第8話
★戦国武将×偉人★
混沌極める乱世で、少女が運命に抗うIf戦記。予測不能な異世界戦国時代の幕開け!
「一ノ瀬流剣術・一刀ノ弐《八重桜》!」
「グギャギャ……」
向かってきた魔物の首を一刀で落とす。
野盗討伐の際に拾った数打ちでは不安であったが、不思議と力が溢れ出るようだ。
血振るいをして刀を鞘に納めていると宗茂殿の声が後ろから聴こえる。
「調子は良さそうだね」
「うむ。あの日から身体が軽いんだ。まるで内から沸いて出るような、そんな感覚がする」
「"覚醒"して日が浅いのにそこまで力を使いこなすなんてね。僕は"宗茂"であることに3年くらいは掛かったから」
「そうか、宗茂殿でもそれくらい……」
浅ましくも心の中で小さく歓喜する。
考えてみれば宗茂殿は転生者でも転移者でもない。純粋な現地人でありながら、転生者と転移者の間に生まれた御方だ。
覚醒について、まだ分からないことが多いな。
「騙されんじゃねぇぞ、雪下」
いつの間に私が首を落とした魔物の血抜きを行っている三郎殿。そう言えば三郎殿は覚醒者なのか?
「昔道雪様が話されてたよ。自分が"こっち"の世界に来て数年覚醒しなかったのに、宗茂様は3歳で"宗茂"として覚醒していたんだと」
「た、確かに3年は掛かっているな……」
宗茂殿が悪戯に笑う。
くっ……これは図られたな。
「それと、俺は覚醒者?とやらじゃねぇよ。俺こそが純粋な現地人だ」
「な、何故それを!?」
声に漏れていたか?まさか、現地人と言いながら超能力か何かなのか?確かにこの世界は魔物などの不可思議な事象が多い世界だ。超能力者の一人や二人居てもおかしくはないだろう。と、すれば三郎殿の能力は読心か?「--おい」なるほど、それならば三郎殿の普段の察しの良さも納得だ。あそこまで細やかな気配りが出来る者などそうはいない。そう考えると……
「聴いてんのか!?」
「うわ!びっくりした!」
「びっくりしたじゃねぇ!急に黙り込んでどうした?」
「え!?」
「急に黙るなりぶつぶつとよ」
「そ、そうか……すまない」
……このやりとりを随分前に十吉くんとしたな。もう、随分と昔のようだ。十吉くんと誾千代殿。無事だと良いが。
「安芸国も近い。この山間にあるお寺で休ませて貰おう」
安芸国へと続く、緑深い山道。
「ひぃぃっ!! 早くあれをどうにかするのです!」
「若様! お下がりください!」
前方の獣道から、突然悲鳴と剣戟の音が響いてきた。 駆けつけると、数人の護衛に守られた少年が、五、六匹の巨大な魔物の群れに囲まれていた。
「魔物か! 宗茂殿、ここは私たちが!」
「おう! 出遅れんなよ、雪下!」
私と三郎殿は、抜刀と同時に地を蹴った。
「一ノ瀬流剣術・二刀ノ壱《霧雨》!」
私が白銀の籠手を煌めかせて先陣を切り、二匹の魔物の首を流れるように斬り伏せる。 体勢を低くした私の頭上を越え、死角から飛びかかってきた三匹目の魔物を、三郎殿の刃が空中で叩き落とした。
「おらぁッ!」
振り返って確認する必要すらない。
瞬く間に魔物の群れは霧散し、山道に再び静寂が戻った。
「た、助かった……のです」
腰を抜かしていた少年が、へたり込んだまま安堵の息を吐く。 上等な絹の着物を着たその少年は、酷く怯えた様子だったが、どこか品のある顔立ちをしていた。
「お怪我はありませんか?」
宗茂殿が優しく手を差し伸べると、少年はおずおずとその手を取って立ち上がった。
「あ、ありがとう、です。わ、我々は……ええと、そう。旅の一座なのです……」
「旅の一座?にしちゃ立派なおべべだが??」
三郎殿の疑問も真っ当だ。
魔物に襲われたせいで汚れてはいるが、それを差し引いてもこれは……
「あ、あはは……こ、これは……そう!衣装なのです!いやぁ、慌ててしまったのです」
あ、怪しい……
私と三郎殿が顔を見合わせて名乗るべきかと悩むが、それよりも早く宗茂殿が爽やかに名乗りを上げる。
「ご覧の通り、我々は魔物狩りを生業にしてる者です。当てもなく旅をしていまして、次は安芸へと向かう最中でした」
流石だ。
助太刀に入ったとは言え帯刀してる侍が3人もいれば、何事かと思われてしまう。
魔物狩りを名乗れば当たり障りはないだろう。十吉くんの時も思ったが、この世界で魔物狩りを名乗るのはとても有効な手段だな。
案の定相手の警戒心も少しは下がったようで、見るからに胸を撫で下ろしたのが分かる。
「さ、左様ですか!……奇遇にも僕たちは安芸へ帰る途中だったのです。見ての通り護衛も怪我をしてしまい……よろしければ……安芸まで僕たちの護衛をお願いできないですか?も、勿論、御礼は弾ませていただくです」
これは我々にとっても渡りに船だ。私たちは顔を見合わせ、小さく頷き合った。
「ええ、喜んでお引き受けいたしますよ」
どこか頼りなく怪しい少年だが、同じ安芸を目指す者同士、これも何かの縁だろう。 私たちは、旅の一座を名乗る一行と共に、毛利のお膝元へと歩みを進めた。
十吉くんの事を思い出し、闇へと消えていった二人の幻影が少し胸を締め付ける。
それでも、前に進むしかない。
きっとまた、出会えることを信じて。
ご覧いただきありがとうございます!




