第2話
★戦国武将×偉人★
混沌極める乱世で、少女が運命に抗うIf戦記。予測不能な異世界戦国時代の幕開け!
「では、そこのお二人。絡繰兵の巡回があそこの山間に来る頃です。仕留めてきてください」
月山富田城から離れた国境近くの本陣。戦支度を進める私と三郎殿に向かって、隆景殿が冷たく声をかける。
「あぁ?それも作戦かよ?」
「違います。これは確認です」
「確認? 僕たちの腕を試すと言うことかな?」
早々に喧嘩腰の三郎殿を諌め、宗茂殿が間に入る。危ない。私も問い質す所だった。
「立花宗茂殿。あなたの智勇兼備ぶりは遠く安芸にも届いています。本丸突入の将として、あなた以上の適任はいないでしょう」
史実においても、小早川隆景は立花宗茂を『鎮西一の武将』と高く評価していたという。どうやら、この世界でも同じようだな。
しかし、隆景殿の冷たい視線が、私と三郎殿へと向けられた。
「ですが、そちらの側仕え二人は未知数です。 盾になるだけなら構いませんが、本丸突入という最重要任務において、不確定要素を盤上に置くわけにはいきません」
「おいおい、俺たちを信用できねぇってのか?」
三郎殿が凄むが、隆景殿は表情一つ変えない。
「ええ、全く。ですから、作戦の確実性を担保するための『最終確認』を行います」
隆景殿は扇子で手のひらを叩いた。
「一刻の間に、出雲の山中を徘徊する『絡繰兵』を一体、あなたたち二人だけで潰してきてください。それができなければ、この作戦は白紙です」
◆ ◆ ◆
「斬っても血が出ない! 痛がりもしない! そもそも手応えがない!なんなんだあいつは!?」
私は走りながら、刃こぼれした刀を見て叫んだ。
先程、死角から完璧な一撃を首筋に入れたはずだった。だが、硬質な金属音と共に刀が弾かれ、逆に強烈な反撃を受けてしまったのだ。
「泣き言を言ってねぇで走れ! このままじゃ試験合格どころか、木っ端微塵にされちまうぞ!」
三郎殿の怒号が響く。
「ありえないありえないありえない!! なんで戦国時代に自律型の機械があるんだ!?」
――そして、陣幕へと逃げ帰ってきた、現在に至る。
~~~~~~~~~~~~~~~~~
「--実に、狂った相手ですよ。で、どうしますか?残り半刻といった所ですが」
「はん!あの立花宗茂に仕えるってんだから少しは期待してたが的外れかよ!おい、隆!それならオレと宗茂でいきゃいい!」
その言葉に隆景殿は眼鏡を上げる。
「姉様が本隊を率いないのであれば、被害は当初の見積もり通りになりますね。そこのお二人に本隊へ代わりに加わって貰えば一割程度くらいは被害も減るでしょうが」
「「はぁ??」」
三郎殿と私の声が共鳴する。これは聞き捨てならない。
「賢い面して算術苦手か?」
「私と三郎殿が入れば被害など最小限だろう?」
「はん!絡繰兵1体にビビって帰って来てちゃ説得力ねぇな!」
「ビビってなどいない!困惑してただけだ!」
「あんなのは初見殺しだろ!?対策すれば問題はねぇ!」
「どうでも良いです。まだ続ける気があるならば急いでは?」
「やってやるさ!行こう、三郎殿!」
「おうよ!ぶっ壊してやろうぜ、雪下!」
私たちは鼻息荒く陣を後にする。
両川がなんだ!眼にもの見せてやる!
「あの2人がここまで意気投合するなんて初めてだね」
「貴方も苦労しますね。あれでは力不足でしょうに」
「ふふ。僕の自慢の両翼を甘くみない方が良いよ。その言葉、後悔することになるからね」
~~~~~~~~~~~~~~
再び出雲の山中。
三郎殿と私は木々の陰に身を潜め、巡回してくる『絡繰兵』を待ち構えていた。
倒す算段はついている。次こそは必ずや打ちのめす。
「いいか、雪下。さっきは刃が弾かれた。あいつらには普通の斬撃は通用しねぇぞ」
「あぁ、分かっている。相手は人でも魔物でもないのだからね」
私は腰の刀の下げ緒を解き、鞘と柄をぐるぐると厳重に縛り上げて固定した。
これなら良いだろう。刃を抜くつもりはない。強固な鞘に収めたまま、これを『鈍器』として扱えばいい。
相手が硬質な装甲を持つ機械なら、刃こぼれを避けて、打撃で内部の機構ごと叩き潰す。
「行くぞ!」
私は茂みから飛び出し、絡繰兵の正面へと躍り出た。
「しんにゅうしゃをはっけんしました」
敵が私を認識し、そのハンマーとなっている腕を無表情に振り下ろしてくる。
「はいじょします」
「一ノ瀬流剣術・無刀ノ弐《雲水》」
武器と化していない腕の部分を掴み、相手の勢いを利用しながら地面へと叩き落とす。
激しい衝突音が響くが絡繰兵の表情は当然変わらない。
「だめーじ、だめーじ。きけんどをあげます」
ハンマーだった腕が火縄の形へと換装され、その銃口が私の顔へ向けられる。
「ちっ……!」
弾が放たれたが紙一重で躱す。
私との間合が再び生まれると絡繰兵は人間の動きとは思えないように(人間ではないのだから当然だが)背と地面を平行にしたまま飛び上がり起きた。
「三郎殿!」
「そらよっと!」
起き上がったのも束の間、三郎殿が絡繰兵の背後から敵の膝裏の関節部へと容赦なく打ち据える。
人と似た構造なのが仇となり絡繰兵は再び体勢を崩す。
「行くぞ!一ノ瀬流剣術・一刀ノ参《葉桜》」
ガラ空きになった絡繰兵の胸部へ、両手で握り込んだ『鈍器』を容赦なく叩き込む。
山中に甲高い破砕音が響き渡った。
「これで、終わりだぁ!!」
体勢を大きく崩した絡繰兵へ三郎殿が刀を大きく振りかぶり、刀の柄頭で脳天に重い一撃を食らわせる。
「きのう、を……ていし……しま、す」
ひしゃげた頭から言葉に似た電子音を垂れ流し、さしもの自律兵器もついに姿勢制御を失い、重たい金属音を立ててその場に沈黙した。
「……ふぅ。一丁あがりだな」
「あぁ。勝鬨でも上げるかい?」
「ふん。言ってろ」
私と三郎殿は互いに拳を突き合わせた。
ご覧いただきありがとうございます!




