「十一撃目。」到着
おあいお
頭が痛い、眩しい、ここでやっと自分の目が覚めたことに気づく。
頭が痛いのは硬い馬車の床に寝転んで居たからからだろう、眩しいのはどうやら馬車が道を曲がった様で御者の方から光が差し込んだせいだ、
硬い床に寝ると起きる独特の痛みを腰と肩に負いながら起き上がる
「痛ってぇ…」
「ん?おきたのか?」
御者の人が確認を取る様に尋ねてくる、
「ああ、はい、おかげさまで」
「そいつはよかったな、連れにも知らせといてやるよ」
御者の男はそう言うと馬車の外に話しかける、
「おい!連れが起きたぞ!」
「なんだと!」
開口一番に馬車に乗り込むのはゼノア、きっと仲間思いで苦労人なんだろう、
その後もアイシスにアイルが入ってくる、ミリヤは昼の盗賊の件で横で寝ていた。
「気分はどうですか?」
「ああ、大丈夫だ、少々身体が痛むが、」
「なんてったって手の平に矢が貫通して肩から矢を生やし背中は矢が肋骨の間でギリギリで止まっていたからな、流血も酷かったし」
ゼノアが心配そうに怪我の具合を説明してくれる、するとアイシスが
「ありがとう」
「ん?ああ、」
居たのか、という言葉を飲み込んで目を向ける、すると帽子を脱ぎ青い可愛らしいつむじこちらに向けた、
『何か発射すんのかね。』
『黙ってろ』
「本当に感謝してる、何かお礼をしたい」
「いらねーよ、子どもが気にするんじゃない」
「子どもじゃない、16だ、」
「そりゃ悪かったな、俺は18だ」
その言葉を聞いてか周囲が目を丸くする、
…まあ知ってたが、
「本当に18なのか?!、アイルと同い年じゃないか!」
「僕はゼノアと同じくらいだと思ってたよ」
なるほど、
「ゼノア、お前今25前後だろ」
「?!、ああ、そうだが…」
「やっぱりか…」
こっちの世界は体は西洋系の特徴があるから俺の老け顔ももしかしたら普通に見えるかもしれないという期待があったんだが、
『そんなこともなかったね。』
ケラケラと笑い声が頭に響く、
「とにもかくにも私はヨーヘイにお礼がしたい」
帽子を被り直し、キリッと幼さの残る顔でこちらを見つめる…と思いきや顔を紅くして下を向くアイシス、
これはまさか、
『彼女。惚れてるよ。』
…いや、俺は勘違い野郎にはならない、第一今まで一度も色恋沙汰をしたことが無いんだぞ、俺は
『いや。昨日君が助けた時彼女の表情は恋する乙女そのものだったぜ。直ぐにズキュンってわけじゃ無いがあと一押し二押しすりゃ落ちるんじゃねーの?。』
…まあいいどっちにしろ今は意味のない事だ、
「…礼と言われてもな」
彼女を見捨てる選択肢もあったわけで、そう考えると後ろめたいというか、
『結果が大事なんだよ。君はその選択肢を選ばなかった。それで十分感謝されるべきであるよ。』
『…そうか』
ありがたい、少々あれに関して心苦しいとこもあったのだがそう言ってもらえると楽になる
「なんでもいい、私にできることなら何でもする」
『じゃあ体で…』
ドタマぶち抜くぞ、
「まあ、アイシス、感謝の言葉をもらえりゃそれで俺は十分なんだよ」
「アイスでいい、親しい人はそう呼ぶ、それじゃあ私の気持ちが落ち着かない」
周囲の皆はそれぞれの反応をしている、ゼノアはにやにやと、アイルは生温かい目をしてる、いつの間にか起き上がっているミリヤは驚いて目を丸くしていた、
「あ、ミリヤ起きてたのか、」
「ああ、だが驚いたな、あの無口でシャイで人見知りのアイシスがこうもはやく心を許すとは」
「ん?ミリヤは渾名で呼ばないのか」
「ああ、なんかそういうは苦手でな」
自分で自分の気難しさに苦笑するミリヤ、なんかかっこいいなこの人
アイスの後ろではアイルとゼノアがこそこそと話している
「どう思うアイル?」
「多方当たりでしょう、アイスは結構おじさん好きのとこがありますし」
「だよな、じゃあおそらくアイスが強情なのも…」
「彼との何か繋がりが欲しいんでしょう、不器用ですが」
「俺は冒険者やハンターなんていつ死ぬかわからん職業だからな」
「一夜限りの関係もありと」
「だがアイスはまだ16だしそういうのははえーと思うんだよ」
「そうですね、僕としてはチームが崩れるのが一番の不安ですし」
「うるさい、ふたりとも、私はそんなんじゃない!」
怒りながら杖で二人を叩くアイス、アイルは間合いを取り、ゼノアはそんなもん効かんとばかりに杖を食らっていたが杖が鼻に当たり悶えてる
「ぐおお…」
怒りながらそっぽ向くアイス、そしてこちら向き直り、無言になる、
「…」
「じゃあまた今度会った時に飯でも奢ってくれ、」
「…わかった、でも助けられることがあればいつでも言って欲しい」
「まあ、おいおいな」
こちらの“また今度”という言葉に満足したのか、ここで話に一区切りがつく、そこでアイルがこちらに居住まいを正して話しかけてくる
「ヨウヘイさん、この度は仲間の命を救って頂きありがとうございました」
「お、おう」
アイルの言動に少し動揺しながらも返答する、
「件についてはアイシスから聞いてます」
「ああ、別にいよ、どうせ礼とか言い出すんだろ?」
「はい、そこでなんですが、これをどうぞ、」
「なんだこれ?」
渡されたのは小さな青緑色の石に無造作に紐が絡めてある不思議な物だった、
「通信石です、三十秒程度しか話せませんが、何か有れば連絡ください、使い方は話したい相手を思い浮かべて強く握るだけです、一度使うと3日ほど使えなくなりますので注意してください」
「へえ」
「何か有れば最優先で向かいます、」
「まあ使うことがなければいいんだがな」
「そうですね」
苦笑するアイル、ちょいと失礼だったか、
「なんにしろありがたく頂くとしよう」
その後しばらくすると御者の人が目的地であるミラルの町が近いことを伝えてくれる、確かに前方を見ると町の影が見える
そして俺達はミラルについた
「ここがミラルの町か」
石造りの町並みで町を囲む壁もしっかりした石でできている、
王都との違いは大きな建物がないことか、
…いや、町の中央にちょっとした城のようものがある、おそらくこの町を統治している者の屋敷かなんかだろう、
あの村を見捨てて私腹を肥やしているクソ野郎の屋敷だ、
…襲撃するか…?
あの曲がりなりにも王の住む城を余裕で抜け出せた俺だ、能力を使えば余裕で…
『思考が短縮的になってるぜ。洋兵。』
『…なんだ?』
『あの屋敷をぶち壊したところで何も変わらんよ。町を見た感じ。ここの統治は上手くしてるみたいだし。何より。今は国から出る事はを優先すべきだ。騒ぎは起こすべきじゃない。』
『…そうだな』
確かに、町には活気がある、皆笑顔で生きている、無理に騒ぎ立てるべきじゃないな、
『それにしても、こんなにいい町ならその領主も結構まともだと思うんだが…』
重税を課してその上切り捨てるなんて事をするような領主ならもっと酷い町だと思ったんだけどな、
『選民思想と言うべきか。身内には甘くしてるんじゃない?。君の世界の人間だって。同じ人間なのに黒人だとか白人だとかで分けたり。ユダヤ人ってだけで差別した時もあるし。古代じゃ市民権を与えられなかったり。今みたいに辺境の人間から一方的に搾取する時代もあったからそれと一緒じゃねーの。』
納得
どうやらギルドの依頼達成報酬は依頼主からもらえる証明書と自分のギルドカードさえあれば他のギルドで受け取ることができるらしいのでアイル達と報酬を受け取りにいく、
ミラルのギルドは王都と違い、まさに荒くれ者や、全身鎧の人間など、いかにもな人種が集まって居る、
まず最初にアイルとアイスが入る、この時点で中の男達は場違いだと驚いた顔をしたりして居たが後ろからゼノアとミリヤと俺が入ると納得したような顔になる、
「毎回ギルドに入るたびに憂鬱になりますね」
「完全に俺が保護者みたいに思われてるんだろうな」
アイルとゼノアが話して居るのを聞き流しながら受付に向かう
「依頼を達成した、ギルドカードと証明書だ、」
「はい、確かに頂きました、お疲れ様でした、では依頼達成報酬の30000ガル、大銀貨3枚です」
報酬を受け取る、すると受付の人がギルドカードを渡すと同時に
「ヤマシロ様はFランクでしたので、危険性の有る依頼を成功されたのでランクをEに昇格させて頂きます」
Eと書き換えられたギルドカードと報酬の大銀貨3枚を貰う、昇格するとはな…予想外だ、おそらくFランクは戦闘をこなせるかどうかの境目で戦闘ができない人達はFランクの依頼を受ける形をとっているんだろう
受付で報酬を貰ったあと、クローベアーの爪を買い取ってもらう、
「ク、クローベアーですか…」
クローベアーはやはり上位の魔物になるのだろうか、確かに向こうの世界でも熊は強い部類の生き物だったが、
「25000ガルです、お受け取りください」
少し時間がかかったが報酬を受け取ったあとアイル達と合流する、
「すまんな、皮でえらく稼がせてもらったぞ」
「ああ、そりゃよかったな、俺は獣の皮なんて剥げないから気にしなくてもいい、」
「そうか、すまんな」
「…ところでゼノア、クローベアーって実際どのくらい強いんだ?、俺の故郷にはあんな魔物がいなくてな、結構な額を貰ったんだが」
「ん?ああ、一瞬だったもんな、クローベアーはCランクのモンスターだからな、Cランクの冒険者のパーティなら余裕を持って狩れるだろうな」
「?、Cランクなら1人でも狩れるんじゃないのか?」
「ああ、狩れるだろうな、“多分な"」
ゼノアは真面目な顔をしてこちらを見直す、
「だが“多分"だ、不確定な要素は冒険者は避なければいけない、いつだって死ぬ奴は自分の力を理解してない奴だ」
「…大丈夫だ、身の程知らずのような真似はしないさ」
おそらく、クローベアーには銃器が無ければたちうちできないことも理解はできてる、
「まあヨウヘイは長生きしそうでよかった」
安心したような顔を見せるゼノア、 そういえば一つ宿のことで気になって居たんだが、聞いてみようか
「ゼノアはどこに泊まるかもう決めてるのか?」
「俺たちはいつもこの町に来たら泊まってる宿があるからそこに行くつもりだが、決まって無いなら一緒に来るか?」
「すまんな、助かる」
「いいってことよ、若い奴が気にするんじゃ無い」
「ありがたい、じゃあ今から向かうのか?」
「ああ、無いと思うが部屋が無くなっても困るしな」
ゼノアが歩きだすと他のみんなもギルドの出口に向かう、それを見て俺もギルドを出てゼノア達についていく、
「ここだ、」
着いた宿屋は石造りの王都で泊まった宿より一回り小さい宿だ、
宿の中はさっぱりとして小綺麗になってる、
「5名様ですか?」
「いや、四人と一人だ、勘定は別にしてくれ、部屋を三つくれ、」
「?、三つ?」
「この宿は2人部屋しかないんだ、もちろん1人でも泊まれるし気にするな」
「2人での宿泊は銀貨5枚、1人は銀貨3枚です、」
「大丈夫か?」
「ああ、問題ない」
銀貨3枚を払い部屋に向かう、部屋は本来2人用のようでベッドが二つ、窓際に机と椅子が二つ、そんなに広くは無いが泊まる分には問題ない、ビジネスホテルのようだ、
荷物…といってもほとんど無いのだがとりあえず不必要なものを部屋に置き、財布と鍵に袋を持って宿を出る、その足でギルドに向かい、次に行く町を決め、旅の準備を整えるために買い物に出かける予定だ
そして活気のある町並みを歩き、ギルドに向かったのだが…




