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【第1章完結! 一気読み推奨】「魔法が最強? あたしの剣の方が速いんだけど?」 元【剣神】のVRMMOストリーマー、魔法一強の異世界で無自覚無双する  作者: 卯月真琴
第2章:冒険者邂逅編

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86、因果断ち

 メルツェナさんの詠唱をBGMに、あたしは腰を落として【理切】に手を置く。

 無心で斬る。

 簡単に言うけど、【理切】を打った鍛冶師はそれがどれほど難しいことなのか分かっているんだろうか?

 剣を振るうには、いつだって理由がある。

 勝ちたい。

 負けたくない。

 この技を試したい。

 素材が欲しい。

 本当に色んな理由があるんだよ。

 そもそも、無心で剣を振るうなんて、練習の時くらいしか無理じゃないかな?

 戦いの場で何も考えるなと言われても、そんなことは絶対に無理だと思う。


「剣神の座に在ったのに、まだまだ頂には届いていなかった、ってことなのかな?」


 そう考えると悔しい反面、嬉しくもある。

 まだ強くなれる余地があって、あたしはそれに気付けたんだから。


「おっと、これも雑念だよね……」


 目を瞑り、深呼吸を繰り返して心を落ち着ける。

 一呼吸ごとに周囲の音が消えていく。

 ワイバーンの咆哮、メルツェナさんの詠唱、風の音、森のざわめく音、木々の揺れる音。

 そして、ひどく昂っていた心音が一呼吸ごとに穏やかになっていき、やがてその音も消えていく。

 雑念が1つ消えていく度に、あたしという存在の薄い膜が溶けるように消えて、世界に混ざるのが分かる。

 無心であれーーそう思うことも雑念だ。

 何も考えるな。

 心を無にしたあたしが目を開けると、いつの間にか跳んでいた。

 スキルと身体強化を使い、2度目となる空中戦に興じる。

 どこから斬ればーーあぁ、ダメダメ、考えちゃダメっ!


「破ッ!」


 完璧な抜刀技術による斬撃は寸分違わずに黒い鎖のようなモヤを断ち切る。

 知らず知らずの内にモカ式空鞘抜刀術を使っていたけど、何も変わっていない。モヤを斬ってもワイバーンは絶叫するし、【理切】から伝わる熱は余計に熱くなる。

 ダメだ、考えるな!


「ッーーガァッ!」


 手を止めるな! 違う! 考えるな!


「ッく! ヤァッ!」


 最速で、最短で、最高率で、無心で刀を振るえ!

 違う! 無心で! 無心無心無心!

 最早、人間の限界を超えたような精密な剣筋は、髪の毛1本すらないほど正確に黒い鎖のモヤを断ち切っていく。

 その度にワイバーンの絶叫が耳を劈き、心が揺さぶられる。

 何が違う? どうして出来ない!? 違う、ダメ! ただ無心でーー

 RTAのように効率化された斬撃の嵐によって、ワイバーンの体にあった黒い鎖のモヤを全て断ち切ったが、結果は同じで、事切れたワイバーンは自由落下をしながらも、その瞳はあたしをジッと見つめていた。


「ーーあぁクソ! 何も考えるなんて無理だよ!?」


 ワイバーンを縛り付ける黒い鎖のモヤは斬れる。なのに【理切】から伝わる熱はそうじゃない、って言っているような気がする。

 じゃあ何なの!? どうしろっていうのよ!

 答えが無い問いなのか、答えが分からないと解けない問いなのか、それすらも分からなくなってくる。


「というか、そもそも無心で剣を振るうなんて無理だよ!」


 馬鹿な事を言うな!

 あのワイバーンを見ろ! 

 あたしが失敗したから、あの子を救えなかったんだ!

 諦めるな!

 答えを探せ!

 あたしは剣神だ!

 最も強いんだ!

 救えないなんて、絶対に許さない!

 その時だった。

 あたしの手にあって、何かを伝えようとしてくれていた【理切】が、急激に熱を失っていく。


「………え?」


 熱が消えていく。

 それが何を意味するのか。


「………見放された?」


 その瞬間、あたしは無意識の内に無心を放棄していたらしく、外部からの情報を無理やり遮断していたせいもあって、五感から齎される情報の洪水に飲まれ、急激なパニック状態に陥った。

 あまりにもうるさい環境音に混じって風を切る音が聞こえ、自分が自由落下している事に気付いた。


「……なんで? なんでなんで!? ちょっと【理切】! なんで冷たくなるの!? あたしが間違えたって事!? ねぇ! 応えてよ!」


 しかし【理切】は何も応えない。

 ワイバーンの咆哮、風切り音、様々な音の中に微かに聞こえるメルツェナさんの詠唱が聞こえてくる。


「ーー連綿と流るる螺旋の軌跡。軌跡は深淵、深淵は光芒、光芒は四半の刹那、刹那は永遠、永遠は生まるる命、命は咆哮し、咆哮は滅び征く光の絶唱だと知れ。我が伽藍堂を埋めるは天体を巡る箒星。満ちよ、満ちよ、我が内に満ちよ。我が内に満ちる星々は収束し、我が肉と魂と心の境界を圧し潰す」


 気付けば、彼女の足元には巨大な魔法陣が光を放っていた。

 メルツェナさんを中心に直径10メートルほどの魔法陣が黄金の光を讃え、周囲の魔力がフワフワと幻想的に揺れては消えていく。

 そして、呪文を完璧に誦じているメルツェナさんの鋭い視線に射抜かれた。


「小娘! あと4分よ! 4分であの2匹を何とかしなさいなッ!」


 タイムリミットは刻一刻と迫って来ている。

 ワイバーンを倒すだけなら簡単だ。

 あたしの持つ全てを注ぎ込めば瞬殺出来る。

 だけど、今は違うんだよ。

 殺すだけなら簡単だ。

 救うよりも簡単だ。

 でも、あの知性を秘めた穏やかで愛らしい瞳が頭から離れない。あれは……あの瞳が何を伝えたかったのだろうか。

 落ちていく中で、深く内に潜る。

 何かが足りないのかな?

 それとも、何かを間違えているのだろうか?

 ダメだ、考えることを止めるな。

 あたしは最強なんだ。

 だからこそ剣神になれたんだ。

 剣神に出来ないことなんてないんだ。

 だからーー


「………あぁ………そっか」


 あまりにも乱雑に絡み合った思考に、天啓が舞い降りた。


「矛盾してるんだ」


 フレーバーテキストの一文をもう一度、克明に思い出す。

 大事なのは最後の一文じゃないんだ。

 前半もどうでもいい。

 重要なのは、この一文なんだ。


「その執念は一刀として振るわれ、頂に至る道を切り開く……」


 フレーバーテキストの真ん中の文章にこそ、答えがあったのだ。

 てっきりその前の文章を指して執念と言っているのだと思っていたけど、違ったんだね。

 あー、だからか。


「だから【理切】の熱が消えたんだね……」


 あたしに熱を伝えてきた【理切】がその熱を失った時、あたしは強い執念を抱いていた。

 そうだ、あの時のあたしは憤っていた。

 救えない事に怒り、そんな自分を許さなかった。

 だから【理切】はあたしを見限ったのだと思っていたけど、逆だった。

 その熱はきちんと伝えていたんだ。

 その執念こそが正解なのだと。

 強い想いこそが、因果を断ち切る唯一無二の条件なのだと。


「というか、フレーバーテキストにばっかり意識が向いてたけど、ヒントはあったね」


 ベルムッドさんに鑑定してもらった【理切】のステータスを思い出す。

 その中の、因果断ちの回路の説明だ。


「必要条件を満たした時にのみ起動する。装備者の想いに応じて、因果だけを斬り伏せる事ができる、だったよね」


 その一文に思考が辿り着かなかったことが悔しい。


「あたしの想いに応じて、因果を斬る。だから、強い執念が必要だったんだ」


 強い想いは因果を断つ。

 因果を断つにはそれ相応の強い想いが必要だということ。

 そこに辿り着くまで【理切】はまだ足りないと熱で示してくれていたんだ。

 絶対に救うという本気の執念に至ったから、回路が起動して熱が引いた、ってわけだ。

 それが分かれば後は簡単だ。

 何せあたしは元剣神。

 剣神は最強で、剣神が最強なら元剣神のあたしも最強ということ。

 最強なら何でも出来る。

 だから絶対に救ってあげる!

 救えないなんて絶対にあり得ないんだから!


「よし、行こう! 【理切】!」


 近付く地面を見つめながら【理切】を納刀し、くるりと空中で身を翻して静かに着地する。

 自由落下のエネルギーを地面に逃せば、跳躍した時より遥かに大きなクレーターが出来た。だけど時間が無いからそのエネルギーも再利用させてもらおう!

 着地した姿勢のまま、再び地面を蹴る。

 今度はあれこれ難しく考える必要はない。

 ただひたすらに救うために剣を振るえば良いんだ。

 そう思った時に分かった。

 無心で振るえ、って言葉は雑念を払うんじゃなくて、迷うな、ってことだったんだね。


「今、助けてあげるからね!」

 すみません、書いていて混乱してきて、何を書いているのか分からなくなってきて、おかしな文章になっているかも知れません。

 もしかしたら、分かりにくいかも知れません。

 時間を置いて読み直して、修正をするかも知れませんのでご承知ください。

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