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リバイバル Iwo-jima  作者: 双鶴


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第47話 「四月三十日──“制圧宣言”の影で動く者たち」

 昭和二十年四月三十日。

 上陸から七十日。

 硫黄島の地上は、米軍の重機とブルドーザーが唸りを上げ、

 飛行場の滑走路がほぼ完全に整備されていた。


 米軍はついに、

 「硫黄島は制圧された」

 と公式に発表した。


 だが、その宣言は――

 地上だけを見た者の言葉だった。


 地下には、まだ数千の日本兵が生きていた。

 そして彼らは、晴翔の指揮のもと、

 “次の一手”を静かに準備していた。


 米軍の無線が飛行場に響く。


 「硫黄島は完全に制圧した!」

 「抵抗は散発的で、組織的な戦闘力は残っていない!」

 「地下壕はほぼ無力化された!」


 晴翔は地下壕の奥で、その声を静かに聞いていた。


 「……制圧、か。

  地上だけを見れば、そうだろう。」


 参謀が苦笑する。


 「閣下、我々は“制圧されたことになっている”ようです。」


 晴翔は頷いた。


 「敵がそう思うなら、それでいい。

  油断は最大の隙だ。」


 四月末の地下壕は、

 確かに疲労が蓄積していた。


 ・湿気は依然として強い

 ・軽度の皮膚炎が増えている

 ・食糧は残り18日分

 ・水は雨水設備でなんとか維持

 ・弾薬は40%を切った


 だが、兵士たちの表情は折れていない。


 「……閣下、まだ戦えます。」

 「制圧宣言? 勝手に言わせておけばいい。」

 「俺たちはまだ生きてる。」


 晴翔は彼らを見渡し、静かに言った。


 「諸君。

  我々は“地上戦”を捨てた。

  だからこそ、まだ生きている。

  敵が油断した今こそ、動く時だ。」


 参謀が問う。


 「閣下……反撃を行うのですか?」


 晴翔は首を振った。


 「大規模な反撃はしない。

  弾薬も体力も、無駄にはできない。

  だが――

  我々が“まだいる”ことだけは、敵に知らせる。

  それで十分だ。」


 参謀が息を呑む。


 「……存在の証明、ですか。」


 晴翔は頷いた。


 「敵が“制圧したつもり”でいる間に、

  我々は半年間、生き延びる。

  それが最も効果的な抵抗だ。」


 夜。

 月は薄く、砂丘は黒い影となっていた。


 晴翔は選抜した小隊を呼び寄せた。


 「諸君。

  今日の目的は一つ。

  敵の補給線に“静かな一撃”を与える。

  派手にやる必要はない。

  敵に“まだ終わっていない”と思わせればいい。」


 小隊長が頷く。


 「了解しました。

  必ず戻ります。」


 晴翔は彼らの肩に手を置いた。


 「生きて帰れ。

  それが最優先だ。」



 小隊は音もなく砂丘を越え、

 米軍の補給線へと接近した。


 そこには、

 ・燃料ドラム

 ・弾薬箱

 ・食糧コンテナ

 が無造作に積まれていた。


 米軍は“制圧したつもり”で、

 警戒を大幅に緩めていた。


 小隊長が小声で言う。


 「……今だ。」


 爆薬が静かに設置され、

 小さな爆発が夜空に響いた。


 派手ではない。

 だが、確実に補給線を断つ一撃だった。


 米軍の怒号が響く。


 「何だ!? どこからだ!?」

 「日本軍は壊滅したんじゃなかったのか!?」


 小隊が無事に帰還すると、

 晴翔は静かに頷いた。


 「……これでいい。

  敵は“制圧したつもり”でいる。

  その油断を利用して、我々は生き延びる。」


 参謀が言う。


 「閣下……これなら…」


 晴翔は静かに答えた。


 「生き延びられる。

  諸君がいれば、必ずだ。」


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