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【第1章完結! 一気読み推奨】「魔法が最強? あたしの剣の方が速いんだけど?」 元【剣神】のVRMMOストリーマー、魔法一強の異世界で無自覚無双する  作者: 卯月真琴
第2章:冒険者邂逅編

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73、反省会と後片付け

 鹿の死体が転がる平原のど真ん中。

 まだ血の匂いが散らずに充満しているこの場所で、いきなりメルツェナさんからのありがたーいお話が始まってしまった。


「あんたたちの戦い方を見させてもらったけど、なかなか良かったわ」


 メルツェナさんが腕を組んで偉そうに上から目線でそう話し始める。


「「「「ありがとうございます!」」」」


 だらけていた『黒金の雷雨』の面々はビシッと直立不動になって、深々と頭を下げる。

 それを気にせず、メルツェナさんはさらに話を続けて反省会が始まった。


「まず筋肉ダルマ。あんたは盾魔法の使い方が上手いわね。攻守の使い分けも良い。でもそのせいでせっかくの機動力が活かせてないわ。空に行ける手段があるんだから、空から一方的に攻めなさい。例えば……そうねぇ……さっきの盾を円形に生み出して囲った魔法の後に、空から大きな盾を落とせば、一網打尽じゃない」


「む、なるほど、確かに。前衛のタンクであるから、決め手に欠けるのは常に感じていたが……そうだな、新しい戦法でも考えてみるか。メルツェナ殿、ご助言ありがとうございます」


 しっかりと頭を下げたザフィーラさんは、心なしか嬉しそうにしている。

 まぁ、憧れている人にアドバイスを貰えるってなったらそりゃ嬉しいよね。


「次にチャラ男。あんたは後衛で戦場全体を俯瞰するのが仕事よね。戦闘の勘も鋭くて指示も的確だったわ。でもね、それだけよ。あんたは戦場を広く見れても支配は仕切れていない。折角の遠距離での攻撃手段が豊富なんだから、自分の動きやすいように敵を引きつけたり、追い込んだりしてみなさい。自分のフィールドを作り上げて支配出来るようにしなさい」


「う、あ、は、はい! いやぁ、それは……はは、その通りっていうか、耳が痛いっていうか……確かにそれは感じてましたけど……そうですね、仲間と相談して、自分なりの戦場を作っていこうと思います。ありがとうございました!」


 ラルフさんは妙に畏って必要以上にペコペコと頭を下げている。

 こうみるとやっぱりメルツェナさんって高ランクの冒険者なんだなぁ、と実感出来るよね。


「んで、次は真面目くん。あんたは中衛で臨機応変に戦況に対応出来るスペックがあるんだから、もっと動きなさい。前衛が守ってくれるから、なんて甘えたことを言ってると痛い目を見るわよ。足止めから範囲攻撃まで、手数が揃っているなら、もっと自在に動いて前衛と後衛をの負担を減らしてやりなさい。あ、でも、最後の拘束魔法のコンボは見事だったわ」


「恐縮です! ですが……いえ、そうですね。自分は固定砲台としての役割があるから、とその場で範囲攻撃をばら撒いていましたが……今後は戦場を自由に動けるようにポジションを考えてみようと思います。ありがとうございます!」


 何か言いたそうなグレイグさんだったが、メルツェナさんの反論を許さないと言わんばかりの視線に怯えて目を逸らして、早々に頭を下げていた。

 にしても、アドバイスが的確だ。

 ちゃんとオブザーバーとしての仕事を全うしているようで安心だよ。

 それに、やっぱりメルツェナさんって面倒見の良い姉御肌だよね。なんか波長が合うと思っていたけど、きっと歳が近いからなんだろうな。あ、今の年齢じゃなくて前の年齢ね。

 多分、メルツェナさんって26か27くらいじゃないかな? あたしの所属していたストリーマーグループにも似たような世話焼きお姉さんがいたけど、同じ匂いがするんだよ。


「最後はあんたね」


「は、はい……よろしくお願いします……」


 鋭い目付きで睨まれたデュランさんはオドオドしながら身体を小さくしている。


「デュラン、あんたは……うん、あんたはそのままでいなさい」


 その瞬間、全員が目を見開いて驚愕の表情で固まった。

 んん!? あれ? あたしの耳がおかしくなったかな? そういえば異世界に来てから耳掃除なんてしてないから、でっかいのが溜まってるのかもしれない。


「………何よ?」


 メルツェナさんが不機嫌そうな顔をして……おや? 不機嫌というか……ちょっと照れてるっぽい? んん? これはもしかして……青春の予感かな? そう言えば、他のみんなは筋肉ダルマとかチャラ男とか呼んでたのにデュランさんだけは名前で呼んでいたような……もしかして、もしかするか?


「……メルツェナさん、こういう人がタイプなんですか?」


 あたしがそう尋ねると、メルツェナさんは顔を真っ赤にして怒鳴る。


「違うわよバカ! こいつが弟に似てるの! だからちょっと……その、少しやり辛いのよ! 何でもかんでも色恋沙汰に結びつけるんじゃないわよ、小娘!」


 なーんだ、面白い事になるのかと思ってたけど、違ったのか。

 それにしてもメルツェナさんに弟がいたのか。ちょっと納得だね。だからあんなに世話焼きというか面倒見が良いんだな。


「まったくもう! じゃあいいわ。あんたにもアドバイスするわよ! いい? あんたはもう少し能動的になりなさい。仲間から言われた通りにバフを撒いたり、回復したりするのはまだまだ未熟な証拠よ。あんたこそ、きちんと周囲を状況を読んで的確な魔法を選択して先回りしてバフやデバフを使いなさい。効果時間の管理や重ねがけの回数をきちんと把握していないと、ここぞというときに慌てふためくことになるわよ!」


「わ、分かりました。もっと俯瞰して、仲間を観察する所から始めてみます」


「ん、分かったら宜しい。それじゃあ、一旦ここを片付けてギルドに戻るわよ! あたしは素材要らないから、あんたたちで上手い具合に分けるのよ?」


 その宣言により、グレイグさんたちは手持ちの麻袋に鹿の死体を回収していく。

 どうやら『黒金の雷雨』のみんなは収納魔法が使えないようだ。

 あれ? でもそう考えたら、メルツェナさんも荷物をたくさん持ってきてたけど、収納魔法を使ってなかったな。ん? あのマントの中にたくさん人形がしまってあるなら、収納魔法が使えるんだよね?


「メルツェナさんは収納魔法が使えるんですか?」


「何よ、藪から棒に……まぁ、使えるわよ。でも、あたしの収納魔法は人形で容量がいっぱいなの」


 やっぱりか。

 にしても、あの荷物って何だったんだろ? 長期の旅行にいくような荷物の量だったけど……


「その荷物、なんだったんですか? ただついてくるだけなのに、多すぎません?」


「ん、あぁ、これ? これは……まぁ、別件よ別件」


 ふーん、ユリシュさんが言っていた例の依頼の調査ってやつだろうか? まぁ、あたしにはあんまり関係無さそうだからいいけど。


「終わったなら帰るわよ! 持って帰るのが面倒ならあたしの人形に運ばせるわよ?」


 メルツェナさんの申し出に、グレイグさんたちは互いに視線だけでやりとりをして、首を横に振った。


「ありがたいですが、そこまでして貰わなくても大丈夫です。これは自分たちの獲物ですからね」


「そう? まぁ、辛くなったら言いなさいよ?」


「はい、ありがとうございます」


「よし、じゃあ出発よ」


 メルツェナさんは周囲に配置していた人形たちを糸で絡めて集めると、そのまま自身のマントに収納する。その後に、3体の人形を新たに取り出して、トランクを持たせると、ヒソヒソと何かを伝えた。


「行きなさい」


 メルツェナさんがそう言うと、人形たちはトランクを手に街道の奥、つまり森の方向へと歩いて行った。


「あれ? あの子たちはどうしたんですか?」


 それを見ながら、当然の疑問を口にしたグレイグさん。


「あれは良いのよ。別の任務だから気にしないでいいわ」


 そんなもんか、とグレイグさんは頷いて、歩き出したメルツェナさんの後を追う。

 あたしも遅れないように後に続く。

 チラッと後ろを振り向くと、ご主人様と離れて任務に向かう木製人形の背中が見えた。

 どこか寂しげで、人間臭い背中だった。

メルツェナさんは3人兄弟の1番上です。

下に弟が2人います。

次男は20歳で王都の警備隊で働いています。

三男は13歳で商人見習いとして働いています。

両親は健在ですが、王都での暮らしに飽きて近くの街に引っ越して自由を満喫しています。

メルツェナさんがAランクになったのと同時に王都の一等地に家を買って、3人で仲良く暮らしています。

弟たちは世話焼きお姉ちゃんのせいで(おかげで?)家事能力はあまり高くないです。

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