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此れで貴女も組合員

写し見版を挟み向かい合って座るペルシフィニーとシャス。お互い版の両端に手を乗せて、説明が始まった。


「まず、組合連合で発行される組合カードは七つのランクに分かれています。どの組合でも登録時は石位から始まりですよ。此処から銅位、木位、魔位、銀位、金位、白金位と上がっていきます。貨幣と同じなので覚えやすいと思います。」


そう言ってペルシフィニーは青く色付く写し見版から片手を離し、透明の板を取り出してシャスに手渡した。


透明の板は硝子よりも軽く、水晶よりも硬度の有りそうな材質で、光に透かしてみると、水中の様にゆらゆら揺れている様に見えた。


「此れが組合カードの基となる物で、まだ何も情報が入ってない状態です。此処に入会に必要な情報が入ると、カードが石貨と同じ色に代わり、透かし彫りの様に組合のシンボルが入ります。今回は冒険者組合への入会ですので、表にはハザンバーグの短剣の紋様が、裏には組合連合の共通シンボルである姉弟神の紋様が刻まれますよ。」


因みに知の神ディテュニアと創作の神ディレクサスの二人の姉弟神の紋様は花弁一つ一つに世界の理が宿っていると伝えられる万理弁サンザビレーネの花とその実である。


「冒険者組合では、自身のランクより二つ上までのランクの依頼を受ける事が出来ますが、自身とのランク差が大きい程違約金が高くなってしまいます。冒険者組合の扱う依頼は危険性や難易度に応じて基本報酬が異なりますが、違約金もその依頼の緊急性や重要性等によっても異なりますので、依頼受け付け時に随時確認をお願いしますね。」


「はい!」


しっかりと頷くシャス。依頼を受ける際は、契約をしっかりと確認しようと心に留める。


「次に、ランクの昇格についてですが、此れは一巡(約一ヶ月)毎の依頼の達成率と内容を元に実力考査を組合が行い、依頼達成や指定生物の討伐による組合ポイントと合わせて規定に達すると、昇格試験を受ける事が可能になります。この一巡毎の考査では、規約違反等の蓄積や未達成依頼の頻度による除籍・降格審査も兼ねています。どちらもランクによって基準が異なりますので、ランク毎の確認をお願いしますね。」


「わかりました。…あの、一巡毎に考査があると言う事なんですが、一定期間依頼を受けないと罰則がある等はありますか?」


考査の話を聞きシャスは、自身が今後旅に出る事を考え、質問した。最初に尋ねる予定の人物、ヴェルサースは、聖域の森に居を構えていると精霊達から聞いていたのだ。聖域は出入りする期間が限られている為、依頼を受けれない期間が長期間続く可能性が高い。


そんなシャスの疑問を受けて、ペルシフィニーは説明を追加した。


「一定期間依頼を受ける気配がないと、除籍は有りませんが、ランク降格あるいは石位からの昇り直しになる可能性がありますよ。基本的にランクが高くなるにつれて、依頼を受けれる頻度も少なくなりますので、上のランクに行くほど猶予期間が高くなりますね。石位のランクで長期間活動休止をしても除籍は無いのですが、昇格等を考えると一巡に一度は最低依頼を受けた方がよろしいと思います。」


「了解しました。」


特に昇格を必要としていないシャスには、問題は無いようであった。


「では、最後に組合員に対して組合の免責事項を説明しますね。まず、基本的に依頼時の怪我や死亡に対して組合は責任を負いません。しかし、依頼内容に不備が合った場合、仲介調査不備として、怪我の治療費の負担や賠償金、死亡時の遺族への補償金が支払われます。なので、依頼前には補償金受取人の指定を確認して下さいね!」


「…は、はい。」


輝かしい笑顔で告げるペルシフィニーに弱冠引きながら返事をするシャス。一瞬、前世で言う保険金殺人などが横行しそうだなと思ったが、直ぐに虚偽を見抜く手段を持つ組合には通じないだろうと思い至った。


「以上が、組合から最低限説明しなければならない情報になりますね。問題なければそのまま登録審査に移らせて頂きますが。」


「大丈夫です。お願いします。」


「では、始めますね。」


そう言ってペルシフィニーは、先程出された透明の板を写し見版の窪みに填めた。彼はそのままシャスの手がしっかりと版の両端に乗せられている事を確認して質問を始めた。


「先ず始めに登録のお名前を教えて下さい。こちらは偽名でも構いません。登録の名前はと前おいて仰って下さい。


「登録の名前はシャスでお願いします。」


シャスが答えると写し見版は緑色に点滅した。


「此で貴女の組合連合での登録名は決定されました。基本的に名前の変更は、偽名を使われている方が本名にする事しか出来ません。名義変更希望の場合は住民カードをお持ち下さいね。では、続いての質問です。犯罪歴はありますか?」


「有りません。」


今度は版は青く発光し、ペルシフィニーが一つ頷いた。


「此処からは秘匿可能です。出身地は何処ですか。」

シャスは少し考えてから答えた。


「出身はエルヴィガルナとシーラメールの間にある寒村です。名前は知りません。ただ、お産は馬車の中、丁度シーラメールの大樹海を横切っている時だそうです。」


版はまた青く発光した。曖昧な場所であったが大丈夫だったようだ。そして問答は続いていく。


「年齢は幾つですか。」


「十六歳です。」


「使用できる武器は何ですか。」


「…一般的な得物でしたらある程度は一通り扱えます。」


格闘技は前世に修めた技術ではあるが、感覚は残っている上に、今の肉体は本格的に鍛えてもいないのに大変動きやすく、少なくとも前世と同じくらいは動けるであろうから、嘘にはならないと結論付けたシャスであった。最もこの世界でどれ程通用するかはわからないのだが。


「魔術は使えますか。」


「…秘匿でお願いします。」


シャスの答えにおや?と言った顔をする面々。彼らからしたらシャスは明らかに力を扱う事が出来る人種であり、実際にシャスとガル君に印象を薄くする幻惑がかかっている事に気付いているし、熱々のクッキーを鞄から出しているのも目撃している。故に秘匿にするまでもなく使える事はわかりきっているのだから。


実は、シャスは精霊達に魔力量が多い旨を教えてもらってはいたが、実際に魔術は使った事が無かったのだ。恐らく、問題なく扱う事が出来るとは思うのだが、如何せんやった事が無いことであった為、自身が無く保留したシャスであった。

その後、恐らく冒険者組合の依頼に関係しそうな技能の有無が続いていき、何とか問答は無事終了した。





「最後にカードの色が変わるまで触れて頂ければ登録は終わりです。」


促されて版に填まったカードに手を触れるシャス。すると見る間にカードは灰褐色に色づいた。


カードを外すように促されて手に取ると、シャスは何だか感慨深げな気持ちが湧いてきた。半ば成り行きで作る事になったようなものだが、自身を証明してくれる物を持つと言うことは、何だか自己の存在を認められているような気持ちにもなるようだ。


しみじみカードを眺めているシャスに、組合関係者三名は声を揃えて言った。


「「「ようこそ冒険者組合へ!!」」」


「これで貴女も組合員ね。」


「歓迎します~!」


「宜しくな!」


「はい!宜しくお願いします!!」


口々に歓迎の言葉を言われてほっこりするシャス。暖かくむず痒い気持ちになっていたシャスにベティアは容赦なく微笑んだ。


「これで気兼ねなく受け取れるわよね?」


「へ?」


「や・く・そ・う・の・だ・い・き・ん!!」


「あっ!いや!その!」


「きっちり精算してやるからな!」


「ひぇ~!!」


組合に入れられる要因となった当初の理由をすっかり忘れていたシャスであった。



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