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【50万字一気読み推奨! 2章完結&3章開始!】「魔法が最強? あたしの剣の方が速いんだけど?」 元【剣神】のVRMMOストリーマー、魔法一強の異世界で無自覚無双する  作者: 卯月真琴
第2章:冒険者邂逅編

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98、招待

 バァン! と迫真の効果音と共に入ってきたのは、ヒラヒラゴテゴテの貴族然とした男、キャリオーク子爵であった。


「今までどこで油を売ってたんだ、モカ!」


 開口一番に大声による牽制、そして一気に距離を詰めてきて、あたしの肩をガシッと掴むと、マッサージ機もかくやと言わんばかりにガクガクと揺すり、唾が飛ぶのもお構いなしに話し続ける。


「お前のアドバイスのおかげで、俺はこの窮地を脱したのだ! あまりにも上手くいきすぎて心臓が止まるかと思ったぞ!? それに、お前のアドバイスのおかげで俺は国王陛下に個別に呼び出されて、色々なお褒めを頂けたのだぁっ!」


 おおよそ人がして良い顔ではないほどに表情を歪めて、ギャンギャンと泣き喚くように叫ぶ子爵。

 ボロボロと大粒の涙を流しながら、果てにはズルズルと崩れ落ちていき、あたしの足に縋り付くようにわんわんと泣き喚くんだから、迷惑以外の何者でもない。

 しかもその様子を、面倒臭い人たちにしっかりと見られているのだから、もう諦めの溜息しか出ない。

 揶揄うための材料、みーつけた! とメルツェナさんは笑いを堪え、こっちに話を振らないでくれ、と首を極限まで逸らしている『黒金の雷雨』のみんな。

 何がどうしてこうなったのか、ビャンビャンとうるさく泣き喚くキャリオーク子爵にちゃんと話を聞かなくては。


「あ、あの! ちょっと、離れて……離してくださいっ! だぁ、もう鬱陶しい!」


 力づくで子爵を引き剥がしていると、ようやく子爵のお付きの執事さんが部屋に駆け込んでくる。


「旦那様! 許可も無く部屋に立ち入るなど、貴族としての品位が疑われますぞ」


 ぜぇはぁ、と肩で息をしながら入って来た老齢の執事さんによって子爵は、あたしから引き剥がされ、その手を借りて起き上がる。


「す、済まなかったな、メーデルフィア。少しばかり気が急いてしまったのだ」


「確かに国王陛下よりお言葉を賜ったのは素晴らしい事ですが、泣き喚き、淑女の足に縋り付くなど、貴族としてあるまじき行いですよ」


「う、うむ、心得ているとも」


「お父上がご存命であれば地下牢行きですぞ?」


「むっ! そ、それはいかんな! 済まぬ、モカ。少しばかり興奮していたようだ」


 パッパッと服についた埃を払った子爵は、ようやく周囲の人たちに意識が向くようになった。


「して、この者たちは誰だ? お前の仲間か?」


 笑いを堪えているメルツェナさんと、いつの間にか直立不動のグレイグさんたちをチラチラと見ている子爵に、あたしはイエスと答える。


「そうか。いつもモカが世話になっているようだな。俺の方からも礼を言おう。これからもモカと仲良くしてやってくれ」


 まるであたしのお父さんみたいな言い方に、何となく腹が立つ。


「そう言うのは良いんで、本題を話してもらって良いですか?」


 苛立ったあたしの声音に、子爵は気圧されたような顔で小さく咳払いをする。

 これは……アレかな? 気持ちだけが先行して、話すことをちゃんと考えていなかったパターンか?


「あー、ゴホン。えーっとだな……おい、どこから話せば良い!?」


 後ろに控える執事さんにそう尋ねると、やれやれと首を振って、こそこそと耳打ちをする。


「おぉ! そうだった! えー、実はな。お前に陛下へのプレゼントに関するアドバイスを貰っただろう?」


 そんな事もあった様な、ない様な……何だっけ? ほしい物リストがどうとか、そんな話だったっけ?


「俺はそのアドバイス通りに陛下の立場になって、何を貰ったら嬉しいのかを考えたのだ。そして幼少期に過ごされた王族の避暑地にて、陛下は現地の職人と共に自作のチェスの駒をお作りになられたという話を聞いたのだ! 俺はそれを聞いて、これだと思った! 子供の頃の体験は、何にも勝る宝なのだ! しかも今もチェスの駒は陛下の執務室に飾られているというではないか! だから俺はチェス盤と絵の具のセットを送ったのだ! 陛下がお作りになられた駒も、ただ飾られるだけではなく、盤上を自由自在に動き回りたいだろう! そして、自分の好きなように駒に色を塗り、模様を描き、幼少期の思い出に浸っていただこうと思った! そして、俺はチェス盤と絵の具セットを探し回り、ついに昨日! 俺は陛下にプレゼントを渡すことが出来たのだ! 他の貴族たちには馬鹿にされ、冷笑され、散々だったが、陛下だけは心の底から喜んでくれた! 本当にお前のおかげだ、モカ! この恩に報いるためなら、俺は何でもしよう! 金が必要なら言ってくれ! それとも他に何か欲しいものがあるか!? 何でも言ってみろ、俺の出来る範囲で叶えてやる!」


 早口だし、ブレスもほとんどせずに話すから、何を言っているのかちゃんと理解出来なかったけど、要は王様に誕プレ渡して喜んでくれたよ、って話だよね?


「いや……別に困ってないんで、大丈夫です」


「ん? あぁそうか、遠慮しなくて良いぞ?」


「あぁ、いえ、別に遠慮しているわけじゃなくて、本当に要らないです。それに王様が喜んでくれたなら、アドバイスの甲斐がありました!」


 良かった良かった。

 変なプレゼントを貰って困るより、ちょっとでも自分のことを考えてくれたものを貰う方が嬉しいし、楽しいもんね。


「モカ……お前は本当に出来た奴だなぁ……」


 しみじみと子爵が頷くその後ろで、執事のメーデルフィアさんが、やれやれと肩を竦めていた。どうやらこの人も苦労しているんだろうな。


「旦那様、それは本題ではございませんぞ」


 おや? そうなの? 王様にあげたプレゼントの件で感謝を言いに来たわけではないのか。


「む? そうだったか?」


「そうでございます。はぁ……モカ様、旦那様に変わり、私がお伝えしてもよろしいでしょうかな?」


「へ? 別に構いませんけど?」


「では、失礼いたします」


 そして執事のメーデルフィアさんから語られたのは、この場にいた全員の顎が開いたまま塞がらないくらいに衝撃的な内容だった。


「アンブリシア・メトンディール=オブラティアン・コルベス国王陛下が、旦那様に的確なアドバイスを送った知恵者にして、今話題の剣を使う冒険者に一目会いたいと仰せです。是非とも、王城で行われる陛下の生誕パーティーに来て欲しいとの事です」


 メーデルフィアさんが全てを言い終わった時、あたしを含めた全員の驚きがそのまま口から溢れ出る。


「「「「「「な、なんだってー!?」」」」」」


 流石のメルツェナさんもこれは予想の範疇を超えていたらしく、珍しく口をあんぐりと開けて間抜け面を晒している。

 グレイグさんたちは言わずもがなで、口から魂が抜けたのかと疑うほどの放心状態だ。


「驚かれるのも無理はありませんが、陛下立っての希望でございます。旦那様の顔を立てる意味でも、是非ともご一緒して頂ければと思うのですが……」


 そう言われてもなぁ……周りは貴族だけなんでしょ? それにキャリオーク子爵の話を聞いてる感じ、他の貴族は嫌味ったらしい人や、ムカつきそう人ばっかりだろうから、絶対に近寄りたくないんだよね。


「えっと、大変ありがたいんですけど、今回は遠慮させてーー」


 申し訳なさそうに見えるような表情をして、お断りをしようと口を開いたら、みんなが一斉にあたしに詰め寄って、口を塞いできた。

 モカの助言により、まさかの誕生パーティーへの出席をお願いされてしまう!

 パーティー用のドレスも、礼儀作法も、テーブルマナーも、足りない物だらけのモカに、頼れるお姉ちゃん(とその師匠)が一肌脱ぎます!

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