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踊る会議のその先に

神創世界ラヴェンディア。それがファルシアスが生きる世界の名前である。


主神たる二柱、太陽神ラグアスと月神ファルテナは、世界の基盤となりし惑星を創造したもうた。


その惑星を光神ラティリアと闇神ナグラ、火神ファルス、水神ミューティア、風神ヴェルミーテ、土神ノティスの六柱の大神が中心となって整えなさり、惑星は一つの世界へと形作られた。


精霊とは神々の注いだ神力が、長い年月をかけて意識を持ち、やがて確固たる自我を持ち個別化したものである。


生まれた精霊達はラヴェンディアの一番最初の子供であり、其々の属性を司る存在となった。


世界を創り支え整える事を目的とした神力から生まれた事が影響し、基本的には自由気ままな存在であるが、ラヴェンディアを見守り、世界の危機の際には手助けもしている。世界の監視者であり守護者でもある。



(さて。)


精霊に関する基本事項をざっと検索し終えたファルシアスは、精霊達を見やる。


今だ喧々騒々と精霊会議は続いている。あーでもない、こーでもない、と唸りながら話し合う姿は大変微笑ましい。微笑ましいのだが、知識検索によると、この八精霊達は実は各々の属性の精霊を統べる長であることが判明した。


更に言えば、最初に精霊として個を確立させた、最長老の精霊でもある。


小さい姿に幼い言動とは裏腹な実年齢に何とも言えぬ微妙な感覚に陥るファルシアスであった。


(うーん、詐欺だ。でも可愛い。)


そんなファルシアスの微妙な葛藤をよそに、精霊達の話し合いは白熱していた。


――そんなことー言ったってー、知らないことはーおしえてーあげられないよー。――


――うーんー。そーだけどさー。―


――ここはー、だきょうしてーファルちゃんにーふさわしいーせんせーをー見つけるのはーどうかなー。――


==!!==


――それはーいい考えだねー――


――だれがーいいかなー――


――あれー?そもそもー、ファルちゃんはーなにをーべんきょーしたいんだっけー?――


==!!!!?==


(…え!?)


それは会議開始からおよそ四半刻(三十分)後の出来事であった。


(今更!?)


議題をきちんと理解されずに議論されていたという、まさかの現実にあの四半刻はなんだったのかと呆気にとられるファルシアスであった。


一方、当の精霊達は、気にした様子もなく話し合いを続けていた。


――あれれー?なんだっけー?――


――聞くのをーわすれていたーみたいだねー――


――聞かなくちゃー。――


==ファ~ルちゃ~ん!!==


「あー。はいはい。」


さあ!何の勉強なの?最高の先生を用意してあげるからね!! とでも言わんばかりの期待に満ちた精霊達の視線を受けたファルシアスは苦笑した。


(うーん。がっかりさせてしまうなあ。)


「皆が手伝おうとしてくれるのはとても嬉しいけど、先生に教えて貰うのは無理なんだ。ごめんね。」


==えぇー!!!?==


――なんでー?なんでー?――


――どーしてー?どーしてー?――


――ボクたちー、頭のいー人間のいばしょーいっぱいー知ってるよー―


――そーだよー。けんじゃさんとかもー知ってるよー――


目をうるうるさせて訴える精霊達。姿が人型な分、灯火の時よりも大分破壊力が上がっている。


(中身は年寄り。中身は年寄り。中身は年寄り。)


ファルシアスは、精霊の実年齢を考える事で、刺激された罪悪感の緩和を試みながら理由を説明した。


「教会の人間を見返すために内緒で勉強したいから。先生に来てもらうことも、私が行くこともできないんだ。行ったり来たりしたらばれちゃうからね。」


――ないしょなのー?――

――ないしょかー。――


「そうなの。内緒なの。」


――内緒ならーしかたないねー。――


――ねー。――


若干不満もありそうなものの納得してくれている様子な精霊達を見て、ファルシアスは安堵した。


しかし、嵐は突然やって来るように、爆弾は突然投げ込まれるものだ。


――ふ、ふ、ふ、ふ、ふ、ふ、ふ、ふ。――


かなり悪役な悪い笑いを突然しだしたのは、金色ボディーが眩しい太陽の精霊である。


――どーしたー。――


――悪ーいかおしてるー。――


何か思い付いた風の太陽の精霊に、他の精霊は少々いぶかしみながら尋ねた。


――しつれーだなー。みょーあんをー、せっかくー思いついたのにー。――


――みょーあんー?――


――なになにー?おしえてー。――


――おしえてー。――


他の精霊の期待に答える様ね、太陽の精霊は自信満々で答えた。


――ぎゅーっとしてーぱかー。だよー。――


==!!==


太陽の精霊の言葉に、他の精霊は沸き立つ。


――あーたしかにー。――


――ぎゅーっとしてーぱかーしたらー。――


――かたほーいなくてもーだいじょうぶー。――


とても嬉しそうに納得した精霊達は太陽の精霊を褒めちぎっていた。


その一方で理解ができていないファルシアスは何やら不穏な単語が聞こえたきがして、速やかに情報を検索していた。


(ええと、ぎゅーっとしてぱかー、と…。)


検索結果の流し読みを始めたファルシアス。そのせいで彼女は精霊達に取り囲まれた事に気づくのが遅れてしまった。


じりじりとにじりよる精霊達を見て、ファルシアスは冷や汗を流す。つい先程、大量の記憶を埋め込まれた時の様子が鮮明に思い出された。


「な、何をしようとしているのかなー?」


――だいじょうぶーだよー。ファルちゃんー。――


――初めてはーちょっとーむずかしいーけれどー。――


――みんなでーお手伝いーするからねー。――


(全然安心できない!!)


「げ、限度を考えるって約束したよね。」


顔をひきつらせながら駄目元でファルシアスは制止を試みるも、精霊達は笑顔で言い切った。


――ぜんぜんー限界じゃーないよー。――


――ファルちゃんならーよゆうよー。――


――まぜまぜーぎゅーっができてるからー。――


――しんぱいーいらないのー。ということでー。――


==いざ~!==


==ぎゅーっとしてーぱかー!!==


(また強制かい!!!)


掛け声と共に精霊達がファルシアスに一斉に飛びつくや否や、ファルシアスは急激に自身の存在を圧縮されているような感覚に陥り目をつむった。実際には何も外見上の変化は起こっていないのだが。


徐々に強まっていく圧力。体感として自身を半分程の体積に縮められたと思った次の瞬間、掛けられていた圧力はあたかも初めから無かったかのように消滅した。

さて、突然だがここに弾力の強い、球状のスポンジが有るとする。上手いことスポンジを手のひらで握り込み、圧縮させた後に手を離せば、スポンジは勢いよく元の体積に戻っていく。


同じように今、圧縮されたファルシアスという存在は、突然の解放の元、急速に元の自分に戻ろうと外へと向かった。が、瞬時に自身を通り越し、ファルシアスが拡散と消滅を覚悟した瞬間、再度抑え込むうな圧力が彼女を取り囲んだ。


自信の存在が徐々に安定してきたのを感じ、ファルシアスは恐る恐る目を見開いた。すると、目の前には、




ファルシアスがいた。


「「ええー!?!?」」


――できたー!――


――できたぞー!――


――せうこーだー!――


茫然自失の二人のファルシアスの周りで、精霊達はマイペースに成功を喜びあっていたのだった。


二人に増えたファルシアスの受難はまだまだ続く。




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