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第13話

★戦国武将×偉人★

混沌極める乱世で、少女が運命に抗うIf戦記。予測不能な異世界戦国時代の幕開け!

 安芸国、吉田郡山城の奥深く。

 静寂に包まれた広間の上座で、毛利元就は一人静かに佇んでいた。

 完璧な『微笑みの鉄仮面』は健在であったが、その奥底には、普段の無機質なそれとは違う、微かな熱を帯びた感情が揺らめいていた。

 立花宗茂と由布雪下。あの立花の若駒たちが、この苛烈な戦国の盤上で一体どこまで駆け上がっていくのか。自らの目で最後まで見届けてみたいという、純粋な好奇心が芽生え始めていた。


「それ程までに嬉しそうな顔は輝ちゃんが産まれて以来ですね。少し嫉妬します」


 襖の向こうから理知的な女の声が響く。嫉妬すると言うその言葉には感情が籠っているように感じない。


「……全くだぜ!あの作戦はオレなら完璧にやり遂げられるのによ!どこの馬の骨とも知らない輩に任せるなんてどうかしてるぜ!」


 理知的な声とは対照的に鼻息が荒く野性味溢れる女の不満げな声。

 今にでも飛び掛かってきそうな勢いすら感じる。


「うむ。分かっているよ。お前たちは我に似て優秀だ。だからこそお前たちに万に一つもあれば毛利を誰が守る?輝元だけでは難しかろう?」

「あ"ぁ?輝坊だって立派に当主やってんじゃねぇか!」


 理知的な声が、呆れたようにため息を吐く。


「……姉様。母様はそう言う事を言いたい訳ではありませんよ」

「じゃあ、どう言うことだよ!」

「私たちで輝ちゃんを支えろと仰りたいのでしょう。現に我々"三兄妹"は得意分野が異なりますからね」


 元就はその言葉に満足そうに頷く。


「そう。お前たちはあの"両翼"のように輝元を支えよ」

「けっ、当然だぜ、母様。輝坊はオレが守ってやらねぇとな」

「にしても、随分と彼らを買っているのですね」

「うむ。彼らは眩しいよ。面白くなりそうではないか?」

「私は興味ありませんよ。戦力として計算できるなら盤上に置く。それだけのことです」


 元就は襖越しのやり取りに、微笑みを僅かに深めた。


(あの若駒たちが、我が可愛い子供たちの良き好敵手となってくれれば良いがな)


『勝利とは、もっとも忍耐強い者に味方をする』

 かつて、彼女が前世の記憶の中で刻んだ信念の言葉だ。全てを失い、それでもなお絶望から立ち上がった彼らほど、勝利の女神に愛されている者たちなどいない。元就は静かな期待と共に、出雲の山へと視線を向けた。

   

~~~~~~~~~~~~~~~~~


 出雲国・月山富田城。

 毛利家の勢いに押され尼子家の所領は残すところ月山富田城のみである。その城下には既に民の姿はなく、恐ろしい程に静まり返っていた。

 

「ふ、ふ、ふ~ん……」


 着物に陣羽織を羽織った男が鼻歌交じりに城へと向かって城下町を跋扈する。

 後ろには、人に似た大勢の『何か』が、一糸乱れぬ足音を揃えて付き従っていた。


「もうすぐ……もうすぐだ。お前らはここで待て」

「「「いえす、ますたー」」」


 男が城へと入り、地下へと続く階段へと真っ直ぐ向かった。そこには戦国の世におよそそぐわない、異様な光景が広がっていた。

 無機質な金属音と怪しげな駆動音が響く、薄暗い実験室のような部屋。


「ふふ、アーッハッハッハッハ!! これであと少し、大願成就は近いぞ……!!」


 部屋の中央にそびえ立つ巨大な円筒。緑色に濁った培養液に満たされたその中には、一人の少女が静かに浸かっていた。

 閉ざされたガラス越しに揺蕩うその姿。そこだけが、完全に時間が止まっているかのようだった。


 狂気に魅入られた男の叫びが、冷たい実験室の中にいつまでも木霊していた。

ご覧いただきありがとうございます!

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