表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リバイバル Iwo-jima  作者: 双鶴


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

50/51

エピローグ 「現代──松代の空の下で」

 八月十七日の朝。

 晴翔は、ゆっくりと目を開けた。


 そこは、硫黄島の地下壕ではなかった。

 湿気も、砂の匂いも、爆音もない。

 見慣れた天井。

 静かなアパートの空気。


 ――戻ってきた。


 半年間の戦いが、夢だったのか現実だったのか、

 判別できないほど鮮明に残っていた。

 だが胸の奥には確かな感覚があった。


 「あの兵たちは、生き延びた」


 そして、最後のタイムリープが幕を下ろした。



 数日後。

 晴翔は長野県長野市松代町を訪れた。


 栗林忠道中将の墓所がある明徳寺。

 静かな山の空気が流れ、

 蝉の声が遠くで響いていた。


 晴翔は墓前に立ち、

 胸の奥が熱くなるのを感じた。


 半年間、

 彼の名を背負い、

 彼の兵を守り、

 彼の戦場で戦った。


 晴翔は静かに手を合わせ、

 ゆっくりと語りかけた。


 「……閣下。

  史実では、三月に“硫黄島は制圧された”ことになっています。

  しかし、あの島では八月まで、

  あなたの兵たちが生きていました。」


 風が吹き、木々が揺れた。

 まるで、誰かが答えてくれたようだった。



 晴翔の脳裏には、

 兵士たちの顔が次々と浮かんだ。


 湿気に苦しみながらも笑った者。

 乾パンを分け合った者。

 夜の砂丘を影のように移動した者。

 「あと二日」と聞いて涙をこらえた者。

 そして、八月十六日に胸を張って歩いた者たち。


 彼らは、もう“史実の兵”ではなかった。

 晴翔と共に、未来へ向かう兵だった。


 晴翔は静かに呟いた。


 「……ありがとう。

  俺を信じてくれて。」



 晴翔は墓前に立ったまま、

 ゆっくりと空を見上げた。


 史実では、硫黄島は三月で陥落した。

 栗林中将も、兵たちも、

 未来を見ることはできなかった。


 だが、晴翔の中では違う。


  彼らは八月まで生き延びた。

  未来へ歩いた。

  尊厳を持って、戦いを終えた。


 それは、史実を変えることではない。

 だが、

 “彼らの魂を救う”物語だった。



 晴翔は墓前に深く頭を下げた。


 「閣下。

  あなたの戦いは、無駄ではありませんでした。

  あの島で生きた兵たちの姿を、

  俺は一生忘れません。」


 そして、静かに付け加えた。


 「……どうか、安らかに。」


 風が吹き、

 木々がざわめき、

 松代の空が静かに広がっていた。


 晴翔はゆっくりと歩き出した。

 未来へ向かうために。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ