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偽装された異世界召喚〜喚ばれて早々用済みになった俺は、最強の偽装能力で魔神に復讐する〜  作者: 石畑サン輔
第二章 炎と剣

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56.5話「決着後」

 

 黒い太陽が消え、青空が戻った。

 この怒涛の出来事に、レイネは体を動かせなかった。

 

 悪魔がガラティーンを打ち破る。

 一連の死闘を、ただ黙って見上げているだけ。

 放心とも言える硬直に、レイネは苦しそうな表情を浮かべていた。


 彼女は拳を強く握った後、ハッとした。


「アメハル……!」


 先ほどまで悪魔の姿をしていた雨晴。

 彼が気を失ったように体を傾け、真っ直ぐ地面へ落ちている。

 

 レイネはすぐさま、軍司令館から跳躍した。

 雷を身にまとって、落ちてきた雨晴をキャッチ。

 雨晴をそっと抱えながら、無事地面に着地した。

 

「ちょっと……ねぇ、寝てないで……説明しなさい!」


 助けたというより、捕まえたという方が正しい。

 意識のない雨晴を揺さぶる、レイネの顔は険しかった。

 青ざめたとも違う、もっと別の──


「うーん、そんなに動かさない方がいいかも?」


 いつの間にか、レイネの背後にはティオナがいた。

 ティオナは後ろに手を組み、雨晴を覗き込んでいる。


「ビックリだよね、あれだけの大物を倒しちゃうんだもん」


「あなた……アメハルとはどういう関係なの」


「見てわからない? 学友仲間だよ」


 制服を翻して見せるティオナに対して、レイネは身構える。

 帝国に来てからそれほど日は経っていない。

 只者ではない女子生徒と聞いていたので、警戒を解かなかった。


「僕、アメハルのこと好きなんだよね」


「はあ?」


 突拍子のない告白だった。

 レイネはおもわず眉をひそめ、呆れている。

 その反応が面白かったのか、ティオナは笑いをこぼした。


「目を覚ましたらお見舞いに行くから、なるべく無理させちゃダメだよ。じゃあね」


 ティオナはそれだけ言い残して去っていった。

 

 彼女を追う気力はレイネにはない。

 瓦礫だらけの街の中に長く留まると、面倒なことになる。

 一刻も早く、雨晴を連れて安全な場所へ行こうとした。


「待て」


 だが、レイネの通路は阻まれる。

 やってきたのは、軍の兵士バルドルだった。


「お前たちには重要参考人として、俺についてきてもらう」


「っ……!」


 腰の短剣を抜こうしたレイネに、バルドルは両手を上げる。

 敵意はないと武器を持たず、その場で足を止めた。


「心配すんな。どんなナリであれ、国を救った英雄に手荒な真似はしねぇさ」


 肩を落とすバルドル。

 それを見て、レイネは短剣にかけた手を緩めた。

 バルドルは魔神の手先ではないと、彼の態度からそう判断した。


「皇帝陛下から命があるまで、ウチの施設で休ませてやるよ」


「……いいの?」


「ただし! 尋問はさせてもらうぞ。そいつにもな」


 バルドルは頭を掻くと、ビシッと雨晴を指差した。

 

 レイネにとっても、雨晴はもはや得体の知れない存在だった。

 一体何者なのかを追求したいが、彼の正体だけは知らなけれなならない。

 

 レイネは少し考えた後、バルドルへ答える。

 

「……わかったわ」


 ついていくことを了承すると、バルドルは頷いた。

 レイネは雨晴の肩を組んで支えて、バルドルの後ろを歩き始めた。


 段々と、周囲にざわめきが広がっていく。

 国民や兵士たちが、ようやく避難先から姿を現した。

 恐る恐る空を見上げ、壊れた街を見渡し、生き残ったことを確かめるように息をつく。


 半壊した建物、瓦礫に埋もれた街路、負傷者を運ぶ人々。

 脅威は去っても、残された爪痕はあまりにも大きい。

 生き延びたことを喜ぶ声と、失ったものを嘆く声が、帝都のあちこちで交錯していた。

 

「ったく、とんだ災難だったぜ。レオンの野郎……説明もなく死にやがって」


 どこか遠くを見つめながら、バルドルは呟いた。


 軍の指導者が二人も消えた今、統制はままならない。

 復興するまでどれだけの労力を要するのか。

 レイネには想像できず、暗い顔で下を向くばかりだった。


「──いた! アメハルッ!」


 と、誰かがレイネたちの方へ走って来る。

 息を切らしてやってきたのは、ホワイトブロンドの少女、フラメアだ。


「勝手にどこか飛んでいきやがって! どれだけ探したと……」


 フラメアの声が小さくなる。

 目を閉じている雨晴を見つけ、彼女の口は半開きになった。


「おい……まさか死ん──」


「生きてるわ。ルシアンのお姉さんだったかしら」


 レイネはため息を吐く。

 立ち尽くすフラメアの前に歩いて、目線を合わした。


「ルシアンに伝えておいて。屋敷を貸してくれてありがとう」


「は? それはどういう……」


 端的に感謝を述べて、レイネはフラメアの横を通り過ぎた。

 

 魔力切れが近い。

 黒い太陽によるダメージもある。

 彼女はすでに満身創痍ながらも、平静を装っていた。


「絶対、話してもらうわよ──あなたのこと」


 あえて雨晴を見ずに、レイネは話しかける。

 返答はない。呼吸する音が聞こえるだけだ。

 抵抗なく足を引きずられ、雨晴は眠ったまま連れていかれた。

 

 こうして、帝国を揺るがした剣の魔神との闘いは幕を閉じた。





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