Refuse to fail 8
三中から家までの距離は徒歩20分程度。こっちの世界では無事に家に帰りつくことができた。
家には今と比べても容姿が全く変わらない母、今と比べると下手したら10センチくらい小さいのではないかと感じられる成長期真っ只中の妹、今よりも明らかにお腹周りの肉が少ない父がいた。
全員が「おかえり」と声を掛けてくれる。
考えられない光景だ。
今は家に帰っても、声を掛けてくれるのは母だけ。妹はたまに俺の部屋の漫画を借りに来るくらいで、父とはあの日から竜原高校を受験するという会話以外に一言も言葉を交わしていない。
玄関から二階への階段を上り、自分の部屋に入って扉を閉め、ベッドに座り一息つく。
「一年前ってこんな真面目だったんだ俺」
部屋を見渡すと、憧れのサッカー選手のユニフォームのレプリカやポスターが壁に沢山飾ってあり、勉強机の上にはたくさんの問題集や教科書が置いてある。
「今じゃ残ってるのはこのベッドくらいだよな」
あの日の後、俺はまるで別人のように変わってしまった。悪い意味で。
あそこを境に、八つ当たりするかのように壁に飾ってあったユニフォームやポスターを処分して、廃人のようになって勉強も真面目にやらなくなった。
三年生の夏までの積み重ねのおかげで何とか竜原高校に合格した俺は、合格した直後に勉強机と勉強道具も処分した。
そこからはつい数時間前までの俺と同じ。何も考えずに高校へ通い、部活が終わったら外で時間を潰して夜遅くに帰宅。これを繰り返す日々。
今までの一年間の流れを思い出したのは久しぶりだったが、やはり心の中には後悔と葛藤、そして納得が1:1:1の割合で存在している。
「このままこの世界過ごすんだったら、また、あの決断をしなくちゃならないんだよな......」
一度経験したこの状況から容易に想像できるこの先の展開を嘆きながら、ふとスマホを開き時刻を確認すると帰宅してから30分も経っていることに気が付いた。
「やっば! こんな時間経ってたのかよ! セミだとしても......いや、セミなら.......いやセミであっても! さすがにこんなに遅いのはありえないだろ!」
すぐさま普段着に着替えて家を飛び出た俺は、市民図書館へと猛ダッシュを開始した。
「うおおおおお! 相手がセミだとしても俺のキャラ的に大遅刻してたまるかあああ!!!」
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