解決のその前に
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なんて、事は簡単に進むわけがないのだ。
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なんてややこしいことにもならず、私は無事に退院した。
完全回復はしていないけれど。包帯を取って目を開けるとチカチカと眩んでしまうのでしばらく包帯生活だが、それもあと少しで治まる。
学校へ行っても何も見えないしクロードの授業も休講ではあるが、どうしても行かなければならなかった。
「ゼリニカ様、本当に申し訳ありません……」
「もう何度も聞きましたわ。殿下からの依頼ですので気にしないで頂戴、と何度も返しますわよ?」
放課後、私はゼリニカの手に引かれて校内を歩いていた。
私が何度も謝罪しているのは、見えない私のためにゼリニカ様が来てくれたから。校内に侍女や従者は極力入れないというルールがあるので、誰かに手を引いてもらわないと移動もままならない。
公爵令嬢自ら子爵家の養女の世話をするなんて、周りはどういう目で見ているのか不安になる。これがきっかけで新しい嫌がらせとか生まれたりしないだろうか。ゼリニカが責められたりしないだろうか。
「……私って、可哀そうなのですって」
ゼリニカは決して急がない。
レオニールを待たせていると分かっていても、見えない私に配慮して速度を落として歩いてくれている。
「婚約者が他の女に現を抜かそうとしてなし崩し的に婚約が白紙に戻った。希少な光属性だからと地位の低い子爵令嬢の相手をさせられている。……ふふ、勝手なことばかりだわ。私はあの方に愛なんて持ち合わせてもいなければ求めてもいなかったのに。そして、あなたにだって。私が興味を持ったからこそ声をかけているというのにね。誰も事実を確認しようとしないのよ。私が公爵家の令嬢だから」
貴族の中でも高貴な公爵家。それもフォールドリッジ公爵家ともなれば、隣国にも名を知られる名家だ。王家と同等の知名度と言っても過言ではない。
「……ゼリニカ様は、私が光属性だから興味を持ってくださったのですか?」
「それだけなら、大した興味を持たなかったでしょうね。だってそうでしょう? あの件以前は私、あなたを遠巻きにしか見ていなかったのですもの。言ってしまえば、レオニール殿下と私は同じ興味をあなたに持っていますのよ。それが失礼であると分かっていながらも……ね」
「探偵としての、私……?」
「というより、自身の危機を自身の手で解決しようとしている姿勢ですわ」
今回の件だって、本当はしなくてもいいことをしようとしているでしょう? とゼリニカは言った。
視覚を奪われ、見えるようになるまで自宅で休養するべきなのに登校して。
クロードのために行動を起こして。
私は回復さえすればこれまで通りに過ごせるようになるだけなのに。
「特に女性で、なんて。興味を持つなと言われても難しいのではなくて?」
「私はただ」
自分のために。
自分のためだけに発起しただけだ。
子爵家の両親に迷惑をかけられないから。
クロードの声を独り占めできる時間を守りたかったから。
それだけ。
それだけなのに。
「……あなたは魅力のあるご令嬢よ。庶民がどうとか、光属性がどうとか、関係があるのかないのか分からないけれど、全部含めてあなたの魅力」
違う。
ゼリニカはとても褒めてくれるけれど、私の魅力はヒロインが故のものでしかない。
私自身の魅力ではなく、そういう設定でしかない。
「ゼリニカ様」
「そろそろ着きますわよ。足元にお気を付けなさって」
ここは別の世界でゲームとなって知られているのだと言いたかったわけではない。
これから起こる未来を知っていると告げたかったわけでもない。
では何を言いたかったのかはっきりしないまま、ゼリニカの歩くスピードが落ちていく。
今回の一件の解決編が始まる。




