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第5話

★戦国武将×偉人★

混沌極める乱世で、少女が運命に抗うIf戦記。予測不能な異世界戦国時代の幕開け!

 朝靄が晴れゆく中、私たちは村人たちに見送られながら山道を進んでいた。


「重くないかい、十吉くん」

「平気ばい! これくらい、一人前の男になるための修行たい!」


 私の後ろを歩く十吉くんは、背丈ほどある荷物を背負いながらも目を輝かせている。

 昨晩、彼は「自分も村を護れる男になりたい」と同行を志願し、私の初めての『弟子』として旅についてくることになったのだ。

 ふふ、弟子を取るとは偉くなったものだな。


「はぁ……素性の知れねぇ女の次は農民のガキまで抱え込むなんて」

「はは、三郎殿は見かけによらず優しいな。十吉くんに荷造りの手解きをしてくれて感謝するよ」

「うるせぇ。足手まといにならねぇようにしただけだ」

 

 あれだな。三郎殿はツンデレ?と言う奴なのだろう。同級生が話しているのを小耳に挟んだ事がある。素直になれない性格なのだ。

 なるほど。確かに微笑ましくなるとてもユニークな性格だな。


「三郎は世話焼きでね。困ってる人をほっとけないんだよ。いつもありがとう」

「ふん。別に俺の仕事をしてるだけだよ、宗茂様」


◆◆◆

 【立花宗茂】

『剛勇鎮西一』と呼ばれた名将。忠義に厚く、その武勇と人望から、関ヶ原の戦いで全てを失った後に旧領を完全回復させた唯一の大名。

◆◆◆

 

 ここは日本史における『戦国時代』、あるいはそれに極めて近い時代とみて良いだろう。

 しかし、一つだけどうしても腑に落ちない点があった。


「宗茂殿。少し、お伺いしてもよろしいか?」 「なんだい? 雪夏」


 前を歩いていた宗茂殿が、涼やかな蒼眼をこちらへ向ける。見た目で人を判断することはしないが、名前と風貌に違和感がないと言えば嘘になるな。


「昨晩、貴方はご自身のことを『リヒト・ツヴァイン』とも名乗っていた。なぜ、二つの名を持っているのだ?」


 ずっと気になっていたのだ。

 立花宗茂という生粋の武将名に対して、リヒト・ツヴァインという響きはあまりにも異質。おまけにこの出で立ちだ。


「ああ、そのことか」


 宗茂殿はふっと空を見上げ、どこか遠くを見るような目をした。


「雪夏。この世界には時折、全く異なる世界の傑物の『魂』を宿して生まれてくる者たちがいるんだ」

「……異なる世界の、魂?」


 異世界の魂が武将として顕現する世界。

 やはり私が知るただの戦国時代ではなく、異世界転移、という奴か。

 うむ。それの方が腑に落ちるな(非現実ではあるが)


「僕の親たちも、そうした別の世界からやってきた魂を持つ『覚醒者』なんだよ。僕自身にそうした前世の記憶を持たないけれど、親から受け継いだ力と、その『リヒト』という名前をもらっている。立花宗茂という名は、この世界、この時代で武将として生きるための、いわば表向きの役職名みたいなものさ」


 なるほど、と私は頷く。それなら合点がいくな。


「リヒトと呼ぶのは、親や妹……家族だけなんだ。ただ、遠慮なく--」

「承知した。主の役職を呼ぶのは礼儀だろう。変わらず宗茂殿と呼ばせて頂く」

「うーん……」


 宗茂殿は少しだけ困ったように微笑み、それから優しく告げた。


「……そうだね。『宗茂』で構わないよ」

「??」


 少しだけ残念そうな顔をされたか?

 何か粗相をしたのだろうか。


「はぁ……朴念仁」

「姉ちゃ……」

「???」


 三郎殿に十吉くんまで何故ため息混じりで私を見るのだ?

 しかし、立花宗茂か。 

 『西国無双』と称されるほど強くて忠義に厚い、戦国屈指の完璧な武将だ。

 子供心にこう言う御仁に仕えてみたいと憧れていたこともある。(私は所謂歴女?というやつだ)ある種夢見心地だな。

 宗茂殿はまさに理想の"立花宗茂”。

 立花性を名乗っていると言うことはあの雷を斬ったという伝説を持つ『雷神』立花道雪に養子入りしているはずだ。

 実父は岩屋城の戦いで壮絶な最期を遂げた忠義の将『風神』高橋紹運。 歴史に名を残す二人の父を持つまさに戦国の申し子と言える。 


「急にぶつくさとどうした?」


 三郎殿が何とも怪訝な目をしてみている


「ん?なにがだ?」

「なにがだって……はぁ、もういい。なんでもねぇ」

「ところで宗茂殿は綺麗な御髪をしているが、母君似なのか?」

「あぁ、この髪かい?確かに周りの人は皆、黒髪ばかりで少し目立つよね。これは父上の遺伝なんだ」

「紹運殿か。彼が異世界の御仁なのだな」

「あれ?知ってるの?」

「あぁ。私の元居た世界にも立花宗茂と言う人物は存在していてね。歴史上の人物だが。貴方は高橋紹運殿の子で立花道雪殿の下へ養子に入られたのだろう?」

「……なるほど。それは面白いね。今度詳しく聞かせてよ」

「勿論だ。似た歴史を辿っているのなら役に立つ情報もあるかもしれないな」

「だけど、変な話だな。道雪様と紹運様はおしどり夫--」

「三郎」


 宗茂殿は悪戯そうに人差し指を立てて三郎殿の言葉を遮る。何の話だ?


「しかし、紹運殿に道雪殿か……私の時代では有名な武将だ。この世界であっても宗茂殿のように立派な御仁なのだろうな」


 私の言葉に、宗茂様はなぜか少しだけ視線を逸らし、隣を歩く三郎殿も深くため息をついた。


「立派……立派、ではあるのだけどね。少し、君の想像とは違うかもしれない」

「想像とは違う?」

「……いや、会えばわかるよ。もうすぐ父"たち"が拠点としている陣幕に到着する」


 言葉を濁す宗茂殿の横顔を見ながら、私は少しだけ身構えた。戦国屈指の猛将にして、異世界の魂を持つ御仁。

 気を引き締めなければならないな。

ご覧いただきありがとうございます!

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