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第8話

★戦国武将×偉人★

混沌極める乱世で、少女が運命に抗うIf戦記。予測不能な異世界戦国時代の幕開け!

 あの日の宴から数日が経過した。

 人間の順応力とは恐ろしいもので、私は既に戦国に似たこの世界に適応しつつあった。

 そう、初陣の時が来たのだ。

 勿論、人を斬ることに抵抗はあり、実戦経験の浅い我が身だ(初陣だから当然だが)。その事を考慮してくれたのか、後詰めを賜り、今は三郎殿と小高い丘の上で戦場全体を見渡している。


「……凄まじいな」


 思わず感嘆の息が漏れた。


「はっ、驚いたか? あれが大友の雷神と風神。宗茂様のご両親だ。見て学べるような戦じゃねぇけどな」

「その異名はこの世界でも知れ渡っているのか。いや、見事としか言いようがない」


 隣で戦況を見守っていた三郎殿が、誇らしげに鼻を鳴らすが、彼の言う通りだ。


◆◆◆

【立花道雪】【高橋紹運】

大友家を支えた双璧と呼ばれた武将。それぞれ"雷神""風神"の異名を持ち、大友家最盛期に防衛・攻略における中核を担っていた。

忠実では高橋紹運は宗茂の実父。立花道雪は養父。

◆◆◆


 正直、道雪殿は軽薄な面がある印象だったが、戦場における彼は別人のようだ。

 床几しょうぎに腰掛けたまま放たれる指示は、戦況を完全に支配するほど的確で一切の無駄がない。

 そして何より――。


「轟けッ!雷切りぃ!!」


 道雪殿が太刀を振り下ろした瞬間、雲一つない青空から白刃のような落雷が降り注ぐ。

 轟音と共に、密集していた敵小隊が文字通り一瞬にして壊滅する。

 指揮官としての卓越した軍略と、天候すら操り敵兵をなぎ倒す圧倒的な力。まさに言葉通りの"雷神"だ。

 聞くと見るとではこうも違うとは。


 そして、紹運殿も"風神"と呼べるに相応しい。本陣から動かず指揮を取る道雪殿とは対極的に、疾風のように敵陣の奥深くを駆け回っている。

 残像すら置き去りにする速度で陣形を撹乱していく。彼女が掻き回して逃げ場を失った敵兵の頭上に、再び道雪殿の無慈悲な雷が落ちるのだ。

 雷神と風神。二人の連携は、戦というより一方的な蹂躙劇だった。もう勝敗は決しただろう。


 チャキ…チャキ…


「初陣の護衛ってことで後詰めに回されたが、こりゃ俺たちの出番はなさそうだな」


 三郎殿がどこか安堵したように息を吐く。

 本当に見事だ。


 チャキ…チャキ…


「ん? どうした、新入り。随分落ち着かねぇみてぇだが?」


 言われて初めて気がついた。私は無意識のうちに、腰の刀の鍔鳴りをさせていたらしい。


「あ、あぁ、大事ない。三郎殿、あの御仁は? 一際小さいが身体以上の戦斧を振り回されていたな」

「ならいいが。あの方は道雪様と同じ異界出の確か"ドワーフ"とか--」


 あの日、村で初めて人を斬った時、私はひどく怯え、足の震えが止まらなかった。紛れもなく命を奪った罪悪感に、吐き気すら催していた程だ。


 それなのに。


(『雪夏。お前は常に前を行きなさい。その為に力をつけるのです』)


 母の声が頭に響くようだ。

 戦場を見ていると頭の中で自分が刃を交える想像が膨らんでしまう。

 敵陣へどう切り込んで行くか、あの技をどう受け流すか。


「……行きたい」


 無意識に、声が零れ落ちたように思う。


「……聞いてるか、新入り。……戦場の空気にあてられたか?」


 隣で控えていた三郎殿が、どこか薄気味悪いものを見るような目で私を見つめていた。


「お前、今--」

 三郎殿が何かを言いかけた、その時だった。


「三郎、雪夏!」

 

 宗茂殿が馬を駆けて颯爽と現れた。

 青空も相まって何とも絵になるお方だ。


「どうした!? なんかあったのか!?」

「あぁ!火急の知らせだ!急ぎ本陣へ戻ってくれ!」

ご覧いただきありがとうございます!

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