だけで動くのは危険かもしれない。
今日は、古代遺跡の調査許可を取り、マスター
レミューズの考えを伺うとしよう。」
こうして、エッグ王子は遺跡の調査許可申請を行ったのちに、
カルラド王国へと戻っていった。
【ドレアル一行】
ドレアル、サール、シェリルの3人は一旦天馬の尻尾亭に戻ると
各自が謁見の準備を行い、傭兵協会へと向かった。
カイン王国に到着した時、既に日が落ちていた。
3人が転移を完了した時、魔法陣の側にはバーバラが立っていた。
バーバラ:「これは、師匠、お久しぶりです。」
そう言って頭を垂れる。
ドレアル:「おぉ、バーバラか久しいのう。
早速だが、カイン王に目通りを頼みたいのじゃが。」
バーバラ:「はい、エッグ王子様より連絡を受けております。
明日の朝一番に謁見できるように手配しております。」
ドレアル:「そうか、すまんのう。
ところで、ニコ殿と話はできるかの?」
バーバラ:「はい、カイン王との謁見後に手配しております。
傭兵試験用の部屋で申し訳ありませんが、
宿を準備しておりますので、
本日は、そちらでお休みください。」
ドレアル:「何から何まで、すまんのう。
それでは、休ませてもらおうか。」
3人は1泊すると、翌朝にカイン王との謁見の場へと向かった。
連合暦20年6月19日、
3人が案内された場所は、軍議を行う部屋だった。
ここで、将軍達が魔獣王討伐の話をしているのであろう。
当然の事であるが、密談用の大きな魔法陣が床に描かれていた。
3人が大きな机の端に座っていると、カイン王が複数の従者を
つれて入ってきた。
3人は立ち上がって礼を尽くそうとしたが、カイン王はそれを
制した。
カイン王:「マスタードレアル、お待たせしました。」
そう言って、席に座る。
カイン王:「さて、ニコよりある程度の報告は受けています。
ゼロスなる人物、まあ人物と言って良いかは
分からないが、それに支配されていた時の記憶が
部分的にしか思い出せないと言っている。
本人の話では、ゼロスが記憶を探ったときの記憶が
あるようで、状況とか会話とかを覚えているが、
それ以外は、まるで覚えていないらしい。」
ドレアル:「魅了の類ではないのかの?」
カイン王:「ニコは、対魅了用の魔法陣を背中に彫って
いるのです。」
ドレアル:「うむ。
やはり憑依と考えるしかないのかの。
ゼロスは精神体の一種と考えるのが
一番よさそうじゃ。」
カイン王:「私も同意見です。
さて、ニコの話は本人に語ってもらうので、まずは、
そちらの方の話を聞かせていただけないだろうか?」
ドレアル:「そうじゃな。」
そして、サールがノワンの家での出来事を、
ドレアルは地下水路で起こった出来事を、
できる限り詳細に説明していった。
話が終わりに近づいたとき、
ニコが部屋に現れ、カイン王の横に座った。
カイン王:「ニコも来たので、ゼロスが現れた時の
話をしてもらうとしよう。」
そして、ニコがその時の状況を説明し始めた。
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パイン達がノワンの家を後にした日の夜、それは起こった。
私が寝ていると、不審な気配を感じて目が覚めた。
玄関の方から不審な音が聞こえ、
そして、扉が開けられた音が聞こえた。
私は静かに起き上がると、この家に元々存在していた
罠の事を思い出し、寝室からつながる反対側の扉を開け、
その先の通路へ移動した。
通路の奥には、小さな部屋があり、しばらくの間生活できる
環境が整っていた。
私は小部屋に入ると通路側の壁にある
魔法陣に手を添えた。
魔法陣が淡い光を発し、魔法が発動した。
私は椅子に座り、通路を眺めながら侵入者を待った。
しばらくすると、寝室の扉が開き侵入者が現れ、
寝室側から通路の先にいる私を見た。
フードを目深にかぶりっていたが、明らかに男だと分かった。
侵入者は不気味な笑顔を見せると、
躊躇せずに通路を進んでくる。
危険かどうかなど、まったく意に介していないようだった。
私は黙ってそれを見ていた。
侵入者が通路の中央に差し掛かった時、魔法が発動した。
通路の両端に鉄格子が飛び出し、通路全体が牢獄となった。
侵入者は、立ち止まると辺りを見回した。
全く驚いた様子もなく、それが逆に不気味に感じた。
侵入者:「へぇ、こんな仕掛けがあったんだ。
ところで、君は誰だい?」
ニコ:「・・・」
侵入者:「あっ、すまない、まずは自己紹介からだったな。
僕の事は、そうだな、ゼロスとでも呼んでくれ。
さて、君は誰だい?」
私は、思った。
定時報告の連絡員が来るまでは、まだ時間がかかる。
それまでの間に多少なりとも情報を入手する必要があると。
そして、このゼロスなる人物と会話することを選んだ。
ニコ:「私の名前など関係ないだろう?
そもそも、我が家に勝手に入ってくるなど
夜盗の類としか思えないのだが?」
ゼロス:「勝手に入ったのは詫びるよ。
しかし、この家はノワンという人物の家じゃないのか?
空き家だと思っていたんだよ。
まさか、君がノワンだとでもいうのかな?」
ニコ:「確かに私はノワンではないが、この家の管理を
任されている者だ。」
ゼロス:「へぇ、そうなんだ。
ところでノワンの居所を知らないかい?」
ニコ:「残念ながら、たとえそれを知っていたとしても
教えるわけにはいかない。」
ゼロス:「良い回答だね。
そうでなければ面白くないからね。」
そういうと、ゼロスは、鉄格子に近づく。
ニコ:「やめておけ。
その鉄格子に触れると発火するぞ。
その上、その通路内では魔法を使う事ができない。」
ゼロス:「なるほど、魔法が使えないことは分かっていたよ。
鉄格子には、何かの魔法がかかっていると思ったけど、
そんな魔法がかかっているのか。」
少し驚いたような顔をしてニコは質問した。
ニコ:「お前は、一体何者なんだ?」
ゼロス:「君は、面白いね。
質問が真直ぐだ。
まあ、教えるつもりもないけどね。
朝まで時間もあるし、雑談でもしようかね。」
そういうとゼロスは、様々な話を始めた。
それはノワンと全く関係が無い内容だった。
私は、その話をなんとなく聞いていた。
私の行動は、時折意見を聞かれ、それに回答する程度だった。
しかし、何故かその雑談の内容を思い出すことができなかった。
ゼロスの話を聞いているうちに、強い眠気に襲われた。
最初のうちは、眠気と戦っていたが、時間がたつにつれ
それに抗うことが出来なくなった。
そして、眠りについた。
ゼロス:「うぎゃーっ。」
突然の絶叫で目が覚めた。
目の前を見ると、鉄格子を両手で掴み、全身から炎を上げた
ゼロスがもがいていた。
その炎の周りに真っ白な煙のような物が噴き出している。
そして、その煙が自分に向かって飛んできた。
次の瞬間、私の意識は闇の中へと落ちて行った。
意識を取り戻した時は、王宮のベッドの上だった。
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???:「なるほど、その雑談の中に秘密がありそうだな。」
部屋にいた全員が、その声のする方を見た。
そこには、エッグ王子とレミューズが立っていた。
A:ゼロスに関する情報もだいぶ集まっているようですが、
一体何者なんでしょうね?
C:確かに情報が少なすぎますね。
もし精神体であるならば、人間界以外の他の世界とつなぐ
何かが必要だと思うのですが。
A:なるほど、確かにそうですよね。
C:これ以上、考察すると作者が怒るので、止めておきますね。




