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相応しき師は何処

ファルシアスが目下、早急に習得したいのは、何といっても一般語の読み書きである。


これが出来なければ本による知識の収集に当たることなども出来ないからだ。


続いて学びたいのは、ここミュティヌス教会とエルヴィガルナの歴史と現状である。


神子としての職務を全うする上でも、教会を見返す為にも、敵をよく知ることは必要と言えるだろう。


また、庶民が生活していく上で必要な一般常識も、ファルシアスは是非とも習得したいと思っていた。


教会を見返した後、ここに残るかどうかはわからない。今後の事を考えれば習得しておいても損はないと言えるだろう。


最後に、他と比べると優先度は低くなるのだが、エルヴィガルナ以外の主要国についてもある程度知識を深めたいとも思っていた。


世の中、何が役に立つかはわからない。雑学は詰め込んだ者勝ちだと、前世の経験で考えているファルシアスだった。


これらの知りたい事は、精霊達からもらった知識と所々被るものも有るのだが、如何せん時系列があやふやな上、精霊視点な情報であるため、信じきるには少々心許ない部分が多いのだ。是非とも人間の先生に教えて頂きたいものである。



以上の事をファルシアスから聞き出した精霊達はやいのやいのと、オススメの先生役を出しあっていた。


――やっぱりー。オルフじいさんがーいちばん頭がーいいとー思うんだー。けんじゃさんーだしー。――


――でもー、オルフじいさんはーらふぇんでぃるのーうまれでしょー。さいきんのーえるヴぃがるなのことーわかるのかなー?――


――オルフじいさんはー三百年くらいまえにーとうにーひきこもってからー。でてきてーないよー。さいきんのことはーらふぇんでぃるですらーわからないとー思うよー。――


――なんだー。ひきこもりかー。ざんねんだなー。――


――でもー、さすがに三百年はーながくないー?オルフじいさんー干からびてーないよねー?――


――さー。どうだろー。――


――じいさんのとうはー中をのぞけないーようになってーいるからなー。――


――ぷらいばしーってーやつでしょー。――


中々物騒な会話である。オルフじいさんとやらが気になったファルとシャスは知識検索を試みたが一覧をざっと見て何も言わずに結果を霧散させた。


ぱっと流し読んだタイトルには『鮮血の大規模治癒魔法!?恐怖の大聖堂事件』やら、『光の精霊は見た!爆笑の賢者襲名式!威厳ってなんだろう。』など、やたら物騒なものや巫山戯けたものがずらずらと並んでいた。


触らぬ神に祟りなし。世の中知らなくても良いことなんていっぱいあると、二人は遠い目をしたのであった。


しかし、諦めたとはいえこのようなぶっ飛んだ爺様を選ぼうとしていた精霊達に、果たしてこのまま任せていいのだろうかと、彼女達の不安は募るばかりである。


――じゃあー。ナラティーのばばさまはー?――


――?ナラティーばばさまはー、しーらめーるのーしゅきょーだよー?――


――でもーしゅぎょーちゅーはー、ーせかいじゅうをー旅してたよー。――


――たしかにー。はくしきだー。――


――なにいってんのー。ナラティーばばさまはーだいぶまえにーすでにーよぼよぼだったよー。――


――えー。じゃあー、ばばさまはーふつうの人間だからーもういないのかー。――


――だれかーぴちぴちのー頭のいいー人間をーしらないのー?――


――さいきんのー人間はーはでなのがーすくないからーあんまりーいんしょうにーのこってないなー。――


――じみなのーばっかーだよねー。いんぱくとにーかけるよー。――


精霊達によるファルシアスの先生決めは、中々の難航を示していた。


一方で、分裂したばかりでまだ感覚が慣れていないファルとシャスは、分裂について知識検索をしながら、色々試していた。


例えば、二人が世界に放出できる神力は、合わせて元のファルシアス一人分で、何もしていなければ丁度半分ずつ神力を放出した状態にある。


しかし、互いに意識を揃えると、神力の調整ができ、ファルにシャスが分担していた分も渡したり、属性毎に分けて分担したりなど、非常に自由度の高い調整が可能である事がわかった。


「これなら、外である程度変装すれば、ただの一般人にも偽装できそうだね。」


「うん。感覚の鋭い人でも神力が多いか少ないかがわかる程度みたいだからね。しかも、神子も神官も、自分の適性のある神力を強く感じるみたいだから、各属性を少しずつなら、放出してても怪しまれないと思う。」


微量の放出ならば、目視出来ない限り気づくことは出来ない。


そして精霊達いわく、ファルシアスは目視出来るおよそ二千年ぶりの人間である。はっきり言って今の世界に視える人は、ファルシアスの他にはいないだろう。


さて、実に有意義な考察をしていれば、話し込んでいた精霊達がぞろぞろと二人の元へやって来た。


==ファ~ルちゃ~ん!シャ~スちゃ~ん!==


勢い良くやって来た精霊達を見たファルとシャスは、遂に来たかと息を飲む。果たしてどんな先生を紹介されるのやら。


そんな彼女達の緊張と覚悟を余所に、精霊達はマイペースに続ける。


――みんなでーがんばってーかんがえてー。――


――ちゃんとー生きているーぴちぴちなーせんせーをーみつけたんだよー。――


――だけどーこんどはねー。――


――ちょっとーえらびすぎちゃってー。――


――はち人まではーしぼったんだー。――


――だからねー。――


==これでーえらんでー。==


そう言って二人に渡されたのは虹色の羽。


てっきり決まったものだと思っていたファルとシャスは、呆気にとられて拍子抜けしてしまった。二人顔を見合わせて羽を見やる。何に使うかさっぱりだ。


==さあー!二人ともーまわすからー当ててね~!==


精霊達は自身の周りに人の頭程の大きさの結界を張りながら、高速で円を描いた。


その残像はまるで…


((ダーツかよ!!!))


ファルとシャスは互いの心の絶叫を聞きながら、何だかどうでもいい気がしてしまったのだ。


まだまだ彼らの先生決めは続く。




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