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悪役令嬢、ヒロインを守る。

 助けなければ。

 どこにいるか分からない全員は無理でも、隣にいると分かっているゼリニカだけでも。


「アレイヤ様!」


 咄嗟の判断なのか、ゼリニカはいつぞやのように私を抱きしめた。その身をもって私を守ろうとしてくれている。

 見えない不安の中、身を呈させていることに罪悪感がありながらもゼリニカに守られるしかない私。

 何が希少な光属性だ。守られていては意味がないんじゃないのか。

 どうにもこうにも、大怪我は免れない――覚悟を決めた時だった。


「プロミネンス・フロア」


 サンドラの魔法攻撃は私にもゼリニカにも当たらなかった。ゼリニカの腕の中で守られるだけの私は、耳から情報を集めるしかない。


「どっ、どうして⁉」


 魔法を防いだのか無効化したのか見えていない私には生徒会室内の状況が分からないのだけれど、誰かが怪我を負ったような雰囲気は感じられなかった。

 無事だったことに対する安堵、からの誰がやったのかという疑問。

 およそ妥当かと思われる心情の流れはしかし、私だけのようで。肌から伝わる空気は「誰」ではなく「どうして」と、サンドラの声と同じものだった。

 その動揺は、今なお私を抱きしめているゼリニカから強く伝わってくる。


「な、なぜあなたが――光魔法を⁉」


 驚きの声は教師の誰か。

 サンドラの攻撃は、誰かの放った光魔法で防がれたということか。

 私はもちろん使っていないし、前にいたという光属性の女性は国外にいると聞いている。理由があって戻ってきたのかと思えばどうやら違うらしい。

 答えはすぐに分かった。


「君の誤算は、この石の回収を考えなかったことにある」


 ゴトン、と重みのある物が落ちる音。それよりも前の、この声。

 えっと、キャラ名よりも先に声優名が出てしまうんだが!!?


「クロード先生?」

「……待たせたね、アレイヤ嬢」

「びゃああああああああああっ⁉」


 いい声が、私の耳のすぐ近くからする!!!!

 あの人の声が!!!!

 私の耳の初恋とも言える、あの声優さんの!!!!


「アレイヤ様が奇声を発するなんて、一体普段はどのような恐ろしい授業をなさって……?」


 ゼリニカの誤解を解く余裕なんてない。

 初めて聞くドラマCDで推しの最高潮の台詞を聞いたら本当は全身全霊で叫びたい気持ちになる。その気持ちを堪え切れなかった。


 耳元の破壊力!!


「うーん、思ってた反応と違うなぁ……?」


 高音質ヘッドホンなんて比べ物にならない本物に、ただゼリニカの腕の中で興奮を抑えることに必死になるしかない私は、ゼリニカから抱きしめ返される力と小さな「大丈夫ですわよ」という囁きに昇天しかけた。


「クロード先生、それで、彼女の誤算とは?」


 レオニールが話の筋を戻す。


「レオニール殿下、これは、あの事故の直前にアレイヤ嬢が使った石です。事故が起きた最中に彼女の手から回収して隠して持っていました。倒れている私からこれを回収しなかったのが誤算です。魔法を注入して色を変える性質を持つこの石は、魔力を溜めているから変色を可能にしている。彼女はきちんと結果を残してくれたおかげで最強の防御魔法を使えたというわけです。わずかにこぼれた魔力を拾ったプリズムによって魔力暴走のような事故を起こしましたがね」


 十分、評価できる内容でした。と人前で褒めてくれるクロード。


「光属性の魔力が宿った石なら、別属性の人間でも光魔法が使えるということですか?」

「ということでもないんです。魔法が違えば使い方も違う。僕は友人から使い方を聞いていたので使えた、というわけですね」


 見えない。けどきっと、意図がありそうな笑顔を浮かべているに違いない。



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