第5話
★戦国武将×偉人★
混沌極める乱世で、少女が運命に抗うIf戦記。予測不能な異世界戦国時代の幕開け!
けたたましい剣戟の音が鳴り響く天守。
残された私と三郎殿は、美しい絡繰人形――『サツキ』殿と激しい斬り合いを演じていた。
「そらそらそらァッ!」
三郎殿が手に入れたばかりの槍を振り回し、牽制の突きを放つ。
サツキ殿がそれを手刀(文字通り手が刀だ)で弾いた隙を突き、死角へ回り込んでいた私が鞘での重い打撃を叩き込む。
「ちぃっ、やっぱ硬ぇな!」
私と三郎殿は次第に息の合った完璧な連携をみせる。
三郎殿の槍使いはまだ荒削りだが、初めて扱うとは到底思えない。持ち前の身体能力で上手く補っている。完全に私たちがこの場を支配していた。
着実にサツキ殿を防戦一方へと追い詰めていく。
これならいける――!
そう確信した、次の瞬間だった。
「――っ!?」
私の振りかぶった渾身の打撃が、空を切った。
サツキ殿が僅かに上体を逸らし、紙一重で回避したのだ。これは偶然ではない!
「--個体名、雪下(仮名称)。得意武器『刀』」
続く三郎殿の刺突も、彼女は最小限の動きで刀の腹を使って逸らしてみせた。
「--個体名、三郎(仮名称)。得意武器『槍』」
「ちっ!なんだってんだ!」
サツキ殿のガラス玉のような瞳に文字通りに光が点滅した。
直後、彼女の剥き出しの刀身となっていた腕がスライドし、中から現れた複雑な金属パーツが、瞬時に一本の『鋼の槍』へと組み上がった。
「戦闘形態の移行を完了しました。連携を破るに最適な戦闘もーどに更新。対象の排除を開始します」
サツキ殿が鋼の槍を構え、踏み込んでくる。
速い。いや、速いだけではない。
我々の行動パターンが完全に読まれているのか、躱しきることができない。
「くっ!先ほどと太刀筋も動きもまるで別人ではないか!」
演算によって導き出された完璧な槍の突き。その切っ先が、防御を固めたはずの私の死角を正確に抉ろうと迫る。
「くっ……!」
私が回避を諦めかけた、その時だった。
横から突き出された分厚い穂先が、サツキ殿の鋼の槍を強引に弾き飛ばした。
「三郎、殿……?」
「……なるほどな」
三郎殿がなぜか口元に獰猛な笑みを浮かべていた。だが、助かった。
「ありがとう、三郎殿!」
咄嗟に感謝の言葉を口にするが、三郎殿から返答がない。いつもなら短く返事くらいはしてくれるが……
ふと、三郎殿の方を見るとその瞳は、サツキ殿を倒すための闘志ではなく、観察しているようだった。
「槍ってのは、そうやって握るのか。腰の捻りと、踏み込みの連動……へぇ、すげぇ無駄がねぇじゃねぇか」
三郎殿が軽く素振りをする。
まさか……サツキ殿槍捌きを見て学んでいたと言うのか!
「常識的に考えて、理解不能です。」
感情を持たないはずのサツキ殿が、微かに首を傾げたように見えた。
三郎殿が、手にした槍の柄を握り直す。
「ありがとよ。――おかげで、しっくり来たぜ」
瞬間、三郎殿の床が爆ぜるような踏み込み。
サツキ殿の演算すら超え、その懐へと改心の一撃が放たれる。
「おぉ!」
これぞ、日本七槍!見事な槍捌きだ!
「おい、雪下。確かにこりゃ良いな。手に馴染んできたぜ」
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一方その頃。天守から駆け下りた先の、薄暗い城門前。
立花宗茂は、尼子義久の背中を捉え、その首筋に白刃を突きつけていた。
「そこまでだ、義久殿。大人しく縛についてくれないか」
「やれやれ、もう落ち着いたと言うのかい。さすがは西国無双ってところか。ん?異名、合ってるよね?私はそこまで戦国時代に詳しくないんだよ」
命を握られているというのに、義久は飄々とした態度のまま振り返った。
彼は宗茂の刃を気にする素振りも見せず、マジマジとその金色の髪と青い瞳を観察する。
「毛利元就が女だというのにも驚いたが、金髪の戦国武将など聞いたことがないね。……君も、私と同じ『転移者』と言うやつなのかな?」
「 いや、生憎と僕は正真正銘、この世界の住人だよ。この髪はその転移者である父の遺伝だ」
宗茂が静かに答えると、義久は「なるほど」と呟いて、狂気を孕んだ笑みを深めた。
「父親が転移者か。面白いね。君には興味がないと先程言ってしまったが訂正するよ。転移者という君の父親にも会ってみたい者だな」
「父は……死んだよ」
初めて、義久は人間のような表情をみせた。その顔には明確な落胆と悲哀の感情が見え隠れしていた。
「--そうか。私とは"逆"だねぇ……」
「逆……?」
「大丈夫。君が父親に逢えるように私が協力してあげよう。もう一刻もすればだ。私の願いが叶えば次は君だよ」
再び狂喜を目に宿し、義久は低い天井を仰ぐ。
「さぁ、付いてきたまえ!立花宗茂くん!!私の"娘"に逢わせてあげよう!!!」
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