組合連合の成り立ち
組合には様々な種類が存在するが、その殆どが主に依頼の受発注の仲介を役割としている。
この仲介する依頼の中には国や地方自治によるものも有り、組合は居を構える地域と密接な関係を持つと共に、各国各地域に広く支部を持つ事で、国を越えた世界規模での仲介を担う事もある。
その一つに、特許申請がある。
組合連合の興りは、ある姉弟神を祀る二つの教会であるとされている。知の神ディテュニアを祀るディレクサス教会と創作の神チェルニシスを祀るチァルモニア教会である。
この二神は地上を去る際に、それぞれ神具を教会に残した。一方は触れた者の全てを知り、真か偽りかを示す全知の石を、もう一方はこの世に無かったものを作り出した者に祝福を与える褒賞の石を。
賜った神具を合わせ、興り始めた六王国の補助や芸術を始めとする文化の保護をして世界を回るうちに、組合という仲介組織が定着していったのだ。
現在では組合連合の支柱の一つである特許申請は、彼の神々が残された神具を応用して編み出された技術であると知られているが、詳細は組合連合の中枢にのみ秘されている。
「特許申請とそれを可能にする大元の技術が有る限り組合連合は消滅しないとまで言われているわね。」
組合についての大まかな説明を終えたベティアは、そう少しおどけたように締めくくった。
(でも、実際凄いアドバンテージだよね。)
真偽を確かめる術を持つと言うのは個人のみならず国家も喉から手が出る程欲しがる力である。
(これは世界中に定着するよね。)
組合連合が世界規模で展開していると言うのも、納得の理由である。
「まあ。今の話を聞いていて分かったと思うけど。組合は登録の際に加入者が規約で定める加入条件の真偽を見抜く事が出来る。勿論、加入希望者も登録担当者が規約説明等を偽って無いかを確認出来るようになっているからな。心配しなくていいぞ。」
「はい!わかりました!」
追加でされたランドルの補足説明に頷くシャス。ベティアはシャスが納得したのを見て話を進めた。
「それで、どの組合にするかは決まってる?」
「えーと…。オススメありますか?気になるのが多くて。」
組合には冒険者・魔術・商業・鍛治といった王道なものだけでなく、飲食系や編み物・裁縫といった手芸系等多岐に渡って存在していた。その為、色々気になる組合が多いシャスは助言を求める事にした。
「そうねえ。色々迷っているのが多いならやっぱり冒険者組合が良いかしら。」
「そうだな。冒険者なら低ランクに他組合から補助依頼や素材納品が集中してるから、浅く広く他組合に触れることが出来るし、各所にコネも作りやすいしな。」
「成る程!では冒険者組合でお願いします!」
「了解!直ぐに職員を呼んでくるな!」
シャスがアドバイスを聞き冒険者組合を選ぶと、ランドルは颯爽と部屋を出ていった。勢い良く出ていったランドルにシャスが面食らっていると、ベティアが笑いながら告げる。
「うふふ。貴女が冒険者になって喜んでるのよ。後輩が出来たって。」
「っ!!」
何ともこそばゆいシャスであった。
「もちろん。私もね。」
「~~っ!!!」
こそばゆい追い討ちに身悶えそうになるのを堪えるシャスであった。
さて、シャスが羞恥から復活した丁度その時、今までガル君がのんびり貪っていた菓子が漸く底をついた。
「ふ~。たべた。たべた。」
「美味しかったですか?」
ポンポンお腹を鳴らして大分満足そうなガル君を見てシャスは尋ねた。
「ふ~む。わるくはなかったの。だが、きのうたべたくっきーとやらのほうがうまかったの。」
「ふふ。大分気に入ってましたよね。ファルも頑張って作り上げた甲斐があると喜んでました。」
昨夜、リガルダの森での解体作業から帰ってから出された、ファル特製地球風マナティアの花密入りシシルクッキーの試作品が大いに気に入っていたガル君。元老竜の割にかなりの甘党であるようだ。
因みにリー君のお気に入りはモチラムザ塩煎餅であった。最も好みが違うだけで、両者とも今の所嫌いな味はまだ無く、満遍なく大量に料理を消費していたのであった。
「くっきー?と言うのは何かしら?」
話を聞いていたベティアが聞き慣れない単語に首を傾げ尋ねた。
「シシルの実を粉にして練ったものをベースにした焼き菓子ですよ。」
「あら。粉にしてから纏めるなんて、随分手の込んだ料理なのね。」
どうやらこの世界では製粉は一般的では無いようだ。
「したざわりがよくて、ほどよいあまみとこうばしさがある。とてもびみであった。」
「あら!美味しそうね~!いつか食べてみたいわ。」
ガル君の感想を聞いて大変興味津々のベティア。そんな彼女を見たシャスはこっそり鞄を見やる。
実は今朝、朝食を作る際にお握り等の軽食や菓子類ならば市で売れるのではと思い至り、片手間に色々と作りおいていたのである。現在進行形でお世話になっている出前お裾分けしてもいいのだが、一つ問題がある。
ズバリ、クッキーが熱々である。
シャスの鞄は、市に出す品物を考慮して、状態維持と空間拡張の術がぱっと見ではわからないよう隠蔽してかけられている。そのため、中に入っている品物は、入れた時の状態で保たれるのだ。
何を隠そうシャスは熱々のクッキーが好きである。クッキーは冷めても美味しいのだが、熱々の方が作った者だけが味わえる特別感があって好きなのだ。
その為、今朝作ったクッキーも、熱々のまま包装して鞄に入れてしまった。
(流石に熱々のクッキーを出すのは怪しいよな~。でも、既に普通だとは思われてないだろうしなあ…。)
明滅草しかり、ガル君しかり、既に一般人だとは思えない要素が満点である。
(うん。物凄く今更な気がしてきた…。)
「あの。私クッキー持ってますが召し上がりますか?」
「あら!頂いてもいいの?」
「どうぞ。お口に合うと良いんですが。」
「ありがとう!頂くわ。」
「ぬぬ。しゃすちゃん。われもたべたいのじゃが。」
「ふふふ。お腹が大丈夫でしたらどうぞ。」
怪しい要素が一つ増えても変わりはしないだろうと吹っ切れたシャスであった。
「美味しい~!これ物凄く美味しいわ!凄く上品な味わいね。」
「やはり…もぎゅ!…びみだの…もぎゅ!」
「ありがとうございます。」
シャスの出したクッキーに大興奮なベティア。何処の世界でも女性が甘味に弱いのは変わらないようだ。
三人でわいわいクッキーをつまんでいると、ガチャリと重厚な扉が開く音がした。
「ありゃ?何か良い匂いがするな~!」
「あ。ランドルさん!」
「遅かったわね。何かあったの?」
「いや~…。あったと言うか。あると言うか…。」
「「?」」
何とも歯切れの悪いランドルに首を傾げるシャスとベティア。ベティアが聞き返そうと口を開く前に、ランドルの後ろから耳に良く通る声が聞こえてきた。
「ふふふ。ランドル、そんな微妙な顔せずに早く私を紹介して下さいな。」
そう言ってランドルの後ろから顔を覗かせたのは、白金の髪に金の瞳の麗人であった。
(ひ~っ!!また何か凄そうな人が出てきたんですけど~!!)
半端なく只者でない人物の登場に、思わず遠い目になるシャスであった。




