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転生したら、魔王と呼ばれた私が、ただ花を咲かせていた話 第三部  作者: マスター


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22/22

第七十話「第三部、終わる。そして、また始まる」

七十話目です。第三部、最終話です。


第三部は、政変から始まって、カナを助けて、セルドで外圧をかけて、アルドに戻って議会で証言して、エン山の調査を終えました。


最後は、静かに終わります。でも、静かに終わりながら、また次が始まります。


では、どうぞ。

カナとミアが集落に着いたのは、翌々日の昼だった。


「ダンさんの農地は、どうでしたか」と私は聞いた。


「良くなっていました」とカナは言った。


「表情は」


「少し柔らかかったです。来年来い、とまた言われました」


「来年も来るつもりですか」


「来ます。約束しましたから」


「ダンさんとの約束、ですね」


「そうです。怒りながらも、約束を守れる人は信用できます」


「センさんと同じことを言いますね」


「センさんが言いましたか、それを」


「似たようなことを言っていました」


「記録に残っていますよ」とミアが言った。「センさんの言葉として」


「残っていますか」


「残っています。センさんは、口数が少ないから、言葉が残ると重みがあります」


「そうですね」


ルナが、カナを見た。


「おかえり、カナさん」


「ただいまです、ルナ」


「今回は、長かった」


「長かったですね。でも、帰ってきました」


「約束守った」


「守りました」


ルナが、満足した顔をした。



その夜、全員で食事をした。


ガルが、また豪華にしていた。


「また、豪華にしてくれましたね」とカナが言った。


「帰ってきたときは、豪華にします」とガルは言った。


「毎回、豪華にしてもらえるんですか」


「毎回です」


「それは、良いですね」


「帰ってくる理由が、一つ増えました」とミアが言った。


全員が笑った。


食事が始まった。


ルナが、人の記録帳を持ってきた。


「カナさんとミアさんの記録、書いていいですか。今夜のことを」


「どうぞ」とカナは言った。


「書いています」とルナは言った。


「何を書くんですか」


「今夜の様子を書きます。全員が揃って、ガルじいちゃんが豪華な食事を作って、みんなが笑っていること」


「良い記録になりそうですね」


「うん。これが、一番大事な記録だと思う」


「自然の記録より、大事ですか」


「どちらも大事。でも、今夜は、人の記録が大事」


「そうですね」


ミアが、自分の記録帳も出した。


「私も書きます」


「ミアさんも」


「同じ夜を、二人で書く。後で読み比べると、面白いと思います」


「面白いですね」とルナは言った。「同じことを見ていても、違う記録になる」


「そうです。ルナさんが感じたこと、私が観察したこと、両方が残ります」


「全部で、もっとよく分かる」


「そうです」


ガルが、二人の様子を見ていた。


「凪様、見てください」と静かに言った。


「見ています」


「記録が、増えています」


「そうですね」


「凪様が来る前は、記録というものが、この集落にありませんでした。今は、ルナが書いて、私が書いて、ミアさんが書いています」


「増えましたね」


「増えました。記録が増えると、この集落のことが、もっと深く残ります」


「後で読む人が、分かりますね」


「後で読む人を、想像するようになりました。私が死んだ後も、この集落を見たい人がいるかもしれない。そのために、残しておきたいと思うようになりました」


「それが、記録を続ける力になっていますね」


「そうです」



食事が終わった後、一人で外に出た。


夜の集落を歩いた。


木に触れた。


元気だった。


土を触れた。


柔らかかった。


水の流れを感じた。


流れていた。


「二十五になりましたね」


来たときは十だった。


自分で回れる状態が二十だった。


今は二十五だった。


余裕が、十五分あった。


「十五の余裕が、次の何かに対応できる力になります」


シロが、横にいた。


「集落が、強くなりましたね」


シロが尻尾を振った。


「ルナが続けてくれたおかげです」


また振った。


「ガルさんが記録してくれたおかげです」


また振った。


「精霊が元気でいてくれたおかげです」


また振った。


「全員のおかげです」


シロが、私を見た。


お前も、という顔だった。


「受け取ります。私も、少しはやりました」


シロが尻尾を振った。


「少しずつ、受け取れるようになっています」


また振った。



翌朝、ルナに会いに行った。


ルナが、池から戻ってきたところだった。


「今日も行ったんですか」


「行った。ルミが、今日はアオより高い位置まで泳いだ」


「アオより高い位置まで」


「うん。アオは、いつも水草の近くにいる。でも、ルミは、最近どんどん上に来る」


「成長していますね」


「成長している。そのうち、水面から出てくるかもしれない」


「水面から出てくる精霊というのは、見たことがないですが」


「見たい」とルナは言った。


「そうですね、見てみたいです」


「記録する」


「ミアさんと一緒に」


「うん。ミアさんがいると、私が見たことを言葉にしてくれる。私が言葉にできないとき、助けてくれる」


「良い組み合わせですね」


「うん」


ルナが、人の記録帳を出した。


「昨日の夜の記録、書いた」


「読んでもいいですか」


「どうぞ」


読んだ。


「ガルじいちゃんが豪華な食事を作った。全員で食べた。カナさんとミアさんが戻ってきて、ナギも戻ってきていて、シロもいた。みんなが笑っていた。こういう夜が、一番好きだ。毎回同じじゃなくて、毎回少し違うけど、毎回好きだ」


「良い記録ですね」


「そう?」


「そうです。毎回少し違うけど、毎回好き、というのが特に良いです」


「どうして」


「変化することを、肯定しています。同じじゃなくていい。変わっても、好きでいられる。それが、続ける力になります」


「変わっても好きでいられる」とルナは言った。繰り返した。


「そうです」


「ナギのことも、そうだ」


「どういう意味ですか」


「最初に来たときと、今は違う。ナギが変わった。でも、好きだ。変わっても好き」


「ありがとうございます」


「礼はいい」とルナは言った。「事実だから」


「そうですね」


「ルミも、毎回少し違う。でも、毎回好き。アオも、少し変わってきているけど、好き。シロも、精霊を驚かせた頃から変わったけど、好き」


「みんな、変わっていますね」


「変わるのは、良いことだと思う。変わらなかったら、成長しないから」


「そうですね」


「じゃあ、私も変わっていいんだ」とルナは言った。


「変わっていいです」


「安心した」


「心配していましたか」


「少し。変わることで、誰かに嫌われるかもしれないと、思っていた」


「変わっても、好きでいてくれる人がいますよ」


「ガルじいちゃんとか」


「そうです。私も」


ルナが、少し照れた顔をした。


「ナギも、変わったもんね」


「変わりましたか、私が」


「変わった。言い切るようになった。受け取れるようになった。それと」


「それと」


「帰ってくることが、上手くなった」


「上手く、というのは」


「最初は、帰ってくることが当たり前じゃなかった。今は、当たり前になってきた。帰ってきて、また出て、また帰ってくる。それが、当たり前になってきた」


「そうですね」


「それが、一番変わったことだと思う」


「そうかもしれないですね」



昼過ぎ、全員で集落の周りを歩いた。


カナとミアも、一緒に来た。


ルナが、一本一本の木を、カナに説明していた。


「この木が、ナギが最初に水を送った木。この木は、私が気づいた木。この木は、カナさんが耕してくれた木」


「それぞれに、歴史があるんですね」とカナは言った。


「全部、関わった人がいる」


「記録に残っていますか」


「残っている。どの木を、誰がいつ手入れしたか、私の記録帳に書いてある」


「それは、貴重な記録ですね」


「そう?」


「そうです。木に、名前のような記録がある。後で来た人が、この木は誰が手入れしたと分かります」


「面白いね」とルナは言った。「この木を見るたびに、関わった人を思い出せる」


「木が、つながりを持っています」


「全部つながってる」


「そうですね」


ミアが、記録帳に書いていた。


「今のルナさんの言葉、書きました」


「ありがとうございます」


「いいえ。記録する価値がある言葉でした」


池のそばまで来た。


アオが、水面で光っていた。


ルミが、今日も少し高い位置で光っていた。


「見てください、ルミ」とルナが言った。


「高いですね」とカナは言った。


「前より、ずっと高い。毎日少しずつ上がってきています」


「成長の速さが、見て分かります」


「見ていると、嬉しいです」とルナは言った。


「嬉しいですね」と私は言った。


「ルミが元気でいることが、この集落が良くなっている証拠だと思っています」


「そうですね。精霊が元気なら、池が良くて、池が良ければ水が良くて、水が良ければ土が良くて、全部がつながっています」


「全部つながってる」とルナは言った。


今日、何回目か分からない言葉だった。


でも、言うたびに、本当のことだった。



夕方、ガルと二人で話した。


「凪様、一つだけ聞かせてください」


「なんですか」


「第三部というものが、あるとしたら、終わりましたか」


「どういう意味ですか」


「凪様の物語の、一つの章が終わった感じがします。政変があって、カナ様を助けて、エン山の問題が解決した。それが、一つの区切りに見えます」


「そうですね。一つの区切りだと思います」


「では、次の章は、何ですか」


「エルドです。二か月後に、エルドの川の問題を見に行きます」


「また、新しい場所ですか」


「そうです。でも、今回から、ベルクさんが事前に調整してくれます。仕組みが、できてきました」


「一人で動いていたのが、みんなで動くようになってきた」


「そうですね」


「それは、大きな変化ですね」


「そうです。最初は、気になることに一人で向かっていました。今は、誰かが調整してくれて、記録係がついてきて、調査団が一緒に動く。私は感じ取ることに集中できます」


「魔王の力が、一番活きる形になってきた」


「そうかもしれないですね」


「凪様、一つだけ言っていいですか」


「なんですか」


「第一部から見てきました。花を一本咲かせた転生者が、今や複数の国を動かしています。でも、やっていることは、最初から変わっていないと思います」


「そうですね。ずれているところを、直しているだけです」


「ずれているところを直す人が、大きな場所に向かっている。でも、やることは同じ」


「同じです」


「それが、凪様の強さだと思います」


「ありがとうございます」


「礼はいいです。事実を言っただけです」


「ガルさんも、少し言い切るようになりましたね」


「ルナが影響していますね」とガルは言った。


「そうですね」



夜、外に出た。


シロが、横にいた。


星が出ていた。


「第三部が終わりましたね」


シロが尻尾を振った。


「政変から始まって、色々ありましたね」


また振った。


「カナが捕まって、助けに行って、セルドに向かって、議会で証言して、エン山の調査で終わりました」


また振った。


「全部、つながっていましたね」


また振った。


「次は、エルドです」


シロが、私を見た。


「一緒に来ますか」


シロが、腰を低くした。


当然だ、という姿勢だった。


「ありがとうございます」


シロが立ち上がった。


「でも、今夜は、ここにいます」


シロが尻尾を振った。


「今夜は、ここです」


また振った。


「第四部があるとすれば、エルドから始まります」


シロが、星を見た。


「どんな問題があるか、まだ分かりません」


また星を見た。


「でも、気になることが、あると思います」


シロが尻尾を振った。


「気になれば、動きます」


また振った。


「それだけです」


星が、夏の夜に光っていた。


集落の中で、ルナが何かを書いていた。


ガルが、明かりをつけていた。


カナとミアが、話していた。


クロとキョロが、どこかで丸くなっていた。


池で、アオとルミが光っていた。


全部が、ここにあった。


「全部が、つながっていますね」と空に向かって言った。


誰もいなかったが、言った。


森が、静かに聞いていた。


シロが、また尻尾を振った。


第三部が、ここで終わった。


次が、またどこかで始まっている。


それで、十分だった。

七十話目、書きました。第三部、完結です。


「変わっても好き」というルナの言葉が、この話のテーマでした。同じじゃなくていい。変わっても好きでいられる。それが続ける力になる。ルナが自分で気づいた言葉が、物語全体のテーマと重なっていました。


「帰ってくることが当たり前になってきた」というルナの観察。最初は当たり前じゃなかった。毎回帰ってくることで、当たり前になった。信頼が積み重なるとは、こういうことです。


ガルの「やっていることは最初から変わっていない」という言葉。花を一本咲かせた日から、ずれているところを直してきた。それが、今や複数の国を動かすことにつながっている。でも、やることは同じ。これが、凪という人物の一貫性でした。


「第一部から第三部を通じて、一人で動いていたのが、みんなで動くようになってきた」という変化。凪が弱くなったのではなく、つながりが増えた。感じ取ることに集中できる環境が整った。これが、第三部の本当の成果でした。


第一部から数えて七十話。読んでくださっている方、本当にありがとうございました。第四部では、エルドへ。また新しい話が始まります。


原案・構想:マスター

物語構成・本文作成・文体調整:クルス(Claude)

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