泉 / 魔法 / 貴方の心臓が欲しい / 訃報 / 逢魔が時
《 お題 》
「夕方の坂道」で登場人物が「嫉妬する」、「糸」という単語を使ったお話を考えて下さい。
【泉】
赤い残照に染まる緩やかな坂道に、こぽこぽと柔らかな水音が近づいて来る。
神々の好む美酒さながらの、金に輝く揺れる水面。
静寂の中に湧き出る尽きぬ恵みに、訳も分からず嫉妬を覚えた。
坂の下とはかけ離れたこの断片。
絡まり合う糸とは無縁の断絶した一瞬の永遠。
この世の高みもやがて闇に包まれる。
《 お題 》
今日のお題は……『紅茶』『妖精』『受難』 Lets 創作
【魔法】
夜、就寝前の紅茶に睡眠薬代わりのブランデーを一滴。
眠りの妖精の一振りの杖に酔い、導かれるまま漕ぎ出すシーツの海、冒険の旅。
数々の受難を潜り抜け栄光と地位を手に入れる。
時よ止まれ、この瞬間に。
眼に映るは灰色の天井。
寝返りを打ち、捩れた枕に顔を沈め。
差し込む光を恨む、ため息の朝。
《 お題 》
『貴方の心臓が欲しい』をお題にして140文字SSを書いてください。
【貴方の心臓が欲しい】
退屈で死にかけていた僕の前に立ち、そいつはそっと耳打ちした。
「僕を救ってくれるなら」
そいつはゆっくりと小首を傾けにっと微笑んだ。
それからの僕は退屈とは無縁。
日々の興奮に激しく脈打ち、この世の快楽をこれでもかと享受する。
もう充分だ!と叫ぶまで。
美味しく肥大した心臓がこの悦楽の代償。
《 お題 》
〔こんなにも、遠い〕です。〔二次元ネタ台詞の引用禁止〕かつ〔「歩く」描写必須〕で書いてみましょう。
【訃報】
夜中に届いた訃報を知らせる事が朝一番の務めだった。
夜明けと共にこの国を震撼させる事になる、
彼女の伴侶が乗り合わせていた海難事故のニュースを。
数ブロック先の彼女の家に足取りも重く向かう。
想像の中で、泣き濡れる彼女。
慰める僕。
僕の腕を擦り抜け彼を想う彼女は、朧で儚くこんなにも遠い。
《 お題 》
『途絶』と『夕闇』を使って140字SSを書きましょう!
【逢魔が時】
広がる血飛沫に塗りこめられ、夕闇の中、僕は立ち尽くしていた。
赤に切り裂かれた意識の途絶に、
何故自分がここにいるのか判らなくなった。
生温い風に揺らぐ足下。
捩じれる視界。
高い金属音に似た耳鳴り。
いつしか落ちた夜の帳が生臭い夕暮れを追い払い、
柔らかな闇の中取り戻す静寂。
再び動き出す時。




