進展
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病室に私が一人でいるわけがない。
一応でも子爵令嬢である。侍女が部屋に待機していた。
髪をまとめ上げることはできなくても、身の回りの世話をする仕事はあるのだ。
昨日のノーマンとの接触を見られていたのかと思うと恥ずかしさで寝込めるけれど、それ以上にノーマンが慌てた様子で現れたことで恥ずかしさは消えた。
「アレイヤ嬢、大変なことが分かりましたよ!」
「ノーマン様。もしかして私の靴を持って行ってました?」
「侍女殿には許可をいただいてましたよ。調査は私の独断とも言えますが、ゼリニカ嬢にもご助力いただきましたし」
「それならいいんですけど。それで、何が分かったのですか?」
昨日のやりとりから、ノーマンは私の靴裏に挟まっているものを調べてくれたらしい。その結果が翌日に出たのは最優先で調べてくれたのかもしれない。
ノーマンの他に別の足音が聞こえているが、それが誰なのか分からないのが悔しい。
声で分かるのは前世の記憶を持つ私のチート的な一面だと思うから、せめて足音で判別できたらいいのだけど。
「挟まっていたのはプリズムの鉱石の欠片でした。他国に名産としているものもありますが、心当たりは?」
「ありません。プリズムって……」
「光を乱反射する物質ですわ」
前世との記憶と一致する発言はノーマンのものではない。
間違えるはずのない声に、私は動揺することなく声のした方へと顔を向ける。
「ゼリニカ様、プリズムは他の属性の魔法を反射することはあるのですか?」
「聞いたことはありませんわね。ノーマン様、あなたはどうです?」
「私もありませんね。魔法を反射するのではなく、光そのものを反射する。つまり光魔法を反射したというよりは、魔法を発動したことで起きた光を乱反射し、アレイヤ嬢の視力を奪ったと考えるのが妥当でしょう」
クロードの視力がすぐに回復したのはプリズムの乱反射が薄い位置にいたことが幸いしたが、どこにいても発生源そのものである私は戦闘不能レベルにまで落ちることになる。
なるほど。これは私に焦点を当てた事件と考えても間違いではなさそうだ。
光を乱反射させるプリズム。
ならば私自身の魔力によって暴走を起こしたと錯覚させるには十分な代物と言える。
手の平大の石に魔力を注入するには小さくはない魔力を使うことになる。そんな魔力を――よりにもよって光魔法を発動したとなればプリズムが拾ってもおかしくはない。
だって、どれくらい魔力を使えばいいのか分からないのだから。
漏れ出た魔力がプリズムに反射して教室全体に広がれば、魔力暴走と見間違うレベルのものになってもおかしくない。
攻撃魔法ではなかったから、視力を奪われるだけに留まった。
そう考えれば無理は出ない。
「あとは、誰がプリズムを置いたのか、ですよね……」
私を光属性と知っているのは校内には多くいる。全員と言ってもいい。
その中で使用した教室に入ることが可能な人物であり、事故後に教師と生徒会の面々よりも前に教室に入れた人物。
「レオニール殿下のお話からすれば、容疑者は殿下を除いて七人になりますわ」
三人の教師と五人の生徒会が調査に入ったという話だったが、レオニール本人を除けば確かに七人になる。
王族――ましてや新王太子が事件を起こすはずがないなんて思考も、アルフォンの一件で危ういとは思うが、レオニールには私を排除する理由が特にない。だから容疑者から除外しても不満も疑いもない。
私本人がレオニールに狙われる理由に見当がないことからも明らかだ。
「その中の方々なら、私が光属性の魔法使いであることは知られているでしょう。動機によっては犯人となり得る可能性がありますね」
「動機……に目星は付いておられるので?」
ノーマンの問いに、私は強く首を横に振って否定した。
「動機なんて色々ありすぎて絞れませんので、行動の面で犯人を絞りたいと思います」
「本来、厳重に守られるべき光属性の方が狙われるというのは嘆かわしいものですね……」
レオニールを通じて私に護衛を付けたらどうか、なんて言い出すノーマン。気後れしてしまうので即座に却下させていただく。
別に聖女とかでもないし、世界にたった一人しかいないわけでもないし。
死に急いでいるわけではないが、大事にされたい欲はない。
前世と同じように、好きなように生きていけたらそれが一番いい。
「事故後に現場に入ることができたのは八名。そこから事故前にも現場の教室に入る機会のあった人物を探せば、犯人に近付けますね」
「そうですね。他の授業でも使われている教室なので、特定に至るかどうかは賭けかもしれませんけど」




