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bird servant  作者: 真琴
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14/18

file.8-No.4

今回でファイル8は終わりです。



説明文が多く、字も密集しています。読みやすい文章とは難しいものです。



長いのは本文だけにしましょう!さっそく本編へどうぞ!

最初に口火を切ったのは蘭だった。



「結城美帆乃に『付き合わされている』と推測される人物の特定を頼まれたわけだけど。えーっと……30~40代の男性。職業はミステリもしくは推理分野を得意とする創作関係に従事。そしてある程度知名度、人気がある。既婚で子供はいない。ここ1~2年の間に妻が病死、もしくは事故死している。これに該当する人物で良かった?」

「はい」

「……今さらでなんだけどさ。どうしてここまで絞り込めるわけ?」



話に聞いただけだが、黒鴎と結城美帆乃なる人物が接触した時間は30分にも満たないという。そんな短時間での会話の中、しかもその人物が話題の中心に上がったのはほんの数分。それだけに関わらず黒鴎はやたらと具体的に条件を絞り込んできたのだ。

不思議に思うな、という方が無理である。



「説明してませんでしたか?」

「されてない」

「それは失礼しました。まず性別と年齢についてですが、結城美帆乃が特定の人物に近付くときのしぐさや言い回しは女性より男性に向けています。ただあんな安っぽい演技で騙されるのはだいたい30~40代ぐらいまで。20代では経験的に浅すぎて結城美帆乃が欲しがる人材はいないでしょう。逆にそれ以上歳がいくと演技が見破られて都合が悪い」

「へー……」

「結城美帆乃は刺激を求めるが故、何かしら事件を起こしたがっています。ですがただ事件を起こしただけではすぐに警察に捕まってしまう、捕まらないための知恵が欲しいなら普段からそういうことを考えている者に近付けばいい。ある程度人気が出て能力があると過信する自意識過剰な人物なら自身の力が現実にも通用するか試したい、そう思う者が一人ぐらいはいるはずです。たとえ思っていなくても唆すのは楽でしょう」

「でもそれならさ、わざわざ一般人巻き込むより警察関係者を自陣に引き込んだ方が手っ取り早いんじゃない?」

「もちろん、そのほうが早いと私も思います。ただし私が見た限り現在の結城美帆乃には警察関係者を誑かせるほどの能力は無いように見えました。もし仮にあったとしても、結城美帆乃があなたが特定してくれた人物に近付いたのは2~3年は前のはず。その時結城美帆乃はまだ高校生です。さすがに高校生が警察関係者相手をだませるほどの対話力と度胸は身に付いていないでしょう」

「なるほどねぇ……」



良くそこまで思いつくものだ。話の腰を折らぬよう蘭はそう頭の中で呟く。

携帯電話からまた淡々と黒鴎の声が届く。



「そして結城美帆乃は付き合ってくれていたというその人物の配偶者を始末したと言っていました。また、そのせいで利用していた人物が「壊れ気味」になり困っていると。結城美帆乃の性格では用済みになったならすぐにでも切り捨てたいと思ったはず。ならその人物が配偶者を亡くしたショックで、「壊れ気味」になったのはおそらく1年以内。配偶者の死はそれよりも前でありそしてニュースになっても事件性は低い自殺、保険金もついでに貰っておくなら事故死が望ましい」

「……」



ここまで来ると感嘆の一言しか出てこない。

こいつの頭の回転はどうなっているのだか。だがここまで的確に言われると逆に説得力がある。



「どうですか?疑問点でもありますか」

「まったくありません。やっぱ黒鴎、あんたはすごいよ」

「褒めても何も出ませんよ」

「素直じゃないわね―。まあアンタの話を聞いた限り、この男で間違いないと思う。結城美帆乃の情報と一緒に入れておくけど、一応説明しとくわね。黒鴎、あんた小説は読む?」

「あまり読みませんね。夏目漱石や森鴎外などの有名どころは読みましたが」

「まぁ、そんなこったろうと思ったけどさ」



出て来たラインナップを聞くとその有名どころを読んだというのは、つまり学校などの教科書で読んだレベルではないだろうか。

そう蘭が言葉を最初に添え、報告を始める。



「ペンネーム『佐々木よしかず』でミステリ小説家として活動。本名は笹木義一(ささきぎいち)。年齢は39。家族構成は妻のみで、子どもはなし」

「その方の作品は読んだことがあります」

「え?」

「本格ミステリながら、ユーモアを交えてとても丁寧な文章を書かれていた印象でしたね」

「うわ―……名前どころかほとんど知ってるじゃない。意外だわ、あんたが小説なんかを読もうなんて心境になるなんて」



蘭は素直に驚いた。

ただそれもすぐ黒鴎によって否定される。



「枢木君に勧められて読まされましたからね。ここがいいだのと中身の話を振ってきますし、それに読まないと怒るんですよ」

「……」



黒鴎ではない、逆に枢木の方が凄いのか。あの仕事馬鹿に小説なんて無駄なもの(黒鴎本人談)を読ませるだなんて。

蘭はそう思い直しておいた。



「意外なとこに人気があるものね、まあそんなことはいいのか。現在では結構名を知られている笹木氏だけど現在は活動を休止してる。理由を事務所側は伏せてるようだけど、どうやら精神科医の下に通ってるみたい。多分うつ病の類じゃないかしら。そして笹木氏の妻、悠子だけど……今年の春先に自動車事故に巻き込まれて亡くなってる。笹木氏が病院に通い始めたのは悠子が亡くなってからそこまで時間を空けてないみたい」

「事故内容は?」



携帯電話の向こう側からそう促された。

それを合図に蘭はファイルから、ベットに出ているのとまた別の紙を取り出す。今度はパソコンのワード機能で要約したようなものをではない。新聞の切り抜きを印刷したものだ。

そこには大きく、無残に破壊された2台の乗用車が折り重なるように電柱にもたれかかっている写真が目立っていた。



「普通乗用車が時速100キロ以上を出して信号無視をして交差点内に侵入、一度軽自動車に接触。接触後はスピードはそのままに対向車線を走っていた軽自動車に衝突、そして信号待ちをしていた女性を巻き込んで最後は電柱に衝突し止まった」

「……一時期ワイドショーで大きく取り上げられていましたね。最初に接触した軽自動車に乗っていた人たちは軽傷でほとんど問題はありませんでしたが、乗用車を運転していた男性ドライバー、軽自動車に乗っていた家族、信号待ちをしていた女性は全員死亡」

「そう。結果、5人の死者を出す死亡事故に発展したわ。そして信号待ちをしていて巻き込まれ死亡した女性、その人が佐々木悠子よ」

「結局事故原因は乗用車を運転していたドライバーの信号無視と警察は断定し、被疑者死亡のまま書類送検というところで報道は収まりましたね」

「ええ」



報道ではそうである。しかし、未だになぜ男性ドライバーが100キロを超えるスピードを出していたのかわかっていない。そう、本当の事故原因は解明されていないのだ。

男性ドライバーが居眠りをしていた、わき見をしていたと当時言われていた。だがそれにしてはブレーキ痕も見つからず、不審な走行をしていたという証拠もない。

否応なしに薄ら寒くなる結末である。



「それで?」

「……はい?」



それで?とは。

蘭の中で嫌な予感が平気で頭を横切っているが、追い出す努力をしてみる。だがそれも無駄な足掻きだったようだ。



「あまり驚くべき情報はなかったように思われますが、以上ですか?」

「あー……現在情報収集に鋭意活動中でして、そのー」

「蘭」

「うあー……以上です」

「……はぁ」

「ちょっとちょっとちょっとぉ!!そこでため息とかないんじゃないの!?あんたに頼まれた今のことだけでも結構頑張った方よこれ!いろいろ身動きしにくい状態だったんだからしょうがない!大っぴらに動いてたら今度こそ刑務所に入れられるっての!」



ベットの上で蘭は携帯に向かって大声で叫んだ。それも立ちあがって。

いくら自分の失敗とは言え今の蘭は警察に疑いをかけられている状態なのだ。大きく活動するとすぐに目をつけられ今度こそ刑事が本格的に動き出してしまう。そんな中での情報収集だったのである。

水面下で様々な苦労があったのだ、労いもなければ怒るのも当然だろう。



「失礼しました。今のは言葉のあやです、気にしないでください」

「気にするわ!!」

「ありがとうございます」

「へ?」

「ここまで調べて頂いてありがとうございます。引き続き調査をお願いします」



先ほどまで大声でいきり立っていた蘭だったが、急に拍子抜けしたように茫然と立ち尽くしていた。まさか素直にお礼を言われるとは思っていなかったようだ。

蘭の言葉を待っているのか、電話の向こうからは何も音は伝わってこない。ずっと立っているのもおかしいので、またぺたんと座りこむ。



「……精一杯やらせていただきます」

「お願いします」



黒鴎、素直すぎて気持ち悪い。

そう率直に思ってしまった蘭である。そしてそれを、わざわざ心に秘めて墓場まで持って行くこともないので。



「ちょっとどうしたの黒鴎。嫌に素直じゃないの。何か変なんもんでも食べた?」

「おかしいですか?」

「だいぶ」

「……変なものは見ましたね」

「見た?」

「先日、蘭が送ってきたでしょう」



変なものを見たという言葉で蘭は少々考え込んでいたが、黒鴎がすぐに告げてそれはすぐに無くなった。

そしてむしろ、蘭の中で燻っていた疑問が広がり始めた。



「あれね。かわいく出来たでしょう?」

「ええ、まぁ。本人はいたく怒っていましたけどね。あとメイクの落とし方が分からなくて大変だったと愚痴っていました」

「あ、クレンジング渡すの忘れてたや。今度謝っとく。……ねぇ黒鴎」

「はい」



少し、言うのを自身の中で躊躇する。自然と携帯電話を持つ力が強まった。



「………『ツカサ』の名字って、何だった?」



随分長く待っていたような気がするが、彼が告げたのは短い一言だけだった。



「『枢木』です」



携帯の向こう側からは窓を開けたのか、風が音を主張する。

ホテルの室内は相も変わらず、オレンジ色のままのっぺりと佇んでいた。

このファイル8は大分長くお付き合いいただきまして……。



そして謎を定義しておきつつ放置です。今後の展開で拾えるかな、正直不安な旭日です。



ここまで読んで頂きありがとうございます!

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