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双つで一つ

神創世界ラヴェンディアは、神々の神力を元に創られている。


故にこの世界の物質の構成の最小単位は、かつて町田 結の存在していた世界とは異なる。原子やら電子、はたまた素粒子すらをも作り出している神力こそが万物の素なのである。


最もこの世界では、原子や分子どころか細胞の概念すらも解明されていなのだが。


神力が万物の素であることからもわかるように、神子が行使する投影や祝詞が起こす奇跡には、無から有を生み出すものも数多く存在する。


その中で、生命を生み出す、もしくはそれに類するものも、極限られた力のある者にしか扱えないとはいえ、確認されている。


故に、今回のファルシアスのように、人間が分裂するというのは、理論上は可能なことである。可能なことではあるのだが、実際に実行できるかは別ではあるのだが。


さて、二人に増殖してしまい、一頻り放心したファルシアス達は、知識検索により取り敢えず身体的には悪影響はない事を確認して一息ついた。


「「はぁ…。」」


「取り敢えず、体は何ともなさそうだね。」


「そうだね。」


「「けど…。」」


身体的には何の違和感もないのだか、精神的に物凄い違和感を感じていた二人であった。


というのも、この分裂状態は、すっぱり二人にわかれて別々の個体になった訳では無いようで、何もしてなくても互いのことがわかるのだ。まるで魂が一部繋がっているような、二人なのに一人のようなあやふやな感覚。


((これは慣れるのに時間が掛かりそうだ。))


本来ならば一刻も早く元に戻ろうとすべきであろうが、二人は諦めて早く適応できるよう努めていた。


なぜなら、知識から分裂を元に戻すやり方自体は検索できたが、分裂の際に一瞬消滅を覚悟したように、戻るのにも何らかの危機が伴う可能性があるからだ。精霊達の手伝いは不可欠であることが予測される。


しかし、肝心要の精霊達は、未だにファルシアスの分裂が成功したことを喜び、二人をそっちのけにして、やんややんやと太陽の精霊を誉め称えていたのだ。


大変楽しそうな精霊達を見て、ファルシアス達は揃って苦笑いをした。


((うーん。あの様子だとすぐに戻してもらえなさそうだなあ。))


おそらく、今戻してと言えば盛大にがっかりさせてしまうだろう。


何より、戻る方法があり、身体的に問題がないのだから、下手に戻してもらって、また違うとんでもない手段を考え出されるよりは、このまま慣れてしまった方が精神的に安全なような気がした二人であった。


「取り敢えず互いの呼び方でも決めない。」


「そうだね。…安直に名前を半分に割ってファルとシャスでいいんじゃない。」


「うん。それでいいよ。」


何とも適当である。



「じゃあ、私がシャスで、見た目も少し変えておくよ。」


そう片方のファルシアスが言ったとたん、彼女の髪と目の色は漆黒と濃茶という前世に馴染みの深い色へと変化した。


因みに原理としては、コンタクトレンズとヘアスプレーの応用で、光の神力で髪と目を覆い、光の波長を調整して、見える色を変化させている。つまり、彼女は光の投影を行ったわけである。


某司教長殿がいたら、ファルシアスの五属性目の適性の発露に、盛大に頭を痛めていたことであろう。幸か不幸か司教長は今回の目撃を回避する事ができた。頭の痛い問題が先送りになっただけとも言えるが。


さて、ファルシアスはぽんぽんと幾つもの属性に適性を示しているが、実はこれは神子として珍しい事ではない。


どの神子も属性毎の適性に大小はあれど、全ての神々から神力とそれに付随する加護は注がれている。


問題は、馴染ませ放出できる神力の適性はかなり差がある場合が多く、更にその馴染んだ神力を属性毎に詳しく調べる事ができる者がいないため、奇跡として利用できる神力の属性とその威力から、其々に適性のある属性を推測されている。


更に言えば、ファルシアスのように神力を目視できる神子は通常いないため、各々自分が放出されている神力が実際には複数の属性にわかれていたとしても、把握できていないのが現実である。


なので通常神力を行使する際、神子は利用する神力から、起こそうとしている奇跡に関与する属性だけを抜き出すということは出来ない。つまり適性の少ない属性だと、操った神力の中に含まれる神力の割合が少ないため、投影や祝詞に必要な神力の量を満たしていない事が多く、その属性への適性が全くないと考えられているのだ。


ファルシアスは精霊由来の知識で神子がほぼ全ての属性への適性を持っている事を知った。しかし、通常は二属性、多くても三属性までしか適性は持てないとされているという事は未だに知らないのである。


もし、彼女がその事を初めから知っていれば、流石に複属性への適性を持つことは隠し、ガルディア司教長はあそこまで頭の痛い思いをしなくても良かったかもしれない。だが、現実には今ですら知り得ていないのだから、そのようなもしも話などしても無駄と言えるだろう。頑張れガルディア司教長。


――ああー!ファルちゃんがー黒くーなってるー。――


――うそー。――


――あー。ほんとーだー。――


――おそろいだー。――


ようやくファルシアスの変化に気がついた精霊達は、ぞろぞろと二人のもとに集まってきた。


――その色もーなかなかーにあってるねー。――


――くーる、びゅーてぃーよー。――


――かわいいーねー。――


口々にファルシアスを誉める精霊達。中々マメである。


――黒ファルちゃんとーおそろいだー。――


「うん。お揃いだね。私の事はシャスって呼んでね。」


――シャスちゃんー。――

――わかったー。――


色がお揃いになってご機嫌な闇の精霊言葉に、シャスは呼び名を教えれば、他の精霊達も揃って了承を飛ばす。


――なんでーこの色にーしたのー?――


「前世がこの色だからだよ。馴染みがある分違和感ないとかと思って。変かな?」


――へんじゃーないよー。――


――とってもーにあってるよー。――


――かわいいーのー。――

再度力一杯称賛を送ってくれる精霊達にほっこりするファルシアス達。やはり、本当は中身が年寄りだろうと、可愛いものは可愛いのだ。


しばしほっこりしたこの場であったが、ある一言で振り出しに戻された。


――あれー?――


――どうしたー?――


――なにかーわすれてなーいー?――


――んー?――


――なんでー。ファルちゃんとシャスちゃんをーぎゅーっとしてーぱかーしたんだっけー。――


==!!!!==


((あー。思い出しちゃった…。))


本来の目的を忘れていた様子の精霊達を見て、そっとしておいたファルシアス達は揃って苦笑した。


――あー!べんきょー!――


――せんせいー!――


――ファルちゃんー。シャスちゃんー。――


==なにをーべんきょーしたいのー?==


まだまだ精霊達の勢いは止まりそうに無いのであった。



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