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もう一人の見舞客とメッセージ


 石の行方。

 魔力暴走の原因の追究。

 目的の被害者の特定。



 この三つが解明できなければ真犯人を導き出すのは不可能と言える。

 教室に細工はされていないとレオニールは言ったけれど、物理的な細工がなされていないだけで魔法的な細工が施されていたとか、犯人が誰よりも先に回収したとも考えられる。

 考えるだけでは限界がある。

 実際に足を運んで調査しなければ手掛かりになりそうなものさえ見つけられない。

 だが、私は今視力を奪われた状態にある。誰かに代わりに調査してもらわないといけない。


「うああ、誰か助けてぇ……」


 こんな時に友達がいないのが悔やまれる。

 罰を受けているアルフォンやロイドにさらなる恨みをぶつけてしまいそうだ。そもそも元王太子だったアルフォンが私を婚約破棄の道具にしようとしなければ、下位貴族仲間の令嬢と友達になって、週末に街で甘い物を食べたりできたかもしれないのに!

 終わったことをいつまでも嘆いていても仕方ないので溜息で流す。


「助けましょうか? 私で良ければ、ですけど」


 コンコンと控え目なノックの直後に、軽やかな声が聞こえた。


「どちら様でしょうか……?」


 男の人の声であることに間違いはないが、それが誰のものか判別ができない。

 聞いたことあると思うけど、視界が塞がれた今、声の記憶はすなわち担当声優の出演作と同じになる。


 この声はだから……えーと。


「せっかく選んだ髪型も、入院となれば見られないものですね。残念です」


 選んだ髪型で該当するのは一人しかいないが、念のためにもう少しだけ考える。

 だって包帯の向こう側に好みの外見の推しがいるなんて信じられる? 信じられないね。

 見えないからもしかしてゲーム中なんじゃないのかって錯覚にも陥るけれど、残念ながら転生した後でした。


「ノーマン様、ですか?」


 いつまでも待たせるわけにもいかず、クロードと同じ黒髪眼鏡属性の推しの名を口にする。


「はい。アルフォン派はいなくなったと思いましたが、また狙われたようですね……」

「私かクロード先生か、まだはっきりとはしていません」

「いえ、あなたが狙われたのですよ。だって、クロード卿はもう視力が回復しました。いまだに回復していないということは、あなたの方が重傷だった。つまり、狙われたのはアレイヤ嬢です」

「なるほど……。ノーマン様、どうしてクロード先生の視力が回復したことをご存じなのです? 学校側に拘束されているとお聞きしましたが」

「これでもこの国の宰相の息子なんでね。情報自体は家の中に入り込んでくるんですよ」


 しかもリアルタイムで、と和やかに話すノーマンの声が近付いて下がる。

 椅子でも置いてあって、そこに座ったのだろう。多分、レオニールも座っていた。


「まだ解放されはしないみたいだけど、しきりに履き物を気にしていたらしい」

「履き物を? 中に小石でも挟まっていたのでしょうか?」

「いや、そういうわけではないみたいですよ。思うに、これは誰かに向けたメッセージなんじゃないかと思います。私の推測ではありますが」

「メッセージ……」


 学園側に捕らわれたクロードが意味深なメッセージを出す。


 誰に向けて?


 そんなの、事故当時一緒にいた私に決まってるよね?


「履き物。履き物って……何を」


 実は靴底に得物を隠していて、使う機会を伺っているとか? 手足を縛られているわけではなさそうだし、解けたとしても逃げられない状況なのだろうから得物ではないし、それではメッセージではなくなってしまう。

 ベッド上に寝ていた私は自分の足を確かめる。靴は履いていない。

 ならばとベッドの下に身を乗り出して手を伸ばして探すが、見えてないせいでバランスを崩してベッドから落ちそうになる。


「アレイヤ嬢!」


 ずるっと頭から落ちそうになる私を、ノーマンが支えてくれる。

 抱きとめてくれる。


「ひえぇ……」


 頬に当たる布の感触と、その奥から聞こえる心音と伝わる体温。


「大丈夫ですか? 言ってくだされば私が代わりにしますから」

「あ、ありがとうございます」


 見えていないからこそ断定できないが、いわゆる抱きとめてくれた状態になっていて、これはこれで一枚のスチルになるのではないかというシチュエーション。

 ゲームでは存在しないスチルなので、だからこそ見えない状態にさせられているのかと勘繰ってしまう。

 状況が整理できないままノーマンから離れる。

 靴の裏が見たかったのだと伝えると、何事もなかったかのようにノーマンは私の靴を探して拾い上げた。


「ああ、なるほど。卿が示したのはこのことでしたか」


 異性と至近距離になったことにどぎまぎしているのは私だけだったのか、淡々とノーマンは見たままの事実を告げる。


「靴裏に何か挟まっています。恐らく事故前後にあなたが現場で踏んだものでしょう。詳しく調べてみますね」


 あっさりと病室から退室していくノーマンと、一人残された私。

 こんなに流されることってある?

 もっと抱きとめた相手を意識しろよ!

 それほどまでに魅力ないのかな。

 ヒロインなのに? 私、ヒロインなのに?

 これからはもう少し意識して行動しようかな……。


 え、ヒロインらしい気にされるような振舞いって、どういうの?


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