第9話
★戦国武将×偉人★
混沌極める乱世で、少女が運命に抗うIf戦記。予測不能な異世界戦国時代の幕開け!
「ガハハハハ! 大儀であった道雪、紹運! 見事な手際よ!」
陣幕を震わせるほどの豪快な笑い声が響いた。道雪殿や紹運殿を控えさせ、小さい床几が悲鳴を上げてるように一人の巨漢を座らせている。
「(おい、宗茂様。お前、火急の知らせって……)」
「(お館様がわざわざお越しになっているんだ。火急の知らせ、だろ?)」
宗茂殿は無邪気に笑う。
しばらく一緒に過ごして分かったが、宗茂殿はかなり悪戯好きだ。大体、こう見えて純真な三郎殿が一杯食わされてしまう。
「(お館様、と言うことは……)」
「あぁ、この方が我らが仕える『大友宗麟』様だ」
◆◆◆
【大友宗麟】
豊後国を拠点とする戦国大名。優れた外交能力と南蛮貿易による経済力で大友家を強大にし、「九州の王」とも呼ばれた。
◆◆◆
私の知見では文化人寄りの大名というイメージだったが……。
……でかい。とにかく、でかい。
はち切れんばかりの大胸筋、丸太のような極太の腕。南蛮渡来の派手なマントを羽織ってはいるものの、その下は筋骨隆々のマッシブでストロングな筋肉の塊だった。
う、美しい……。
「秋月軍の残党を完全に殲滅できたのは大きい! 次はいよいよ、肥前のぶ、たじゃなくて熊……龍造寺討伐に本腰を入れるぞ!」
「いよいよか。一番槍は我ら立花が承ろう」
道雪殿が恭しく頭を下げる。
九州三強の一角【龍造寺家】か。今、宗麟殿が豚と言いそうになっていたが、やはり巨漢であるのかな?
「勿論、そのつもりなんだがのう。"毛利"が少し国境で何か動きがあるようなのだ。龍造寺討伐の際に横入りされても面白くない。道雪か紹運に睨みを効かせて貰おうと思っておったが……」
「……………(ブンブンブン)」
紹運殿が大きく左右に首を振り、道雪殿を掴んで離さない。
「はっはっは、お理。寂しくなったか」
「全く……最近、益々離れんな、お前ら。だが、他に任せられる者がなぁ」
「問題はあるまい、宗麟。私とお理なら僅かな手勢でも毛利を抑え込めよう。本隊は愛する息子、リヒト--いや、宗茂に託す」
「おぉ!それは良いな!宗茂の実力はお前らの子だけあって折り紙付きじゃ!よし、宗茂!先陣の誉れはお前に任せる。見事に龍造寺の土手腹に風穴を空けてやれ!」
「はっ!ありがとうございます!」
おぉ!宗茂殿はどのような戦をするのか、楽しみだ。私も気を引き締めなければな。
「ん? 宗茂の横にいる嬢ちゃん。見慣れぬ顔だな。嫁をとったんか?」
「そうなのだ!綺麗な娘だろう!?」
道雪殿が前のめりに同調をはじめる。
「ち、違います!彼女は一ノ瀬雪夏。先の討伐の折に縁あって私の剣となり、立花陣営に加わった者にございます」
「そんな否定せんでも良かろう?お前も嫁の1人や2人いい加減とれ。にしても、宗茂の剣とな。あの立花陣営の荒波に揉まれて平然としているとは、中々に見込みがありそうじゃないか!」
「とても良い娘なんだよ、宗麟!な、お理!」
「………………(コクコクコク)」
紹運殿が激しく首肯するが、おも痒いな。これは恥ずかしいぞ……
宗麟様は立ち上がり、重たい足音を立てて私の前までやってくる(本当に地響きが鳴ってるようだ)。ニカッと太陽のように陽気な笑みを浮かべた。
「ガハハ! 良い目だ! 次の龍造寺戦では、宗茂の為に、存分に励んでくれ!」
「あぁ。期待していてほしい。」
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「……ふぅ。お館様は相変わらずパワフルだね」
宗茂殿が小さくため息をついていた。
本当に嵐のような御仁だったな。宗麟殿が去った今は本陣が物静かに感じる。将兵たちはそそくさと退陣の準備を進めているのにな。
「大丈夫かい、雪夏。先の戦いで戦場の空気は感じれたと思うが、龍造寺は強力な武将を多数抱える厄介な相手だ。いかに君の腕が立つとはいえ、本格的な戦となれば……」
「何を心配そうな顔をしている、リヒト!」
私の返答より早く、背後から道雪殿が宗茂殿の背中を叩いていた。
ふふ。雷のような衝撃だな。
「雪夏が危なくなったら、お前が身を挺して護ってやればよいだけの話よ! 力なき者を護る、それが男というものだ! ガッハッハ!」
道雪殿は宗麟殿の真似をするように豪快に笑う。
「痛っ……父上、叩く力が強すぎます……」
「お言葉だが、道雪殿」
私は真顔で振り返り、言い放った。
「私は宗茂殿の『剣』だ。私が先陣を切り、前に立つべきだろう。必ずや、宗茂殿を護ってみせるさ」
たとえ千の軍勢が立ち塞がろうとも。
「はっはっは、そうか。だが、あまり無理はするなよ? お前だって、三郎だって私たちからすれば大切な子だ」
「…………(コクコクコクッ!!)」
「しかし--」
「分かっている。足手まといになりたくないのだろ? 主を護ろうとするその気概は素晴らしい。この大役が見事こなせるように努めてくれ」
「あぁ!期待してほしい!」
そうだ。足手まといになるわけにはいかない。必ずや武勲を立てて宗茂殿のお役に立たねば。
この後、三郎殿が浮かぬ顔して何かを言っていたようだが、高揚する私の耳には届かなかった。
「……遊具を前にしたガキみてぇな顔……裏目にでねぇと良いがな」
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