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Refuse to fail 7

 なぜこの頃に戻ってきたのかすぐにでも調べたいところだったが、今いるこの世界に俺たちが干渉していいのかもわからないため、とりあえず俺とセミは部活のメニューをこなしていた。


 この頃の俺たちは真面目に練習に励んでいたためこの程度の練習で音を上げることはなかったが、日々の運動量が大きく減った今の体にこの練習はさすがにきつい。一年前の俺たちってすごかったんだな。そんなことを考えながら必死にメニューをこなし始めて約30分、部室からコーチが戻ってきた。


「お前らー、1回戦は明後日だからなー、今日はこれくらいにしてもう休めー」


 この地獄から解放してくれる言葉を聞いてその場に座り込もうと体の力を抜いた瞬間、近くにいたチームメイトの一人がまだまだ元気の残った声でコーチに返した。


「コーチ! 俺らまだ練習できます! コーチと違って俺らは若いんですよ! 今日は最後までやらせてください!」


 何言ってんだこいつ。コーチが本番前に怪我とかしないように配慮してくれてるのに何でその思いを無駄にするんだ。......いや、そういえばこの頃俺も同じような事言ってたな。


「はっはっは。だよな。そう言うと思ってたぞ。よし好きなだけ練習しろ! その代わり明日はちゃんと体を休めるんだぞ!」


 そうだ......コーチもコーチで熱血タイプだった......。


 コーチの無駄な熱い返答に俺以外の奴らは元気よく「はい!」と返事をして再び練習を再開した。


「この地獄まだ続くのか......ていうかなんでセミもピンピンしてんだよ......おかしい......だ......ろ......」


 何故か練習についていけてるセミに驚いていた俺の視界は暗闇に飲み込まれていった。


「おい未場! どうした! 熱中症か!? 今すぐ保健室の先生を......」


 コーチの声も遠くなっていく......体に力が入らない......俺ここで死ぬのかな......


 そんな心の声も途切れ、俺の意識はなくなった。




「......きろ......い、起きろ......おい、起きろ!」


「んあ?」


 誰かに呼ばれている気がして目を開けると目の前には間抜けな面の男、セミがいた。


「っうおお! なんだ気持ち悪いな!」


 俺が両手で突き飛ばして横になっていた体を起こすと、セミは受け身を取れなかったようで見事にでんぐり返しをしていた。2回転ほどしてようやく反動でこっちに体を向けることができたセミは俺に怒鳴ってきた。


「なんだじゃねぇよ! こっちは心配してたんだ!」


 その言葉を聞いて俺はハッとした。なんと生きていたのだ。


「え? 俺生きてる!? ここは保健室......ってことは竜原高校に帰ってこれたのか!?」


 俺が嬉々とした表情でセミに聞くと、殴りたくなるようなぽかんとした顔で答えてきた。


「いや帰れるわけねえじゃん。だって俺ら練習着着たまんまなんだぜ? しかもここ三中の保健室だし」


「なんだ帰れてないのかよ......期待して損したわ」


 ガッカリした俺は保健室のベットから立ち上がり、廊下に出てグラウンドの様子を確認した。するとそこにはもうチームメイトの姿も、練習道具も残っていなかった。


「あれ? 練習終わり?」


「お前が寝てた間に終わった。お前体力落ちすぎだろ。俺なら3時までは余裕でいけたな」


 セミの体力は昔から異常だったが、運動しなくても落ちてないのはすごいな......というか俺がこんなについていけないってことは、身体能力とかはこの世界に来る前のまんまなのか......。


 この頃に戻ってくるなら体力もこの頃のレベルに戻してほしかったが、そんなに甘くはなかったらしい。


 ここがゲームの中だとしたら『弱くてニューゲーム』みたいな感じだなと少しがっかりしていると、職員室の方から白衣を着た中年の少し小太りの女性、三中の保健室の先生が歩いてきた。


「あら、未場くん目が覚めたのね。千寿くんもお疲れ様。未場君は良いお友達を持ったわね」


「あはは、そうですね。先生も保健室のベッドを貸してくださりありがとうございます」


 保健室の先生に浅くお辞儀して隣に立つセミを一瞥すると、なにやらとんでもない事を言いそうな顔をしていた。


「ん? ああ違いますよ、俺ら未来から来たんで」


「未来から? 何言ってるの?」


「はっはっはこいつほんと最高の親友ですよ! もう元気になったんで俺ら帰りますね!」


「え? あぁ.....二人ともお大事にね」

 

 先生に再び浅くお辞儀をしながら俺は、セミを強引に掴んで保健室横の生徒用玄関から外に飛び出した。

 

 ギリギリのところでセミの言葉を切れた......のかは分からないが、勢いでこの場から抜け出すことげできたのは良かった。




「あのな、こういう状況で迂闊に何でも話そうとすんなよ! 大体こういう状況で何も知らない人に全部話したら怪しまれるんだよ!」


 玄関から飛び出て正門近くまでやってきた俺は、セミを掴んだまま怒鳴りつけた。


「そんなこと言われてもさ、俺らじゃこの状況のことなんも分からないだろ? 今いるこの世界がほんとに()()()だって確定はしてないだろ?」


 確かにセミの言ってることも間違ってない、だが俺が見てきたアニメや漫画の知識によると、こういう場面でべらべら話すことは良くないと相場が決まっている。


 セミを掴んでいた手を離した俺は校門を先に出て、後ろにいるセミに背中を向けたまま、「一旦家帰って、4時に市民図書館に集合な」とだけ伝えて、家路を辿り始めた。


 

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