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偽装された異世界召喚〜喚ばれて早々用済みになった俺は、最強の偽装能力で魔神に復讐する〜  作者: 石畑サン輔
第二章 炎と剣

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55話「悪魔VS剣の魔神 2」


 帝国の民たちが、一斉に目を覚ました。


 黒き太陽は依然として残っている。

 照りは衰えず、光は肌と生命力を灼いている。

 屋根を貫通し、人体に害を及ぼし続けている。

 

 意識を取り戻すことは、ある種の自滅に過ぎない。

 それでも、彼らは目を覚まさざるを得なかった。

 帝国上空に、太陽とは別の気配が現れたからだ。

 

「……騒々しい」


 国の中心にそびえる城のバルコニー。

 現カルヴェルム皇帝は腕を組み、空を見上げていた。


 他の側近たちは気絶していた。

 彼を守る兵士は、ただ一人。

 兵士は皇帝にひれ伏し、そっと見守り続けていた。

 

 遠くで激突する怪物たちを、皇帝は黙って見つめている。

 玉座を捨てて避難することも、兵を動かすこともなかった。

 


 ♦︎♦︎♦︎♦︎


 

「ゆこうか」


 悪魔は腕を脱力させ、コウモリに似た翼を畳む。

 重力に身を任せると、ガラティーンのいる方へ落ちていった。


「貴様、それほどの魔力を──!?」


 高みから降り注ぐ、底知れない圧力。

 およそ個人が持ってはならない魔力量が、形となって空を震わせていた。

 悪魔が接近するたび、ガラティーンは高度を失う。


 刹那、悪魔は下降速度を急激に上げた。


 渦巻く魔力が風と一体化し、辺りを薙ぎ払っていく。

 直線状にいたガラティーンは咄嗟に剣を構え、防御の態勢へ。

 だが、防ぎ切れない。やむを得ず、後退を強いられた。


「ククッ、フハハハハハ!」


 嗤う怪異が魔神を追う。

 軍司令館スレスレを、悪魔とガラティーンが飛行する。

 余波で起きた暴風に、レイネたちは身構えた。

 

「アメハル……!」

 

 風に押されたレイネが、目を細めて彼の名を呼ぶ。

 だが悪魔の視線は、一度たりとも彼女へ向かない。

 黒い翼を広げたまま、ガラティーンだけを見据えていた。


「剣の魔神とほざいていたが、調子はどうだ!?」


 帝国の都で、2つの光が衝突する。

 建物の壁面が弾け飛び、石畳がめくれ上がった。

 二人の戦いは、帝国そのものを巻き込みながら加速していく。


「太陽魔剣、奴を焼き尽くせ!」


「これはこれは!」

 

 悪魔は拳に魔力を乗せる。

 ガラティーンの剣から放たれた炎を、乱暴に振り払った。

 その余波だけで、帝国の街並みが崩れていく。


「な、何が起きているんだ!?」


「外に出るな、巻き込まれるぞ!」

 

 建物から出てきた帝国民たちが頭を下げ、悲鳴をあげている。

 軍の兵士たちは、混乱する帝国民たちへ必死に避難を促していた。


「よかろう……そこまで死に急ぎたいならば!」


 ガラティーンは咆哮を上げた。

 同時に今まで以上の魔力が噴き出し、その口元が獰猛に歪む。


「この国もろとも、太陽の薪にしてくれるッ」


 剣で袈裟斬りを繰り出しながら、ガラティーンは全身を使って突き進んだ。

 悪魔は身を捻り、その剣を躱す。

 頭上へ抜ける瞬間――ガラティーンの掌には、すでに炎が集束していた。


「ふっ……!」


 放たれた業火が悪魔を呑み込んだ。

 魔力の膜を展開するも勢いを殺しきれず、悪魔は後方へ吹き飛ばされる。

 民家や施設を突き破りながら、帝国南部の広場上空まで押し流された。

 

「撃ち落とせ、ネガソル!」


 響き渡るガラティーンの命令。

 黒い太陽は鼓動し、瞬時に光を集めた。

 そして、悪魔めがけ熱光線を放つ。


「──偽装、火葬方陣」


 熱光線が到達する前に、悪魔の契術は発動していた。

 一本の炎剣がどこからともなく飛来し、悪魔を守るよう立ちはだかる。

 炎剣は風車のように旋回し、迫る熱光線を相殺した。


「良い出来だ。耐久面も申し分ない」


 宙に浮く炎剣をキャッチし、悪魔はその造形を眺める。

 フラメアの炎剣より、刃渡りは二回り大きい。

 悪魔の膨大な魔力によって、性質すら別物へ変貌していた。


「貴様ァ!」


 血相を変えたガラティーンが、悪魔へ斬りかかる。

 割り込んだ二本目の炎剣によって、攻撃は止まった。


「……その、燃える剣は……っ!」


「フフ、これがどうかしたのか?」


 これ見よがしに聞く悪魔。

 ガラティーンの目線は、悪魔の生み出した炎剣から離れない。


「契術で鍛造した、鉄要らずの剣! 何という鬼畜! 剣の価値を貶める(ゴミ)めッ!」


 肩を震わせ、ガラティーンが拳で炎剣を破壊した。


「軍を支配するため、軍団長を殺し、地位を奪った。あの女に制御魔道具の単独警備を言い渡し、誰が助けに来ないよう図った! それなのになぜ、こうもまた同じ冒涜者が現れるのだ!」


 怒りに満ち、冷静さを欠いている。

 余裕さはどこへ消えたのか、ガラティーンは歯を剥き出しにして吠えた。


 対する悪魔は、ゆっくりとあくびをする。


「怒るなよ、全て偽物なんだから。それに、似ているだけで……中身は別格かもしれんぞ?」


 気づけば悪魔の背後には、焔の円環が広がっていた。

 数十、数百の炎剣が並んでいる。


「き、さッまあああああ!」


 悪魔は右手を突き出した。

 呼応するように炎剣が円環から飛び出す。

 激昂したガラティーンを切り裂かんと迎撃を開始した。


「こんなもの──取るに足らんわッ!」

 

 炎剣は四方八方から殺到する。

 まるで意思を持ったかのように、それぞれ異なる軌道を描いた。


「魔力は有り余っている。ほら、もっといくぞ?」


 豪雨のごとく炎剣が降り注ぐ。

 一振り一振りが達人の斬撃を思わせる軌道で迫り、ついにはガラティーンの鎧すら裂いた。


「無意味無意味無意味ィ! この我に、剣で勝とうなどと──」


 猛る黒炎をまとい、ガラティーンは全ての炎剣を振り払う。

 

 そして、目を見開いた。

 悪魔の持つ、禍々しい一本の剣。

 その存在を疑うかのように、体を硬直させる。

 

「燃え狂いな、()()()()


 悪魔が握るのは、ガラティーンと同じ黒き魔剣だった。

 

「無制限の、複製能力……!」


「複製じゃない、偽装だ。もっとも、この童のおかげで制限など無いに等しいが」


 刃から溢れた黒炎が龍のようにうねる。

 持ち主であるガラティーンを襲い、影が見えなくなるまでその身を覆った。

 

「──よもや、()をも真似てみせるとは」


 悪魔の真横へ、ガラティーンは瞬時に現れた。

 横薙ぎの一撃が悪魔を炎剣ごと薙ぎ払い、中央通りまで叩き飛ばされる。

 地を抉り、噴水を砕きながら、悪魔はようやく勢いを殺した。

 

「これはこれは……その口ぶり、やはり」


 半壊した噴水の中で、悪魔は呟く。

 自分を追撃しにきたガラティーンを見上げた。

 水浸しの地面から立ち上がると、ある物に指を差した。

 

「お前が持つ剣こそが──お前の正体なんだろう?」


 その言葉を聞いたガラティーンの剣が、ピタリと止まった。

 

 

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