Refuse to fail 9
「はぁ......はぁ......結構巻いたんじゃないか?」
市民図書館の入り口前に到着した俺は、右腕で顎まで伝ってきていた汗を拭いながら二重の自動ドアを通り抜けて中に入っていく。
「あああ~......天国だ」
二枚目の自動ドアが開いた瞬間、全身に図書館内の涼しい空気が吹いてくる。風を受けた俺は瞬く間に昇天しそうなほど幸せを感じていた。これは誰もが生きていてよかったと感じる瞬間だろう。
入り口付近の時計は4時ちょうどを指し、遅れていなかったことも分かり安心してあと数秒で魂が完全に天国に昇る......というところで少し遅れて図書館に入ってきた同年代くらいの女子二人組が俺の後ろで小さい声で喋っていたのが聞こえた。
「うわ涼し。ってかあの人汗やばくない?」
「マジじゃん。服ビショビショじゃん。」
「「汚っ」」
炎天下の中を走ったことで全身から汗が吹き出し、肌に服が張り付いてしまっていた。そうなることは走っている時から分かっていたはずなのに、図書館内のあまりの涼しさに忘れてしまっていた。
「汚い」と思われる前にすぐにトイレで着替えようとしていたのだが、着替える前に言われてしまっては意味がない。
「汚いって言われた......せっかく着替えと制汗剤とシートとタオルを途中のコンビニで買ってきたのに......無駄金じゃん......」
手遅れになってしまったことを嘆きながら、フラフラとトイレの方へ歩いていると、トイレのすぐ横の新聞コーナーに座っているおじさんがちょうど俺に聞こえるくらいの声量で呟いた。
「男なら汗の一つや二つかくべきだ! 大体今の若者は汗をかくだけで汚いなんて考える暇があったら勉強を......」
あぁ、そういうのいい、いいです。普通に汗はかいてないほうが清潔感あるし。
明らかに俺に向けて言ってたんだろうが、最後まで聞くことなく俺はそのままトイレへと入っていった。
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