組合連合ダーナフェルナ支部支部長代理(笑)
「う~ん!とっても美味しいですね~!」
幸せそうなオーラを振り撒きクッキーを食べる、煌めく笑顔の御仁。ペルシフィニーと名乗る組合連合ダーナフェルナ支部支部長代理(笑)を自称する男性だ。
ランドルの後ろから出てきた彼は、自分で自己紹介を済ますと自然な動作でベティアの隣の席に着き、クッキーを食べ始めたのであった。
「お、お口に合って恐縮です。」
(ひ~!代理(笑)って何よ~!!?)
マイペースにクッキーを食べるペルシフィニーに対してガチガチに緊張するシャス。金の瞳を持つ者は、神獣や聖人等の祝福持ちに多いため、仕方がない反応だと言える。突っ込みどころの多い自己紹介や行動と合わさって怪しさ抜群である。
「で。何で貴方がこんな所に居るのよ?」
「ふふふ。私は神出鬼没な風旅人ですから。気の向くまま思し召すままに何処にでも向かいますよ~。」
「まるで綿雲妖精みたいよね。」
何とも気安いやり取りのベティアとペルシフィニー。二人の様子を見たシャスはベティアに問いかけた。
「お知り合いですか?」
「組合関連で古い付き合いなのよ。」
「おう。面倒な依頼を良く持って来やがるな。」
「ベティアとランドルは大変頼りになりますからね。本当に良くお世話になってます。」
ベティアの言葉にランドルが頷きながら追加し、それを受けてペルシフィニーが肯定する。話し方を見ても大分気心の知れた仲であるようだ。
「そうなんですか。」
(えーと…。とっても仲が良さそうだし、ベティアさんとランドルさんの二人と話をしに来たのかな?…うん!きっとそうだよね。二人とも凄そうな人達だから、依頼の相談とか色々有るだろうし。)
きっと自分は関係無いから、空気のように気配を消して大人しくしていれば問題ないだろうと、若干現実逃避した考えに思い至るシャス。ランドルが冒険者組合に組合職員を呼びに行った理由を頭から消し去っているようだ。心の平穏を保つために必死である。
しかし、そう都合良く忘れられてくれるはずもなく、ベティアがペレフィニーに確認をした。
「で、此処に来たと言う事は、この子の登録は貴方が行うの?」
「ええ。勿論です。ばっちり登録しますから、任せてくださいな。」
「!!?」
やる気満々に答えるペルシフィニーを見たシャスは、思わずクッキーを手に持ったまま固まってしまった。
信じられないと言うように、シャスはおずおずとペルシフィニーに再確認をする。
「し、支部長代理(笑)様がわざわざ登録をなさるのですか…?」
「ふふふ。普段はしませんけれど、何と言っても貴女はベティアとランドルの推薦ですからね!はりきって登録させて頂きますよ~。」
「は、はあ…。」
とても楽しそうに述べるペルシフィニーに対して未だに緊張で何処かぎこちないシャス。
そんなシャスを見兼ねてランドルとベティアは笑いながら助言した。
「そんな緊張しなくても大丈夫だぞ。コイツはこんなキラッキラな容姿をしてるが、気さくな奴だからな。」
「そうよ。確かに雰囲気で圧されるけど、中身は緩いからそんなに緊張しなくても大丈夫よ。」
「は、はあ。」
二人の明け透けな物言いに内心心臓がバクバクのシャス。それを知ってか知らずかペルシフィニーも追従する。
「そうですよ~。私は怖くなんてありませんからね~。なんでしたら親しみ易いようにペニーって呼んでくださいな。」
「ええ!!?」
大変無理な要求である。
「ちょっと、ペルシフィニー!無理言わないの!貴女は組合職員にすらたまに拝まれるような存在感出してるのよ。初対面の子に無茶ぶりしないの。」
「そうそう。俺達も初めて会った時は冷や汗かいたしな~。」
どうやらこの支部長代理(笑)様に出会って緊張するのは別段可笑しくない通常の事のようだ。
「むう。わかっていますよ。ただ、私を初めて見たのに拝み始めたり平伏したりしない子は貴重なんですもの!おまけにきちんと返事もしてくれますし。何より聖獣と仲が良いなら、私みたいなのとも仲良くしてくれるかと思いまして。」
「はいはい。わかったわかった。」
「こんな感じで、気軽に付き合える人間に飢えてる残念な美形だからね。緊張なんてしなくていいのよ。」
「わ、わかりました!善処します。」
拗ねたような物言いのペルシフィニーの言葉に少し緊張を解されつつも、話している内容にだから貴方は何者なんだよと言う疑問を残し、少々釈然としないまま了承するシャスであった。
「では、早速登録に移りましょうか。」
「!はい!」
話を切り出しながらペルシフィニーは何処からか正方形の金属版を取り出した。
金属版は一辺が五ミュルト(一メートル)四方の正方形で出来ており、神語と幾何学模様が合わさって象られた独特な模様が満遍なく彫り込まれていた。
目を奪われるような精巧な造り。とりわけ中央に二つ並んで埋め込まれた、土台とは材質の異なる円状の鉱物の様なものあたりは、より複雑な模様に沿って色濃い力が流れていた。
「凄い…。」
思わず呟いたシャスにペルシフィニーはにこやかに説明する。
「写し見版と言いまして。この版の端のへこんだ所に手を乗せて嘘を付くと版が赤色に、本当の事をいうと青色に染まるようになっているんですよ。例えば…。」
実例を見せようと写し見版の両端に手を乗せてペルシフィニーは宣言した。
「私は男性です!!…ほら!青くなりました!」
何処となく強調して結果を告げるペルシフィニー。それを見てシャスは躊躇いながら尋ねる。
「…良く間違われるのですか?」
「そうなんですよ~!酷いですよね。私は結構上背があるので、間違うはずないと思うんですが。」
「アハハハハ。」
上背があると言っても全体的に線の細いこの御仁の、麗しいご尊顔といい、物腰や口調といい、少し疑ってましたとは口が裂けても言えないシャスであった。
その後、ペルシフィニーに促されてシャスが自分で写し見版の性能を確め、登録の為の組合の説明が始まったのであった。




