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第7話

★戦国武将×偉人★

混沌極める乱世で、少女が運命に抗うIf戦記。予測不能な異世界戦国時代の幕開け!

「では、状況を整理させていただこう」


 私は小さく咳払いをした。 

 立花道雪殿と、高橋紹運殿。そして私の主である立花宗茂殿に、側仕の三郎殿。ついでに巻き込まれた十吉くんまで。

 立派な幕舎の中央で全員が膝を付き合わせる。正座だ。


「まず、道雪殿」

「う、うむ」

「貴方は大友家を支える宿老であり、異世界の『エルフ』という種族で間違いないな?」

「いかにも! 我が美しき耳がその証明――」

「手短にお願いしたい」

「……はい。エルフ族の長をしてました」

「なるほど。私と同じで気付いたらこの世界に?」

「いかにも!そう、あれは嵐の夜--」

「興味深いが今は結構」

「……はい」


 総大将であるはずのエルフが、シュンと口を閉ざす。


「次に紹運殿。貴方が宗茂殿の実の母君であり、先程から一言も発していないが……道雪殿とはご夫婦ということで間違いないか」

「……(腕を抱く!)」

「はっはっは。照れるじゃないか、お理」

「だから道中で俺が『おしどり夫婦』って言いかけたんだよ」


 横でボヤく三郎殿を軽く手で制し、私はこめかみを揉んだ。


「つまり、道雪殿が異世界からの転移者でエルフ。紹運殿が転生者で前世は恐らく私と同じ世界。で、お二人の間に生まれたのが宗茂殿ということか」

「そういうことだね。驚かせてすまない、雪夏」


 宗茂殿が申し訳なさそうに眉を下げる。


「……なるほど」


 宗茂殿と同様、私の知る人物像とは少し、いや、だいぶ異なってはいるがお二人の佇まいから相当の実力者であることは疑いようがない。

 まさに歴戦の勇士だろうな。

 私は深く息を吐き、自らも居住まいを正した。


「まず、私の素性についてだ。十吉くんには『魔物退治の心得がある』と説明したが、あれは嘘なんだ。すまない」

「えっ?」

「私も道雪殿と同じ……別の世界からやってきた『転移者』だ。魔物という存在と戦ったのも、あの時が本当に初めてだった」


 それを聞いた十吉くんは、目を丸くした直後、怒るどころかさらにパァッと表情を輝かせた。


「は、初めて!? あの山の主ば、初見で倒したと!? 姉ちゃ、やっぱり凄かぁ!!」

「なるほどな」


 純粋に感動する十吉くんの横で、三郎殿が深く頷いてみせた。


「人を斬るのは始めてでも、元々は魔物ではなく対人のために鍛えた剣術だったか。通りで手慣れてはいるわけだぜ」

「いかにも。母から叩き込まれたのは、どこまでも人との立ち合いを想定した剣だ」


 私がそう肯定すると、道雪殿が腕組みをして首を傾げた。


「うーむ。異世界から来た剣士ということは分かった。……で、結局『じぇーけー』って何なんだ?」

「それは私の世界の身分……というか、学生のことで――」

「――っっっ!!!(バタバタバタバタッ!!)」


 私が説明しようとした瞬間、紹運殿が残像を残して動き出した。

 目にも留まらぬ速さで幕舎の奥から大皿を運び出し、湯気を立てる猪の丸焼き、山盛りの果物、なみなみと注がれた酒器が、瞬く間に私たちの前に並べられていく。


「えっ? あの、紹運殿?」

「まぁよい! 堅苦しい身分や素性の話など今は後だ!」


 道雪殿が私の手を取り、満面の笑みで立ち上がらせた。


「我が愛するリヒトの命を救い、この陣へ来てくれた。それだけで十分すぎる功績! お嬢さんはすでに我ら立花の大切な家族だ!!」

「か、家族……!?」

「…………!(親指をグッと立て、私の口に肉の串焼きを突っ込む!)」

「んぐっ!?」

「さあ、食え! 飲め! 今日はリヒトの帰還と、新たな家族の歓迎する宴じゃ!!」

「わーい! お肉たい!!」

「おいガキ、お前はこっちの野菜も食え」

「ええ〜」


 呆気にとられる私をよそに、幕舎の中は一瞬にして騒がしくも温かい宴の場へと変わった


 家族。

 私の母は、七歳で私を山に放り込み、少しでも隙を見せれば容赦なく木刀を叩き込んでくるような、常軌を逸した厳しさを持つ人だった。

 しかし、その指導は常に的確であり、一切の無駄がなかった。私がどんな環境でも自分の身を護り、生き抜くことができるよう心血を注いで鍛え上げてくれた、心から尊敬すべき武の師匠でもある。

 私にとっての家族の愛情とは、そうした過酷な鍛錬と張り詰めた緊張感の果てに、ようやく得られるものだと思っていた。


 それなのに。

 こんなにも無条件で甘い愛情と、騒がしいほどの歓迎を向けられたことなど、私の人生で一度もなかった。


 常に気を張り詰めていた私の心の奥底で、冷たく固まっていた何かがポロポロと解けていくのを感じる。


「言っただろう? 少し賑やかすぎるけど、悪い人たちじゃないって」


 隣で宗茂殿が、おかしそうに笑って盃を傾けていた。


 私は口に突っ込まれた串焼きをゆっくりと咀嚼しながら、どうしようもなく緩んでしまう頬を必死に抑えていた。

ご覧いただきありがとうございます!

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