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【第1章完結! 一気読み推奨】「魔法が最強? あたしの剣の方が速いんだけど?」 元【剣神】のVRMMOストリーマー、魔法一強の異世界で無自覚無双する  作者: 卯月真琴
第2章:冒険者邂逅編

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83、黒いモヤモヤ

 握り込む【理切】が熱い。

 この熱には覚えがある。

 あたしがグリザークから王都を目指す道中に遭遇したワイズマン・エイプと戦った時だ。

 あの時と同じ熱を今、【理切】が放っている。

 何? 何が起きてるの?

 視線を手元に落とすと、【理切】が纏っていた青光が消えていた。

 いや、それだけじゃない。


「重量可変も、魔力奪取も……回路に魔力が流れない?」


 今までと同じように回路に魔力を流そうとしても、魔力は流れてくれない。

 流せないのではなく、流れないのだ。


「何これ? 今までこんなこと……」


 目を離していた僅かな隙に、凄まじい風圧に襲われる。

 相手にしていたワイバーン以外の4体が宙へと飛び立ったのだ。


「うわっ! やばーーえぇ!? な、なにアレ!?」


 風圧を正面からもろにくらってタタラを踏みながら敵に目を向けると、想像していない光景が飛び込んでくる。

 目の前でまだ威嚇しているワイバーンと、宙を旋回するワイバーン。

 その全てに、黒い鎖のようなモヤが纏わり付いているのだ。

 さっき見た時はそんなものは無かったはずなのに!


「しかもあのモヤ……黒い、鎖? みたいに見えるけど……何なの、アレ?」


 旋回しているワイバーンの雄叫びが落ちてくるのを聞きながら、あたしは謎の熱を持つ【理切】を握り直す。

 ジクジクと脈打つような熱が手のひらに伝わるのを感じながら、踏み込む。

 再びトップスピードまで加速して【理切】を振るうのだが、今度は斬るのではなく、突く。

 恐らく、ワイバーンの纏う防御魔法は、斬撃によるダメージを軽減する系統だと思う。

 BLOでも良く使われていた魔法に、斬撃、刺突、殴打に対するダメージ軽減魔法がそれぞれに存在していたから間違いないと思う。

 もし同じなら、この防御魔法は同時発動が出来ないから、斬撃ではなく刺突や殴打による攻撃が有効になり得る。


「乱数三段突き!」


 1歩目で音は超えないし、2歩目は無間じゃないし、3歩目なんて絶刀にも劣るような見様見真似の突きの3連打。

 ハマっていたソシャゲの推しキャラの必殺技を何とか再現出来ないかと試行錯誤した結果に生まれた技だけど、あたしの技量だと『全く同じ箇所に全く同時に攻撃』するなんて芸当が出来なかったし、そもそも突き技があまり得意じゃなかったのもあって、あたしの乱数三段突きは『全く別の箇所を全く別のタイミングで攻撃』するという真逆の突き技になった。

 しかし、今回はそれが功を奏したようで、あたしの三段突きはワイバーンの防御魔法を貫いて、皮を破って肉に突き刺さる。

 そうなればこっちのもので、突き破った防御魔法を切り裂くように、肉に刺さった【理切】を切り上げれば防御魔法ごとワイバーンの体を斬れた。


「ギャリュウゥゥゥンッ!?」


 ワイバーンの叫びが耳に届いたのは、あたしが大きく跳躍して距離を取った時だったが、どうにも致命傷にはなっていないようだ。

 理由は簡単。聖刃による刀身の保護が無いからワイバーンの血と油で刃筋が乱れたのである。


「あぁ、くそ! やりにくいったらありゃしない!」


 それにしても、なんで回路が使えなくなったんだろ? 聖刃も重量可変も魔力奪取も……と考える中で思い出す。

 あれ? そういえば【理切】の回路って4つあったよね。その内の3つが使えなくなっているなら4つ目は?


「4つ目は確か……」


 ベルムッドさんのところで鑑定してもらった結果を思い出す。

 この【理切】の4つ目の回路は因果断ちだったっけ?


「この熱はその回路を使えって事なの? それに、あのワイバーンの黒いモヤモヤも、【理切】が熱を持ってから見えるようになったし……」


 必要な起動条件を満たしたから、因果断ちの回路が起動してるってこと?

 これまで、何度か4つ目の回路に魔力を流した事があるけど、何の変化もなかったのに?

 でもワイズマン・エイプの時はあんな黒い鎖みたいなモヤなんて見えなかったよね? あの時は必要条件を満たしていなかったってこと?


「あぁもう! 分からないよ! なんでこんな面倒くさい回路を組み込んだのよ! もうちょっと説明があっても良いんじゃないの!?」


 未だ威嚇を続けるワイバーンと、攻撃をしてくる素振りのない旋回するワイバーン。

 そして、ようやく恐慌状態から立ち直ったグレイグさんがあたしの隣に並び立つ。


「すまない、モカちゃん!」


「グレイグさん! もう大丈夫なんですか?」


 そう尋ねれば、グレイグさんは苦笑しながら杖を構える。


「あぁ、流石にビビったが、女の子1人に任せっぱなしじゃ男が廃るからな!」


「じゃ、かっこいいとこ、見せてくださいね! あたしがアレの相手をするんで、グレイグさんは上の奴らの牽制とサポートをお願いします!」


 一旦、考えるのをやめて【理切】を構え直す。


「分かった。救援の魔法を打ち上げたから、助けが来るまで耐えるぞ!」


「ちなみに、あのワイバーンに黒い鎖みたいなモヤがあるの、見えます?」


「モヤ? いや、見えないが……」


「じゃあ良いです! それじゃ、行きます!」


 再び突きの構えを取って、鋭く踏み込む。

 今度は因果断ちの回路に魔力を流して、乱数三段突きを放ってみたのだが、その効果は凄まじいものだった。

 黒いモヤごと防御魔法を貫いた瞬間、それまで聞いたことのないようなワイバーンの絶叫が耳に響く。

 突きによる攻撃の痛みだけではなく、黒いモヤを貫いた事でもダメージを受けているようだ。

 やっぱりそうだ。

 この黒いモヤは、通常の攻撃では何の効果もないけど、因果断ちによる攻撃であれば有効のようだ。

 って事はだよ? この黒いモヤは因果だって事だよね? それに、グレイグさんには見えていないって事は因果断ちの回路によって見えるようになってるって事だ。

 そもそも因果って何だよ、って話だけど、何となく分かってきたぞ。

 あのワイバーンが変な様子だったのも、ワイズマン・エイプが変な様子だったのも、あの黒いモヤが関係しているんだろうね。

 凶暴化させる魔法とか、強制的に支配する魔法とか、とにかくそういうヤバい魔法をワイバーンは掛けられていて、【理切】はそれを断つ事が出来るのだろう。

 それで、その魔法はワイバーンの体を蝕んでいるから、黒いモヤにダメージを与えると、めちゃくちゃ痛いんだ。

 となれば、自ずと攻略法が見えてくる。


「あの黒いのをどうにかしないといけないんだろうけど……纏わり付いている黒い鎖みたいなのを斬れば良いのかな?」


 なかなかに難しそうな攻略法だね。

 でも、そういう方が燃えるよ。

ちなみに、私は『無明三段突き』も好きですが、『蒼穹三段突き』も好きです。

でも、『蒼穹三段突き』と書いて『しののめにきらめくむみょうのひかり』と読むなんて、誰も思わないよ!

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