それぞれの思い
連合暦20年6月17日、
レミューズの話は続いていたが、ジェイルの一声で中断された。
ジェイル:「ちょっと待ってくれ。
なぜ、カイン王は救助隊を派遣してくれなかった。
王の権限を行使すれば、、、。」
ジェイルは、それだけ言うと下を向いて黙ってしまった。
しばらくの沈黙が続いた後、バーバラが口を開いた。
バーバラ:「どうやら、あの日の出来事を話さないと
納得できないようだな。」
バーバラは、静かに、そしてゆっくりと話し出した。
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救助隊の見送りが決定した後、カイン王のもとにレミューズと
バーバラが呼ばれていた。
カイン王:「レミューズ、すまなかった。
これは、私の不徳の至すところだ。」
レミューズもバーバラも黙って聞いていた。
カイン王:「しかし、完全にあきらめたわけではない。
2人にも協力してほしいと思っている。」
レミューズ:「救助できるなら、なんでも言ってくれ。」
バーバラ:「もちろん私も同じです。」
カイン王:「そうか、それは助かる。
救援隊の指揮は、私がとることにする。」
バーバラ・レミューズ:「!!」
その発言に2人は驚いた。
バーバラ:「お待ちください。
軍議で決まったことを反故にするというのですか?
それでは、部下がついてこなくなります。」
そこまで言って、バーバラはその言葉の真の意味に気が付いた。
バーバラ:「まさか、王をやめるという事ですか?」
カイン王は、少し考えると、はっきりとした言葉で言った。
カイン王:「救助するためには、それしか方法がないのだ。
私は、前から王は、リーダーだと言ってきた。
この考え方は、今までも、そしてこれからも
変えるつもりはない。
助けられる可能性のある者を助けないことは、
私の信念に反するのだ。
たとえ、王の座を失ったとしても、
それは変わらない。」
バーバラ:「お待ちください。
今、王をやめてしまったら、傭兵を必要としている
他国はどうするのですか?」
カイン王:「すでに、傭兵の育成については、私の手を
離れているはずだ。
バーバラ、できないとは言わせないぞ。」
カイン王は、バーバラをじっと見据える。
バーバラ:「確かにすでにカイン王の手は離れています。
しかし、王を慕っている将軍や傭兵達は、
どうするのです?」
カイン王は、しばらくの間悩んでいたが、何かを決意したのか
真剣な顔をして答えた。
カイン王:「王の座を返還することは、前々から
考えていたことでもあるのだ。
私を慕って傭兵になる者達のことは知っている。
とてもありがたいことだと思っている。
しかし、それではダメなのだ。
魔獣王を倒すという確固たる意志が必要なのだ。
それが無くして魔獣王は倒せない。
20年をかけて、なんとかここまで
来ることができた。
しかし、この先に進むためには、さらなる決意
が必要だと考えている。」
バーバラは、焦っていた。
いかにして、王を引き留めればいいのかを、、、。
しかし、いくら考えても答えはでなかった。
バーバラは、レミューズに助けを求めるように見つめると、
強い口調で言った。
バーバラ:「レミューズ、お前も何か言え!!。」
ずっと黙っていた、レミューズは、その声に答えるように、
話し始めた。
レミューズ:「カイン王の考えは、よくわかりました。
私も同じ考えです。」
予想外の発言にバーバラは、驚いた。
バーバラ:「貴様、何を言っている!!。」
レミューズは、バーバラの顔の前に手をかざすと、
バーバラをじっと見つめた。
バーバラは、レミューズが何を考えているのか
分からなかったが、その真剣な目を見ると、
黙って次の発言をまった。
レミューズ:「ところで、少人数の部隊で、城まで行った後は、
どうされるおつもりでしょうか?」
カイン王:「もちろん、石化された者達を連れて帰り、
石化の魔法の解除方法を研究するのだが、、、。」
レミューズ:「それは、不可能だと考えます。」
カイン王は、少し驚いた顔をして聞き返した。
カイン王:「そちは、このやり方では無理だというのだな。
なにが、問題なのだ?」
レミューズ:「一番の問題は、石化された者達が一か所に
集まっているのかという事です。」
カイン王とバーバラは、その意味がすぐに分かった。
カイン王:「なるほど、転移の魔法範囲内にすべての者が、
いない可能性があることか。
1回の転移で帰還できなければ、残された者達が
危険にさらされるということだな。」
レミューズ:「はい、壊されてしまったり、城内の奥深くに
バラバラに移動されてしまえば、
打つ手もなくなります。
既にバラバラに移動されているかもしれませんし、
破壊されているかもしれません。
しかし、可能性がある限り、考慮に入れなければ、
ならないのです。」
カイン王:「では、どうしたらよいのだ?
そなたの考えを聞かせてほしい。」
レミューズ:「はい。まずは時間を頂きたいのですが、、、」
カイン王:「それは構わないが、待てば解決するのか?」
レミューズ:「私が、石化を治す方法を見つけます。
実は、石化を治す方法に心当たりがあるのです。」
カイン王:「なんだと、それは一体、、、」
レミューズ:「いえ、まだ確証を得たわけではありませんので、
時間を頂きたいのです。」
カイン王:「なるほど。」
レミューズ:「バーバラには、その間に救援隊のパーティーを
探してもらいたいと思います。
出来れば、私が隊長となり、他に5人。」
そう言って、バーバラを見つめた。
バーバラ:「わかりました。
その任、わたくしにお任せください。」
カイン王:「そうか、分かった。
どうやら、その案しかなさそうだな。
レミューズ、お前にすべてを託そう。」
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バーバラ:「これが、全てだ。
私からは、もう何もいう事はない。
お前たちの判断に任せる。」
ジェイルは、下を向いて何かを考えるように黙っていた。
しばらくして、ゆっくり顔を上げると口を開いた。
ジェイル:「レミューズさん、1つ教えてもらえないか?」
レミューズ:「んっ?、何を聞きたい?」
ジェイル:「石化を治す方法に心当たりがあると言ったみたいだが
それが何かを教えてくれないか?」
レミューズ:「あぁ、それのことか。
大河の水差というのを知っているか?」
アリス:「えっ、それってメリクリウスの魔法の品の?」
レミューズ:「知っているのなら話は早い。
大河の水差には、浄化の力があると
言われている。
浄化の魔法というのは、その性質から呪いにも
影響を及ぼすと考えられる。
そのため、石化を治す効果を持っている可能性が
あるんだ。」
ジェイル:「んー、よくわからないが、それで治すことができる
んだな。」
レミューズ:「いや、現物を入手しないと、なんとも言えない。」
ジェイル:「可能性があるという事には、間違いないんだよな。」
レミューズ:「あぁ、そういうことになるな。」
ジェイル:「分かった、すまないが、少し皆と話しをさせて
くれないか?」
レミューズ:「何を話すのか分からないが、あまり時間は
とれないぞ。」
ジェイル:「そんなに時間はかからない。
皆、ちょっと来てくれ。」
バーバラは、分かったと返事をすると、パーティーから
離脱した。
パイン達は、少し離れたところまで移動すると、車座に座り
何かを相談し始めた。
残されたバーバラとレミューズは、お互いの進捗について
語り始めた。
バーバラ:「それで、水差しは見つけられそうなのか?」
レミューズ:「ここには、無かった。
どうやら、カルラドに移動したようだ。」
バーバラ:「カルラドのどこに?」
レミューズ:「いや、残念ながらそこまでは分からなかった。」
バーバラ:「そうか、もうしばらくかかりそうだな。」
レミューズ:「あぁ、すまない。
ところで、そっちはどうなんだ?
彼らがそうなのか?」
バーバラ:「いや、実はまだ分からないんだ。
お前から見てどう思う?」
レミューズ:「そうだな、ちょっとまて。」
そう言うと、なにかの呪文を唱える。
呪文を唱え終わると、レミューズの瞳が真っ赤に染まった。
バーバラ:「それは、何の呪文だ?」
レミューズ:「力を見極めるための呪文だ。
魔獣王の力を確認したくて、研究していた。
つい最近完成したんだ。
残念ながら、お前には使えないがな。」
そういいながら少し離れた位置にいるパイン達を見つめる。
バーバラ:「なるほど、賢者にしか使えないという事か。」
レミューズ:「まあ、そんなところだ。」
バーバラ:「で、どう見る?」
レミューズ:「召喚士というのは、あの少女のことだな。
とんでもない潜在能力を持っている。
たぶんあれが、シヴァなのだろうな、、、。
ん?」
バーバラ:「どうした?」
レミューズを見ると、明らかに四体が硬直している。
そして、ゆっくりと崩れ落ちてゆく。
バーバラは、とっさに体を支え、その場にゆっくりと座らせた。
顔を覗き込むと、意識が完全に飛んでいるようだった。
バーバラは、レミューズの隣に腰をおろすと、レミューズを
膝枕し、じっと見つめた。
その目は、まるで母が子供を見る目のようでもあり、
恋人を見つめる目のようでもあった。
しばらくすると、レミューズの目の色が元に戻り、
そして、意識を取り戻した。
そして、ゆっくりと起き上がると、バーバラの隣に座った。
バーバラ:「大丈夫か?」
レミューズ:「なるほど、そういう事だったのか、、、。」
バーバラ:「一体何があった?」
レミューズは少し考えると困った顔をしながら答えた。
レミューズ:「残念ながら、詳しいことは言えない、
一瞬だが、シヴァの意識が流れ込んできた。」
バーバラ:「!!」
レミューズ:「いくつか朗報がある。
大河の水差しに描かれている魔法陣が見えた。
それは解呪の魔法陣に似通っていた。」
レミューズ:「なるほど、どうやら間違いなさそうだな。」
レミューズ:「あぁ、そういうことになるな。
もう一つある。
結論だけ言おう。
お前の目は正しかったということだ。」
C:「お久しぶりです。」
A:「ちょっと、久しぶりすぎませんかね、、、。」
C:「作者も少しずつ書き溜めているようなので
許してやってあげてください。」
A:「まあ、期待していないけどね。
ところで、レミューズがシヴァの意識と繋がったって
言ってたけど、何を見たのかしらね。」
C:「これについては、今は答えられないらしい。
いずれ、はっきりするときが来るかもしれないだそうだ。」
A:「なるほど、謎は謎のままということですか。」




