↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
劉邦、転生したら劉備だった件  作者: レイン
第一章 黄巾の乱

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
14/32

第十三話 聞いていた話

第十三話 聞いていた話


 関羽が踏み込んだ。


 振り下ろされた槍を青龍偃月刀の柄で受け、そのまま横へ払う。


「うわっ!」


 槍が地面を転がった。


 反対側では、張飛が蛇矛を突き出す。


「退け!」


 穂先は男の胸元すれすれで止まった。


 顔を引きつらせた男が後ずさる。


「こ、殺す気か!」


「そっちが来たんだろうが!」


 別の黄巾が荷車へ走る。


「行かせるな!」


 義勇兵が二人で前へ出た。


 剣と棒がぶつかる。


 馬が暴れ、車輪が土を削った。


「馬を押さえろ!」


 官兵の声が飛ぶ。


 劉備も剣を構えたまま周囲を見る。


 正面では関羽と張飛が押し返している。


 荷車の横では義勇兵が踏ん張っている。


 その後ろ。


 斜面の上には、まだ降りてこない黄巾がいた。


「何やってる! 来い!」


 下から声が飛ぶ。


 斜面の男は動かなかった。


「聞いてねぇぞ!」


「何がだ!」


「官軍がいるなんて聞いてねぇ!」


 一瞬、周囲の動きが鈍った。


「ここまで来て何言ってやがる!」


「飯があるって話だったろ!」


「だから奪えばいいだろうが!」


「荷を取るだけだって聞いたんだ!」


 別の男まで叫ぶ。


「俺は仲間が集まってるって聞いただけだ!」


「知るか!」


 黄巾の一人が苛立ったように槍を振る。


 関羽が刃を合わせた。


 一度。


 二度。


 三度目で槍が弾かれる。


「くっ……!」


「雲長!」


「分かっている」


 関羽は追わない。


 武器を失った男が尻もちをつく。


 その脇を、別の一人が走り抜けようとした。


「おっと!」


 張飛が蛇矛の石突きを地面へ突く。


 男が足を止める。


「まだやるか?」


「……」


 返事はなかった。


 荷車の脇でも、義勇兵が二人がかりで一人を押し返す。


 官兵たちも体勢を立て直し、槍先が並んだ。


     ◇


「俺はもうやらねぇ!」


 突然、一人が武器を放った。


「は?」


「こんなの聞いてねぇ!」


「馬鹿か! 今さら――」


「知るか!」


 黄色い布を頭から外す。


 地面へ投げた。


「待て!」


 止めようとした男の前へ張飛が割って入る。


「どっちだ?」


「あ?」


「そいつを止めんのか、こっちとやんのか」


 男が黙った。


 斜面の上でも動きがあった。


 一人。


 もう一人。


 武器を下ろす。


「俺もやめる」


「お前まで何言ってやがる!」


「最初から戦うなんて聞いてねぇ!」


「じゃあ何しに来た!」


「知らねぇよ! 飯があるって!」


「俺は守ってもらえるって聞いたぞ!」


「誰にだ!」


「だから知らねぇって!」


 声がぶつかる。


 劉備は剣を下げないまま、そのやり取りを見ていた。


 関羽が少しだけ顔を動かす。


「兄者」


「ああ」


 話が合っていない。


「おい!」


 張飛が声を張る。


「やる気がねぇ奴は武器置け!」


 黄巾たちが張飛を見る。


「持ったままうろつくな! まだやる気か分からねぇだろうが!」


「翼徳」


「なんだよ」


「言い方」


「分かりやすいだろ」


 否定はできなかった。


     ◇


 一人が槍を落とした。


 続いて、二人。


 林の中にいた者たちも後ずさる。


 最初に荷車へ走った男が叫んだ。


「お前ら、ここまで来て引くのか!」


「じゃあお前一人でやれ!」


「ふざけんな!」


 男は周りを見る。


 だが、もう前へ出る者はいなかった。


 官兵は武器を構えている。


 関羽も。


 張飛も。


 義勇兵たちも荷車の前から動かない。


「……くそっ!」


 男が斜面へ走った。


「追うか?」


 張飛が聞く。


「いらん」


 劉備は周囲を見た。


「荷車が無事なら、それでええ」


「また来たら?」


「その時はその時じゃ」


「雑だな」


「追うな! 荷を立て直せ!」


 鄒靖の声が飛んだ。


 逃げた者を追う兵はいなかった。


 代わりに、武器を置いた黄巾たちの周囲へ官兵が集まる。


「動くな!」


「武器から離れろ!」


 地面に槍や棒がまとめられていく。


 黄色い布も何枚か落ちていた。


     ◇


「どういう連中だ」


 鄒靖が低く言った。


 誰に聞いたわけでもない。


 関羽が地面の黄色い布を見る。


「同じ話を聞いて来たわけではなさそうだ」


 劉備が北東を見る。


 張飛もそちらへ顔を向けた。


「誰が言い出したんだ?」


 武器を置いた男の一人が顔を上げる。


「知らねぇよ」


「じゃあ誰から聞いた」


「村で聞いたんだ」


「誰に?」


 男は眉を寄せる。


「知らねぇ。俺が聞いた時には、もう話が回ってた」


 鄒靖が眉をひそめた。


 それ以上、男から答えは出なかった。


     ◇


 関羽が街道の先を見る。


「兄者」


「なんじゃ」


「こっちを見ろ」


 道端。


 踏み荒らされた草。


 消えかけた焚き火。


 捨てられた木椀。


 いくつも残っている。


 鄒靖が近づき、地面を見る。


「ここで休んだ者がいるな」


「一人や二人じゃないな」


 関羽が足跡を追う。


 北東へ続いていた。


 張飛が顔をしかめる。


「まだいるってことか」


「おるじゃろな」


 聞いてきた話は違う。


 それでも、足跡は同じ方角へ続いていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。