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リバイバル Iwo-jima  作者: 双鶴


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第48話 「八月十三日──あと二日、生き延びる」

 昭和二十年八月十三日。

 上陸から百七十六日目。

 硫黄島の地上は、すでに米軍の飛行場として完全に機能していた。

 だが、その地下には――

 まだ二千名近い日本兵が、生きていた。


 湿気は増し、食糧は尽きかけ、

 兵の身体は限界に近づいていた。


 しかし、心は折れていなかった。


 晴翔が半年かけて育てた“生き残る思想”が、

 兵たちの中に根を張っていたからだ。


 八月の地下壕は、

 春とは比べものにならないほど過酷だった。


- 食糧:残り3日分

- 水:雨水設備でなんとか維持

- 弾薬:残り18%

- 皮膚炎・脚気:軽度だが増加

- 兵の体力:限界に近い


 だが、兵士たちの表情は不思議なほど落ち着いていた。


 「……閣下、今日も生きてます」

 「あと何日でも、やれと言われればやれます」

 「ここまで来たら、最後まで付き合いますよ」


 晴翔は彼らを見渡し、

 胸の奥が熱くなるのを感じた。


 ――史実では、三月で壊滅した。

 ――だが半年、生き延びた。

 ――兵たちは、もう“別の軍隊”になっている。



 参謀が静かに言った。


 「閣下……米軍の動きが変です。

  ここ数日、攻撃がほとんどありません。」


 晴翔は頷いた。


 「……終わりが近い。

  敵は“何か”を待っている。」


 参謀が息を呑む。


 「終戦……でしょうか?」


 晴翔は答えなかった。

 だが、その沈黙が答えだった。


 晴翔は兵士たちを集め、

 ゆっくりと、しかしはっきりと告げた。


 「諸君。

  ……あと二日だ。」


 兵士たちは息を呑んだ。


 「二日……?」

 「閣下、それは……」

 「終わるんですか……?」


 晴翔は静かに頷いた。


 「まだ確証はない。

  だが、敵の動きがそう告げている。

  諸君は半年、生き延びた。

  あと二日……

  それだけ踏ん張れば、必ず未来が来る。」


 兵士たちの目に、涙が浮かんだ。


 「……二日なら、やれます」

 「半年やったんだ。二日なんて……」

 「閣下、最後までついていきます」



 晴翔は壕の入口に立ち、

 遠くで響く米軍の車両音を聞きながら思った。


 ――史実では、三月で終わった戦い。

 ――だが今回は、八月まで来た。

 ――兵たちは生きている。

 ――未来が、手の届くところにある。


 晴翔は拳を握り、

 静かに呟いた。


 「……諸君。

  あと二日だ。

  必ず、生きて未来へ行く。」



 その夜、地下壕は静かだった。

 誰も騒がず、誰も泣かず、

 ただ、静かに眠りについた。


 “あと二日”という言葉が、

 兵たちの心を支えていた。


 そして、

 終戦前夜の静寂が、ゆっくりと島を包んでいった。


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