ザイムへ
連合暦20年6月17日、
パインは、夢を見ていた。
暗闇の中だった。
何か声のような音が聞こえる。
注意深く音のする方向へと進んで行く。
「パ・・・パ・・・、ど・・・るの・・・。
わ・・・よ、こ・・・して、、、。」
パインには、その声を聞き取ることが出来なかった。
その声はかぼそく、そしてあまりにも小さかった。
そして、目覚めるとびっしょりと汗をかいていた。
そう、あの暗闇で声が聞こえてくる、あの夢だ。
パインは、あの夢を見るようになってから、同じ夢を頻繁に
見るようになっていた。
あの後も、何度か確認してみたが、他の誰の夢でないことは
明らかだった。
明らかに自分の夢だった。
いったい何が原因でこんな夢を見るようになったのだろう?
そんなことを考えながらザイムへ向かう準備をしていった。
ザイムへと向かう日の早朝、カイン国の傭兵協会本部で
バーバラと再会した。
そこにいたのは、バーバラのみだった。
パイン:「まさか、バーバラさんだけなんですか?」
バーバラ:「あぁ、そうだ。
他の者はこの10日前から、
露払いをやってもらっている。」
サール:「なるほど、そういう事ですか。」
バーバラ:「あぁ、壺が再設置されるまで、数日かかるのは
分かっている。
すぐ出発すれば、魔獣に遭遇せずに
到着できるだろう。」
パイン:「分かりました。
すぐ出発しましょう。」
そして6人はパーティーを組むと、クライムから北へ向かう道を
歩いていった。
その道は、とても静かだった。
6人はザイムへの道中で、この10日間の出来事を話していた。
バーバラ:((3日前に、魔獣王研究家に会ってきた。))
パイン:((ソラスさんですか?))
バーバラ:((あぁ、そうだ。))
パイン:((何か分かりましたか?))
バーバラ:((この前話を聞いた後から気になっていたんだが、
幻獣、ドラゴン、ベンヌの3つが揃ったあと、
どうするのかが分からないんだ。))
5人は、驚いた。
ジェイル:((うぁ、考えてもいなかった。))
サール:((そうですね。
3つ揃ったあと、何をすればいいでしょう?))
アリス:((きっと、魔獣王のところにいけばいいのよ。))
サール:((いや、それは安易すぎますよ。
もし、儀式が必要だったり、他の品物が必要だったり
したら、魔獣王に瞬殺されてしまいますよ。))
パイン:((うーん。集めたら終わりかと思っていたのに、
やっぱり、倒す方法を調べないとだめなんだな。))
サール:((そういうことですね。
それにしても、
この3つが揃うとどうなるんでしょうね?
気になって仕方がありません。))
パイン:((それぞれに何か意味があるんじゃないかな?))
サール:((そうですね。
今までの情報からベンヌは精神に関係するでしょうし、
ドラゴンについてはシロが言っていた、
幻獣界に閉じ込められる前に幻獣が作ったという事を
考えると、幻獣が人間界に来るための
力でも持っているんですかね?))
パイン:((しかし、魔法陣で呼び出せるんだから、
それって意味があるのか?))
サール:((魔法陣というのは、描くだけじゃないんですよ。
儀式とか色々と必要なんです。
それに、魔法陣の場合は移動できません。))
パイン:((なるほど、サールは召喚士が魔法陣の代わりを
していると考えてるのか?))
サール:((そうなんですよ。
そもそも召喚士が幻獣を呼び出せる事自体
おかしいんですよ。
人間界と幻獣界を繋ぐということは
簡単ではありませんし、長時間滞在することも
難しいのです。))
その時、遠くで魔獣らしき声が聞こえた。
「ワォーーン。」
パインは、その声に反応し、素早く剣を抜き、声のした方へ
身構えた。
全員がその方向を見ると、はるか遠くの方に動く何かがいた。
バーバラ:((大丈夫だ。
あの距離なら問題はない。
ここまでは来れないはずだ。))
そういいながらバーバラはパインの剣を見ていた。
パイン:((そうなんですか?))
バーバラ:((あぁ、そうだ。))
サール:((魔獣の壺から呼び出される魔獣には
行動範囲があるんですよ。))
パイン:((へー、そうだったんだ。
ところで、範囲ってどれぐらいなんですか?))
バーバラ:((なるほど、魔法陣の説明が必要なようだな。))
パイン:((えぇ、お願いします。))
バーバラ:((魔獣の壺は、魔獣王あるいはその配下の魔獣が
作っていると考えている。
壺の底には魔法陣が書かれていて、その魔法陣で
魔獣を呼び出している。
全ての魔法陣には効果範囲と影響範囲があるのだが、
そうだな、たとえば転移の魔法陣で話をしよう。
転移の魔法陣の効果は転送だが、その効果範囲は
魔法陣の中だけになる。
影響範囲も同じだ。))
パイン:((なるほど、
転移の魔法陣で移動するときに魔法陣の中に
入れというのは、そう言うことだったんですね。))
バーバラ:((そうだ。
効果範囲というのは、実際にその魔法陣の魔法が発動
される範囲のことだ。
転移の巻物で考えれば判りやすいだろう。
転移の巻物の効果範囲は数メートル程度だ。
影響範囲も同じだ。))
パイン:((なるほど。
でも、影響範囲というのが分からないのですが。
効果範囲と何が違うんですか?))
バーバラ:((通常は同じだと思ってもいいだろうな。
持続性のある魔法を考えた場合。
そうだな、たとえば何かを守るためにゴーレムを
作ったとしよう、
ゴーレムが守る物から大きく離れては
守る事ができない。
そこで、その活動できる範囲を制限するんだ。
その範囲が影響範囲というものだ。))
パイン:((ゴーレムを作る範囲が効果範囲、
ゴーレムが活動できる範囲が影響範囲なんですか?))
バーバラ:((大体そんな感じだと思っていいだろう。))
バーバラ:((影響範囲がある場合は2つのパターンがあるんだが
1つは、魔法陣自体を中心にして広がるもの。
もう1つは、3つ以上の魔法陣を線でつなげて、
その内側に効果を及ぼすものだ。
前者は魔獣の壺だな。
そして、後者は町の結界とかだ。))
パインが何かを考えているのをみてサールが言った。
サール:((町の結界というのは、魔法の力を弱める
結界のことです。))
パイン:((あぁ、なるほど。))
バーバラ:((それで、魔獣の壺の魔法陣なんだが、
おおよそ数十メートルと考えられている。))
パイン:((意外と狭いんですね。))
バーバラ:((そうだな。
ところで、パイン、お前の持っている剣は、
傭兵の剣じゃないのか?))
傭兵の剣は、傭兵協会で製作販売している剣で、
その切れ味、耐久度、扱いやすさ、その全てが上位に位置する
汎用品として最も良く使われる剣だった。
パイン:((はい、そうですけど、なにか問題が?))
バーバラ:((メルクリウスという名前を聞いたことは?))
パイン:((いえ、ありませんが、、、。))
サール:((メリクリウスは、魔法陣の創始者といわれる人物
ですね。あくまで言い伝えですがね。))
バーバラ:((そう、彼が創始者というのは事実では無いだろう。
しかし、メリクリウスの剣は違う。))
ジェイル:((それって、小説の中に出て来る品じゃないか?))
バーバラ:((あぁ、作者不明の小説のな、、、。))
ジェイル:((作者不明って、どういうことだ?
たしか、ジェニスという人が書いたものだったと。))
バーバラ:((ジェニスは日記を小説風に書き換えただけだ。
本人がそう言っていたという記録が残っている。))
ジェイル:((そうだったのか、、、。))
バーバラ:((その小説の中で、メリクリウスは6つの魔法の品を
作ったとされている。
大河の水差、大地の鎚、大樹の杖、業火の剣、
渦雷の剣、疾風の大鎌の6つだ。
このうち業火の剣、いわゆる炎の剣だが、
これは実在する。))
サール:((まさか、実在するなんて、、、。))
パイン:((サール、そんなに驚くことなのか?))
サール:((確か、パインの両親は武器商人を
やっているんですよね?))
パイン:((あぁ、そうだけど。))
サール:((魔法の込められた武器を扱っていましたか?))
パイン:((そういえば見たこと無いな。))
サール:((魔法の品を作ることは難しいことでは無いんですが、
魔法を発動するためには魔力が必要なんです。))
パイン:((魔力?))
サール:((魔力が何かは分かっていませんが、
人がそれを持っている事は分かっています。
そしてそれを使って魔法が発動されるわけです。
物質としては唯一、魔晶石がそれを持っていると
考えられています。))
パイン:((よく分からないな。))
サール:((アリスが召喚をした後、疲れて寝てしまう事が
ありますよね。
それは、魔力を消費してしまい、
疲れて寝てしまうんです。))
アリス:((ん?))
パイン:((なるほど。))
サール:((魔晶石は非常にもろい物質なんですよ。
なので、武器などに使うとすぐ壊れてしまいます。
それに回数も制限されてしまいます。))
パイン:((結構使いにくいものなんだな。))
サール:((そうですね。
そのため、武器に魔晶石は使いません。
そうなると、人の魔力を使うことになるわけです。))
パイン:((魔力の少ない者が扱うには危険すぎるな。))
サール:((いえ、魔力が多い者でも、戦闘中に
突然寝てしまったら大変ですよ。))
ジェイル:((小説では、その武器は何回も使用していだぞ。
眠ってしまった描写など出てこなかった。))
バーバラ:((そのメリクリウスの武器の一つ業火の剣を
カイン王が持っている。))
サール:((えっ、本物なんですか?))
バーバラ:((あぁ、本物だと思われる。
かなりの実験を繰り返したからな。))
サール:((どうやっているか判明したんですか?))
バーバラ:((残念ながら、まったく分からなかったよ。
剣に描かれている魔法陣も
特別な物でもなかったし、剣自体の金属も
特別な物でもなかった。))
サール:((製造工程に秘密があるんでしょうかね?))
バーバラ:((まあ、今となっては分からないがな。))
サール:((そうですか。))
サールは残念そうな顔を見せた
バーバラ:((話にはまだ続きがある。))
パイン:((なんでしょう?))
バーバラ:((そのメリクリウスの魔法の品の1つ、
渦雷の剣なのだが、ザイムにあると思われる。))
パイン:((えっ、本当ですか?))
バーバラ:((あぁ、カイン王が業火の剣を入手したとき、
実は、偶然見つけたんだが、このときに一緒に
手紙が入っていた。
その手紙には、業火の剣をザイムから移動する旨の
指示が書かれていた。))
パイン:((ザイムからですか。))
バーバラ:((そして、そこに渦雷の剣のことも書かれていた。
渦雷の剣は、次の機会に移動するとなっていた。))
サール:((なぜ、同時に移動しなかったんでしょうか?))
バーバラ:((理由は分からないが、
そうする必要があったんだろうな。))
サール:((しかし、それで何故、ザイムにあると?))
バーバラ:((移動した日がザイムが魔獣に襲われたと
思われる日の前日なんだ。))
パイン:((そう言うことですか。
もし、移動できていなければ、ザイムにあると。))
バーバラ:((そういうことだ。
もし、ザイムで渦雷の剣を見つけたら、
パインにそれを使わせろというカイン王の指示が
出ている。))
パイン:((えっ、渦雷の剣を私に、、、。))
サール:((パイン、すごいじゃないですか。))
アリス:((いいなーーーっ。))
ジェイル:((私もほしいが、まあこのメンバーで一番の剣の
使い手が持つのが正しいだろうな。))
バーバラ:((まあ、まだザイムにあると決まったわけではない。
あまり期待するのも考え物だぞ。))
サール:((確かにそうですね。))
パイン:((渦雷の剣、、、。))
C:「お久しぶりです。
長期間、投稿しなくて申し訳ありませんでしたと
作者が言っております。」
A:「一体なにやってるのよ。
もう投稿されないのかとおもったじゃない。」
C:「いえいえ、そんなことはありませんよ。
少しペースが落ちるかもしれないですが、
最後まで書き続けると言っております。」
A:「ふーん、そうなんだ。
とりあえず、よかった。」




